2005年7月12日 講義

 

 

第7講 資本蓄積の一般的法則

 

1.産業予備軍の形成

● 資本の蓄積は、労働者の側に何をもたらすのか

 ・資本の蓄積とそれに伴う有機的構成の高度化は、労働者に対する需要を絶対
  的に増大しつつも、総資本の総量に比し相対的に低下させる

 ・1950~1980の日本国民総生産31兆8000億円→317兆5000億円と10倍に労
  働者人口1389万人→3801万人と3倍に

 ・労働者市場に引きよせられた労働者は、生涯そこにとどまらざるをえない

● 労働者人口の絶対的増大と相対的低下の矛盾は過剰労働者人口を生みだす

 ・相対的過剰人口は、「資本主義的生産様式に固有な人口法則」

 ・中国の「社会主義市場経済」の一つの課題

● 過剰労働者人口は、「資本主義的蓄積のテコ」(④ 1087/661ページ)

 ・「絶対的に資本に所属する、自由に処分できる、産業予備軍を形成」(同)

 ・資本は景気循環のなかで必要に応じて吸引、反発

 

2.資本主義的蓄積の一般的法則

● 産業予備軍の四つの形態

 1)流動的過剰人口――景気循環のなかで、吸引・反発される労働者
 2)潜在的過剰人口――農村人口
 3)停滞的過剰人口――不安定、不規則雇用の労働者
 4)受救貧民

● 産業予備軍の存在は、労働者階級の死錘

 ・「いやならやめろ、代わりならいくらでもいる」

 ・「労働者階級の一部分の過剰労働による、他の部分の強制的怠惰への突き落
  とし(④ 1093 / 605ページ)

 ・「資本が蓄積されるのにつれて、労働者の報酬がどうであろうと――高かろ
  うと低かろうと――労働者の状態は悪化せざるをえない」(④ 1108 / 675
  ページ)

●「一方の側における富の蓄積は、同時に、その対極における、すなわち自分自
 身の生産物を資本として生産する階級の側における、貧困、労働苦、奴隷状
 態、無知、野蛮化、および道徳的堕落の蓄積である」(④ 1108 / 675ページ)
 ――資本主義的蓄積の敵対的性格

 

3.第1部「資本の生産過程」の弁証法・まとめ

● 全体として、対立物の統一を軸とする萌芽からの発展として展開

 ・まず富の要素形態としての商品を分析して使用価値と価値としてとらえる
  (対立物の統一)

 ・商品内部の対立は、商品と貨幣という外部の対立へ(内と外の弁証法)

 ・貨幣の一定量の蓄積は、貨幣を資本に転化する(量から質への移行)

 ・商品流通と資本の流通(自と他の弁証法)――資本の運動の規定的目的は剰
  余価値の生産

 ・剰余価値は流通のなかから発生すると同時に流通のなかからは生まれない
  (対立物の統一)――労働力という特別の商品

 ・剰余価値の生産の観点から、資本は可変資本と不変資本の統一としてとえら
  れる(対立物の統一)――剰余価値率=m/v

 ・剰余価値生産の方法の観点から、絶対的剰余価値と相対的剰余価値(対立物
  の統一)――標準労働日の判定下では、相対的剰余価値の生産、そのための
  生産力の発展が基本的搾取方法に

 ・道具から機械への移行による生産力の発展(質から量への移行)

 ・機械制大工業は、労働者が主役の生産から機械が主役の生産へ(対立物の相
  互移行)

 ・資本主義の本質は、機械制大工業を基礎として、生産力の発展を競い合う生
  産様式(本質を現象から区別する)

 ・労賃は労働力の価値という本質を隠す仮象(仮象と本質との関連)――資本
  主義を神秘化

 ・資本は、運動する主体として、「蓄積のための蓄積」(④ 1021 / 621ペー
  ジ)をする(本質は現象する)

 ・資本主義的蓄積は、商品の生産・交換の法則を資本主義的取得法則に転換す
  る(対立物の相互移行)

 ・資本主義的蓄積の一般的法則は、資本家と労働者階級の階級的対立を生みだ
  す(対立物の統一)

● 商品という「萌芽」から出発し、その弁証法的展開をつうじて資本家と労働
 者の階級対立にまで「萌芽からの発展」

●『資本論』は弁証法を抜きには語れない

 ・マルクスは弁証法を使って研究し、その成果を弁証法を使って『資本論』で
  叙述(① 27 / 27ページ)

 ・弁証法を使って「萌芽からの発展」として叙述したから、『資本論』は「芸
  術的全体」をなしている

 

4.本源的蓄積

● 歴史上いかにして資本主義の出発点となる資本の蓄積がなされていったのか

 ・資本主義が成立するのは、
  ① 資本家の存在
  ② 二重の意味で自由な労働者の存在
  ③ 労働者が自発的に資本との合体を求めること

 ・資本家と労働者は、歴史上同時期に登場しなければならない

 ・「いわゆる本源的蓄積は、生産者と生産手段との歴史的分離過程」
  (④ 1224 / 742ページ) 

 ・それはつまり、封建社会の解体、農民からの土地分離過程

● 農民から土地を収奪する「歴史は、血と火の文字で人類の年代記に書き込まれ
 ている」(④ 1225 / 743ページ)

 ・きっかけとなったのは、「羊毛マニュファクチュアの繁栄と羊毛価格の騰
  貴」(④ 1230 / 746ページ)による「耕地の牧羊地への転化」(同)
  ――羊が農民を追い出す

 ・教会領、国有地、共同地の盗奪、「地所の清掃」

● これに続く「被収奪者に対する流血の立法」(④1258 / 761ページ)

● 借地農業経営者は、羊毛マニュファクチュアの産業資本家に

● 産業資本家による新天地・植民地の略奪

●「資本は、頭から爪先まで、あらゆる毛穴から、血と汚物をしたたらせながら
 この世に生まれてくる」(④ 1300 / 788ページ)

 

5.否定の否定

● 否定の否定――弁証法の基本法則

 ・古いものが保存されつつ、否定されることを繰り返すことによって、事物や
  認識が「らせん形」に発展するという発展法則

● 最初の否定

 ・商品の生産・交換の法則から、資本主義的取得法則への転換

 ・生産の法則(労働と所有の結合)から労働と所有の分離に

● 否定の否定(④ 1306 / 791ページ)

 ・資本主義的取得法則から、社会主義的取得法則への転換
  ――「生産手段の共有を基礎とする個人的所有の再建」(同)

 ・再び労働と所有の結合

 ・「資本主義的私的所有の弔鐘が鳴る。収奪者が収奪される」(同)

 ・こうして資本主義から社会主義への移行の必然性が明らかに

 

 

*次回は第2部第1篇の最後(第5冊)まで