2005年6月14日 講義
第5講 資本主義とは何か
1.機械とは何か
① 産業革命
● マニュファクチュアから大工業へ移行は、の道具から機械への移行をもたらす
産業革命により実現
・1735年 ジョン・ワイアト 紡績機械の発明に始まる(③ 645ページ)
・発達した機械――原動機、伝動機構、道具機(作業機)(③ 647ページ)
● 産業革命の本質は何か
・本質と現象は、弁証法のもっとも重要なカテゴリー
・「本質は過ぎ去った有」(ヘーゲル)
・産業革命の本質は、生産力の発展を目的とした機械の発明
・「資本主義に使用される機械設備の目的」は、「剰余価値の生産のための手
段」(643ページ)
② 機械とは何か
● 機械と道具の同一と区別
・機械(道具機)と道具は、労働の「質」としては同一
・道具機を道具から区別するのは、労働の「量」、生産力の差
● 機械と道具の定義
・道具とは、人間の手足の延長として、人間に従属し、人間力の限界内で生産
力を発揮する労働手段
・機械とは、人間から相対的に自立し、人間力の限界から解放された生産力を
発揮する労働手段→機械の本質は道具機にある
● 機械の発展による機械制大工業の登場
・道具機の発展は原動力、伝動機構の発展をもたらす
・機械の3つの部分は有機的に結合し、巨大な体系化された機械設備に
――個々の機械から機械設備への移行
・機械設備をもつ機械制大工業に
2.機械制大工業は、「独自の資本主義的生産様式」
① 労働の実質的包摂
● 機械制大工業は、資本主義的搾取強化と資本主義的生産様式の諸矛盾を激化さ
せる――「独自の資本主義的生産様式」
● 資本のもとへの「労働の形式的包摂」から「労働の実質的包摂」へ(③ 874
ページ)
・「工場全体への、すなわち資本家への、労働者のどうしようもない従属が完
成される」
・「工場の全労働が、労働者からではなく、機械から出発する」(③ 727
ページ)
② 工場とは何か
●「工場」は、機械制大工業の完成態
・「工場」を特徴づけるものは、「自動装置そのものが主体」、労働者は自動
装置に付属(③ 725ページ)
・しかも、自動装置は「資本のうちに意識と意志」(③ 697ページ)を持つ
・資本家は、機械設備を媒介として、労働者への専制支配と搾取を強化マニュ
ファクチュアにおける労働者に従属した労働手段から、労働者を支配す労働
手段へと弁証法的な転化をとげる
● 工場は「緩和された徒刑場」
1)神経系統を極度に疲労させ、自由な肉体的、精神的活動を奪い去る
(③ 730, 731ページ)
2)資本家の専制支配の確立――「工場法典」により「一つの兵役的規律」
(③ 732ページ)の確立
3)労働者の生活と健康を破壊する職場環境(③ 737ページ)
3.機械の労働者に及ぼす「一般的反作用」
① 機械の及ぼす四つの反作用
1)女性・児童労働の使用(③ 682ページ)
・それに伴う夫の労働力の価値の減少
2)労働日の延長(③ 696ページ)
・「モラーリッシュの摩滅」――ヘーゲル『法の哲学』の影響
3)労働の強化(③ 712ページ)
4)労働者の駆逐(③ 705ページ)
・機械設備は、「資本の専制に反対する周期的な労働者の蜂起、ストライキな
どを打倒するためのもっとも強力な武器となる」(752ページ)
→機械の資本主義的使用は、機械の進歩が退歩をもたらす
② 機械制大工業の弁証法
1)機械の発展は、生産力の飛躍的発展と全面的に発達した個人を生み出す
(838ページ)
2)家父長的家族制度の解体と対等平等な家族関係の登場
3)自由と民主主義の発展
・資本主義社会は、「各個人の完全で自由な発展を基本原理とする、より高度
な社会形態の唯一の現実的土台となりうる物質的生産諸条件を創置させる」
(④ 1016ページ)
・未来社会に引き継ぐべき遺産の一つ
4)工場立法の一般化による階級闘争の成熟
③ 機械制大工業の社会全体への影響
● 飛躍的な生産力の発展により、植民地、南北問題を生みだす(③ 779ページ)
・外国市場の征服
・工業地と農業地への分割――モノカルチュアにより経済的自立性の破壊
● 景気循環(③ 782ページ)
・熱病的生産と市場の過充
・中位の活気、繁栄、過剰生産、恐慌、停滞の循環――第2部の主題
4.資本主義的生産様式とは何か
① 絶対的剰余価値と相対的剰余価値との関係
● 絶対的剰余価値と相対的剰余価値とはどのような関係にあるのか
――対立物の統一の具体的形態の探究(第5篇の主題)
● 資本主義の発展は、機械制大工業による生産力の発展競争を強制する
● 機械制大工業による相対的剰余価値の生産は、「社会的に、支配的な、形態」
(③ 875ページ)となる
② 資本主義的生産様式とは何か
● 資本主義の本質――機械制大工業が支配的形態となったもとで、生産力の発展
によるより多くの剰余価値の獲得をめざして、個別資本が生き残り競争を強制
される生産様式の社会
● 第6篇、第7篇をつうじて、資本の運動と矛盾の展開が明らかにされる(第1
部の主題)
*次回は第6篇「労賃」、第7篇「資本の蓄積過程」を予定
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