2005年7月26日 講義
第8講 資本の循環(第1篇)
1.第1部の主題と構成
① 第2部の主題
● 第2部は、資本の生産過程と流通過程の統一を論じる
● 第1部、第2部は、資本の運動過程の本質論
第3部は、本質と現象の統一としての現実論
● 第2部の主題
1)流通過程は資本にとっての制限
・限界の弁証法、制限と当為の弁証法
2)恐慌論(社会的再生産過程の攪乱)の理論的解明
② 第二部の構成
● 第1篇資本の循環
――流通過程を短縮して、いかに「資本の作用度」を高めるか
● 第2篇 資本の回転
――資本の回転期間上の制限を打ち破り、いかに「資本の作用度」を高めるか
● 第3篇 社会的総資本の再生産過程
● 第2部では正面から恐慌論がとりあげられていないので「61~63年草稿」で
補充
● 第2部、第3部は、未完成草稿のため、「一つの芸術的全体」をなしていない
・ その分、弁証法の意識的掘り起しが求められる
2.資本の循環
① 資本の循環の3つの形態
● 貨幣資本――生産資本――商品資本――貨幣資本――生産資本――商品資本を
くり返す
● 産業資本という、同一の主体の3つの資本形態
・産業資本は、剰余価値を生産、取得する「資本の唯一の定在様式」
(⑤ 89ページ)
・貨幣資本の循環は、資本主義的生産の推進的動機を示す
・生産資本の循環は、資本の蓄積を示す
・商品資本の循環は、社会的総資本のからみ合いを示す
→3つの資本形態は、いずれも産業資本の一面を示すのみ
② 資本の総循環からみた資本の制限と当為
● 剰余価値を生産するのは生産資本の形態のみ
● 貨幣資本、商品資本も剰余価値を生産しないから、資本にとっての制限となる
・資本はこの制限を乗り越えようとする
3.資本の作用度の増大
① 限界の弁証法、制限と当為の弁証法
● 生産過程と流通過程とは、連続性と非連続性の統一
・限界は矛盾――「限界は一方では定有の実在性をなし、他方ではその否定性
である」(『小論理学』㊤ 284ページ)
・或るものと他のものは、限界において接していると同時に区別されている
● すべてのものは、運動、変化、発展する
・或るものは、限界において他のものと接しているから、限界という「制限」
を乗り越えて、他のものに移行する
・「制限」を乗り越えようとする衝動が「当為」
● 剰余価値を規定的目的とする資本は、流通過程を自己の制限とみなし、「当
為」として「資本の作用度」を高めようとする
② 非生産的過程の短縮
1)生産資本における労働時間の中断過程の短縮
2)流通過程(販売時間と購買時間)の短縮
・ 販売と購買に必要な費用と労働は価値を生まない「生産の空費」
(⑤ 207ページ)
3)保管費と輸送費は、一般的には流通費に属するが、例外的に限界に位置し
て、生産過程に属することがある
*次回は第2篇の最後(第6冊の最後)まで
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