2001/09/29 講演

 

 

『変革の哲学・弁証法 ─ レーニン「哲学ノート」に学ぶ』
出版記念講演

21世紀を創る変革の哲学・弁証法

          講師 高村是懿(著者・広島県労働者学習協議会会長)

 

1.「哲学ノート」とは何か

● レーニンとは、いかなる人物か

● レーニンのへーゲル弁証法学習のノート
● 弁証法の仕上げを意図

 

2.「変革の哲学・弁証法」出版の理由

●『ヘーゲル「小論理学」を読む』で、ヘーゲル論理学(弁証法)の真髄を自
 分なりに理解しえたので、『哲学ノート』に取り組むことに

● 21世紀の哲学の課題である、レーニンのやり残した「弁証法の仕上げ」に足
 をふみだしてみる

 

3.ヘーゲル論理学の真髄は何か

① 哲学の本来的課題である「真理とは何か」を
  変革の立場から解明した

● 真理認識には様々のレベルがある

 ・真理とは、客観に一致する認識(反映論)

 ・真理の認識は、客観を写し取るだけの機械的反映にとどまらない(「タブ
  ラ・ラサ」批判)

● 概念論 ── あるべき姿の真理(真にあるべき姿)

● 人間として生きていくことは、実践をつうじて、自然や社会を変革していく
 ことであり、実践における目的となるのが、「真にあるべき姿」 ── 変革
 の立場における真理

② マルクスにおける変革の立場

● 墓碑「哲学者たちは、世界をたださまざまに解釈してきただけである。肝腎
 なのはそれを変えることである」(フォイエルバッハテーゼ)

● 解釈の立場と変革の立場 ──「世界がどうあるか」を問題とする立場と「世
 界がどうあるべきか」を問題とする立場

● マルクスの変革の立場は、ヘーゲルに学んだもの

 ・「知性は単に世界をあるがままに受け取ろうとするにすぎないが、意識は
  これに反して世界をそのあるべき姿に変えようとする」(『小論理学』
  234節補遺)

● しかし、マルクスには、変革の立場を哲学として十分に展開する余裕がなか
 った

③ いかなる変革(実践)が必要なのか

● 重要なのは、合法則的発展につながる変革(実践)

 ・政治の世界は、変革の世界 ── いかなる政治が求められるかは、いかな
  る変革が必要なのかの問題

 ・自然や社会の発展法則に沿った実践が、「あるべき」自然や社会を生みだ
  す

● 理想と空想の同一と区別

 ・どちらも「あるべき姿」を問題にする変革の立場

 ・しかし、空想は、自然や社会の法則と無関係に「あるべき姿」を導き出す
  のに対し、理想は、法則に根ざした「あるべき姿」を問題とする(エンゲ
  ルス『空想から科学へ』)

● 理想とは「真にあるべき姿」を実践の目的にかかげること

 ・真にあるべき姿」は客観世界の「発展法則の科学的探求によって生みださ
  れる

 ・発展法則の中心をなすのが、「対立物の統一」の法則

 ・「現にある姿」の中に「新しいものと古いもの」「肯定的なものと否定的
  なもの」の対立を見出し、その対立をつうじて「現にある姿」を否定する
  「真にあるべき姿」を概念としてとらえる

④ ヘーゲルは「真にあるべき姿」を「概念」としてとらえた

●「真にあるべき姿」は、あるべき姿の真理として、一つしかない(真理の単
 一性)

● それは客観世界を反映する意識ではあっても、機械的反映ではなく、意識の
 創造性の産物 ── 直接性と媒介性の統一

●「真にあるべき姿」をとらえることが、哲学の課題であり、科学の課題であ
 る(非合理主義哲学への批判)

⑤ 相対的真理から絶対的真理への前進

●「概念」をかかげた実践をくり返すことによって相対的真理から、絶対的真
 理(絶対理念)に接近する

● 概念をかかげた実践は「大人の立場」「世界の究極目的が不断に実践されつ
 つあるとともに、また実現されているのだということを認識するとき、満足
 を知らぬ努力というものはなくなってしまう」(『小論理学』234節補遺

