2005年4月26日 講義

 

 

第2講 商品と貨幣

 

1.経済学の方法と概説

① 経済学の方法

● 何から叙述するのか――具体的なものからか、抽象的なものからか

 ・具体的経済的諸現象は、「多くの規定と関係とをふくむ一つの豊かな総体」
  (全集⑬ 627ページ)

 ・抽象から具体へと前進するのが「科学的に正しい方法」(同)

●『資本論』は、資本主義的生産様式の「富の要素形態」(① 59ページ)、
 「経済的な細胞形態」(① 8ページ)という最も抽象的な、「胚」から出発す
 る →「萌芽からの発展」または「発生論的方法」

● 古典派経済学は、発生論的に展開しなかったから混乱におちいった

 ・古典派経済学と俗流経済学のちがい


② 『資本論』全三部の概要

● 商品を出発点とし、最終的に資本主義的生産様式の運動法則を明らかにする

1)第一部「資本の生産過程」

● 商品の分析から価値と使用価値の対立が明らかに

 ・この商品内の対立が外的対立(商品と貨幣の対立、販売と購買の対立)に
  →ここに恐慌の可能性が生じる

● 貨幣の資本への転化

 ・資本とは自己増殖する価値

 ・自己増殖の秘密は、労働者による剰余価値の生産にある
 ・資本主義的生産の規定的目的は剰余価値の生産に
  ――搾取強化の諸形態の研究

● 資本蓄積は、富と貧困の対立という階級的矛盾を激化させる

●「収奪者が収奪される」→社会主義・共産主義への移行の必然性

2)第二部「資本の流通過程」

● 資本の生産過程と流通過程の統一としての総過程(再生産過程)

 ・社会的総資本の再生産される条件の検討

● 恐慌の可能性と現実性、現実性と必然性

3)第三部「資本主義的生産の総過程」

● 第一部、第二部が「本質論」であったのに対し、第三部は「現象論」

● 二つの主題

 1)剰余価値から、一般的利潤率(平均利潤率)へ

 2)剰余価値から、利潤、利子、地代へ

●『資本論』の最後は、資本家と労働者の二大階級の階級闘争の発展と社会主
 義・共産主義への移行の必然性

 

2.商品と貨幣(第一部第一篇)

① 商品の使用価値と価値

● 商品をその運動においてとらえるには、「対立物の統一」の観点

 ・商品は、量と質の統一

 ・商品の質――商品の有用性=使用価値

 ・商品の量――商品の交換比率=交換価値
 
● 商品の交換価値は、商品の奥に潜む価値量という本質が目に見える形であらわ
 れた現象形態(価値形態)

● 商品は、使用価値と価値という対立物の統一

● 商品の価値を規定するのは、その商品の生産に必要な抽象的人間的労働の「平
 均的・社会的労働時間」(労働価値説)

 ・商品の価値量は目にみえない

● 労働の生産力が発展・すれば、商品一個当たりの価値量は低下する

 ・抽象的人間的労働にも質がある

 ・単純労働と複雑労働

 ・平均労働と強化労働


② 商品から貨幣へ
 
● 20エレのリンネルを一着の上着と交換

 ・リンネルの価値は、上着そのものによって表示される

 ・リンネル――相対的価値形態(リンネルの価値は、他の商品によって、相対
  的に示される)

 ・上着――等価形態(上着そのものは、リンネルの価値と等しい価値をもつも
  のとして示される)→商品の内部における対立は、外的対立に移行する

● 個別的価値形態の展開

 20エレのリンネル = 一着の上着
          = 10ポンドの茶
          = 40ポンドのコーヒー
          = 1クォーターの小麦
          = 2オンスの金
          = 等々

● 一般的価値形態

  一着の上着     ╮
  10ポンドの茶    │
  40ポンドのコーヒー ┠(全て)=20エレのリンネル
  1クォーターの小麦 │
  2オンスの金    ╯

 ・20エレのリンネルは、他のどんな商品とも交換しうる形態(一般的等価形
  態)にある、商品世界一般から排除された特別な商品

 ・この特別な商品が貨幣となる

 ・貨幣は最初は、金や銀の一定重量として登場する(ポンドも両も重さを表わ
  す単位)


③ 貨幣論と恐慌の可能性

1)価値尺度としての貨幣

● 商品一般の価値の章標となるもの

● 必要なのは、「客観的社会的妥当性」のみ
 ――価値のない紙幣も国家の強制力により貨幣となる

2)流通手段としての貨幣

● 流通手段としての貨幣の登場により、販売と購買とは分離・対立する
 ――商品の"命がけの飛躍"

● 信用売りにより、貨幣は支払い手段となる

3)恐慌の可能性

● 流通手段としての貨幣と商品の対立は、二つの恐慌の可能性を生みだす

 ・第一の可能性――販売と購買の分離・対立

 ・第二の可能性――支払い手段としての貨幣と価値の担い手としての貨幣の分
  離・対立

 

 

*次回は第2篇「貨幣の資本への転化」、第3篇「絶対的剰余価値の生産」を予定