2005年5月24日 講義

 

 

第4講 剰余価値の増殖

 

1.剰余価値増殖の方法

① 絶対的剰余価値と相対的剰余価値

● 絶対的剰余価値

 ・ 労働日の延長による剰余価値の増大

 ・マルクスのモデルは、12時間労働、剰余価値率100%

 ・イギリスでは1833年の工場法が制定されるまで無制限の労働日の延長

 ・10時間労働法制定後も「数分間のちょろまかし」「食事時間のかじり取り」
  (② 413ページ)

 ・現代日本におけるサービス残業は、1ヶ月数十時間にも

● 相対的剰余価値

 ・一定の標準労働日のなかで必要労働時間の短縮による、相対的な剰余労働の
  増大


② 労働強化による絶対的剰余価値と相対的剰余価値の統一

● 労働強化のもたらすもの

 ・ モデル(必要労働時間6時間、剰余労働時間6時間)1時間あたり10個、
  1日120個生産(剰余価値分60個、剰余価値率100%)

 ・強化モデル 1時間あたり12個、1日144個(剰余価値分84個=144-60)
  剰余価値率140%(84 / 60)
  →2割の労働強化で、剰余価値率は40%も増大 される

● なぜ20%の労働強化が40%の剰余価値率の増大をもたらすのか

 ・事実上20%の労働日の延長であると同時に、必要労働時間は20%短縮する

 ・絶対的剰余価値20%相対的剰余価値20%の増大により剰余価値率40%増に

● 労働強化は、 絶対的剰余価値の増殖と相対的剰余価値の増殖を同時にもたらす
 もっとも効果的搾取方法であり、しかも法的規制の困難な部分

 

2.相対的剰余価値の増殖

① 必要労働時間の短縮(労働力の価値の低下)は個別資本では解決しえない

● 労働力の価値は、1日内においては、歴史的・社会的に規定されている

● 労働力の価値は、全社会的に労働者の生活手段そのものの生産力が増大し、そ
 の価値が低下してはじめて低下しうる


② なぜ個々の資本家は生産力の発展に駆り立てられるのか

● 相対的剰余価値の増殖は、個々の資本家の直接の目的になりえないのに、なぜ
 生産力の発展に駆り立てられるのか

● それは「特別剰余価値」の獲得のため

 ・個別資本は、生産力を発展させことにより商品単価(価値)を引き下げるこ
  とができるが、それでも市場では従来の市場価格で販売し、特別剰余価値を
  手にしうる

● 特別剰余価値も相対的剰余価値の一形態

 ・ 生産量が倍加すれば、資本家は2倍の価値を手にしうるが、賃金(労働力の
  価値=価格)はかわらないから、必要労働時間は短縮される

● 資本家は、剰余価値の生産を規定的目的としつつ、価値の低下をもたらす生産
 力の増大に奔走する


③ 労働の生産力の発展のもたらす矛盾

● 労働日の延長、労働力の強化とあわせ、生産力増大の競争の強制

● 資本主義的生産様式のもとでは、生産力の発展は、労働日の短縮をもたらさな
 い

 

3.相対的剰余価値獲得のための生産力の発展
  (第1部第4篇)

① 協業

● 生産力発展の方法としての、協業、マニュファクチュア、機械制大工業

 ・ 機械制大工業は、「独自の資本主義的生産様式」

● 協業――多数の労働者が一ヶ所に集まって作業

 ・量から質への転化――個別的労働力は集団力に転化し、すべての労働は平均化

● 労働は資本の「指揮」下に

 ・ 労働の二面性に対応する指揮の二面性

 ・労働過程の「指揮」は、「オーケストラの指揮者」の役割

 ・価値増殖過程の「指揮」は、搾取強化の機能

● 協業は、「資本主義的生産様式の基本形態」(③ 584ページ)


② マニュファクチュア

● マニュファクチュアとは、「分業にもとづく協業」(585ページ)

 ・「利点の多くは協業の一般的本質から発生する」(589ページ)

● 労働者は、「一面的な部分労働者」(③ 590ページ)に

 ・部分労働者化は、進歩と退歩の統一

 ・進歩――「手工業的熟練」(③ 589ページ)を身につける

 ・退歩――労働者の部分労働化による資本の所有物に

● 社会的分業の無政府性とマニュファクチュア的分業の専制

 ・資本主義の矛盾の一つに発展

 ・個々の工場内における生産の組織化と全体としての社会的生産の無政府性
  (全集⑲ 213ページ)

 

 

*次回は第4篇第13章「機械設備と大工業」を予定