⑥ ヘーゲル哲学の結論

●「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」

● エンゲルス『フォイエルバッハ論』でこの命題に注目

● 客観世界と「真にあるべき姿」との弁証法(理想と現実の統一)をとらえた
 もの

●「哲学はただ理念をのみ取り扱うものであるが、しかもこの理念は、単にゾ
 レンにとどまって現実的ではないほど無力なものではない」(『小論理学』
 第6節)

 

4.レーニンは、ヘーゲル哲学の真髄をとらえた

① ヘーゲルの変革の立場に着目

●「人間の意識は、客観的世界を反映するだけでなく、それを創造しもする」
 (『哲学ノート』p.181)

●「世界は人間を満足させず、そして人間は自己の行為によって、世界を変え
 ようと決心する」(同p.182)

② 哲学上の実践の意義を評価

●「カール・マルクス」で「古い唯物論」を批判

●「彼らは『人間の本質』を抽象的に理解して、これを(具体的=歴史的に特
 定の)『社会的諸関係の総体』と理解せず、……『革命的、実践的活動』の
 意義を理解しなかった」(全集p.40)

③ 「概念」をかかげた実践が、客観的真理を実現するととらえた

●「疑いもなく、ヘーゲルでは実践が、一つの環としてしかも客観的真理への
 移行として、認識過程の分析のうちにその位置を占めている」(「哲学ノー
 ト」p.181)

● 重要なのは、それに続いて、「フォイエルバッハに関するテーゼを参照せ
 よ」とあること

 ・マルクス「実践において人間は、彼の思惟の真理性、すなわち現実性と
  力、此岸性を証明すること」

 ・マルクスは、ヘーゲル『小論理学』第6節(前述)を念頭に置いている

● 実践は、現実性から空無性という特質を取りさり、この現実性を客観的に真
 なるものにする(『哲学ノート』p.182)

④ レーニンは、弁証法をどのように仕上げようとしたか

●「カール・マルクス」の弁証法と「哲学ノート」に弁証法の16の要素

 ・いずれも客観世界における運動の法則としての弁証法を中心にその諸法則
  を展開しようとしたもの

 ・変革の立場を示す実践と「真にあるべき姿」が明確に位置づけられていな
  い発展途上のもの

●「弁証法は、簡単に対立物の統一と規定することができる。これによって弁
 証法の核心はつかまれるであろうが、しかしこれは説明と展開とを要する」
 (『哲学ノート』p.191)

 ・弁証法は、一面的なものの見方を排し、全面的にみて、真理をとらえる思
  考形式

 ・形式論理学は固定的に、バラバラに事物をとらえる一面的な思考形式

 ・全面的にとらえる見方の中心をなすのが、「対立物の統一」

 ・対立物の統一を中心とし、その展開として主観と客観およびその相互間の
  運動と連関をとらえようとしたのが、レーニンの意図だったものと思われ
  る

 

5.科学的社会主義の理論と変革の立場

① 変革の精神と科学の目

●「日本共産党は、どんな問題に対しても科学的社会主義のこの立場でのぞむ」
 (第22回党大会、『前衛』p.122)

● ヘーゲルから、マルクス、レーニンに引き継がれた変革の立場を引き継ぎ発
 展させたもの

② 「真にあるべき姿」を国民の前に提起することが科学的社会主義の政党の
  役割

● 松本幸四郎「事実は真実の敵なり」

●「歴史に対する前衛党の責任」は「、そのときどきの歴史が提起した諸問題
 を正面からたちむかい、社会進歩の促進のために真理をかかげてたたかうこ
 と」(第20回大会、『前衛』p.40 ~ 41)

●「国民こそ主人公」の見地から「真にあるべき姿」を探求

 ・国民の「全体意志」ではなく「普遍的意志」

③ 真理をかかげたたたかいに無駄はない

● 相対的真理の追究なしに、絶対的真理への接近はない

●「その方向が真理にそっているかぎり、たたかってむだなたたかいはない」
 (同p.42)

④ 真理は必ず勝利する

● 多数者革命は、真理を目標にかかげるからこそ可能となる

●「真理は未来においては、いろいろなジグザグはあったとしても必ず多数派
 になる。」(同p.41)

 ・未来の真理は真理自身の持つ力によって現実となる必然性を持つ

 ・「理性的なものは現実的」である