2005年10月11日 講義
第12講 恐慌論 ②
1.差異、対立、矛盾
● 区別のなかには、差異、対立、矛盾――鈍い区別から鋭い区別に
● 差異――「他のものとの関係には無関心」(『小論理学』㊦ 23ページ)な区
別。区別される二つのものは、相互に無関心、無関係な間柄
● 対立――「一方は他方なしには考えられないような一対の規定」(同 27ペー
ジ)お互いに「自己に固有な他者」をもつ
● 矛盾――対立関係にある二つのものが、相互排斥し合う関係(対立物の闘争)
・矛盾の解決または止揚――対立物の闘争をつうじて「自分自身によって自己
を揚棄」(同 33ページ)→より高い対立物の統一へ
・「一般に世界を動かすものは矛盾である」(同)
2.恐慌の「事柄」
● 恐慌の抽象的可能性の具体的可能性への移行が課題
・商品流通一般から資本主義的生産様式に舞台を移行させる
・第一の抽象的可能性である「購買と販売の分離」は、社会的総資本の再生産
過程において「生産と消費の分離・差異」に
● 資本蓄積の一般的法則のもとで「生産と消費の差異」は「生産と消費の対立」
に
・資本家の剰余価値・利潤と労働者の労賃は、二つの「本源的収入」
・労賃が価値以下に押し下げられることにより、社会的総資本の再生産過程に
は撹乱が生ずる
・撹乱により「生産と消費の差異」(無関心な均衡)は、「生産と消費の対
立」(消費が生産を下回る)に
● 「生産と消費の対立」は恐慌の「事柄」
3.恐慌の「条件」
● 第二の抽象的可能性である「支払い手段としての貨幣」(価値の担い手として
の貨幣と支払い手段としての貨幣の分離)は、「流通過程の短縮」に
・メーカー →商社(ディーラー)→中卸売業者→小売業者→消費者
・商品資本の介入による「流通過程の短縮」
・信用貨幣(手形)による支払い
● 「流通過程の短縮」は、外観上の消費、架空の消費を生み出し、「生産と消費
の対立」を隠蔽する――恐慌の条件
・「流通過程の短縮」により、「生産と消費の対立」は「生産と消費の矛盾」
に移行
● 恐慌の「事柄」としての「生産と消費の対立」と条件としての「流通過程の短
縮」とは、恐慌の具体的可能性を生みだす
4.恐慌の「活動」
● 具体的可能性を現実性に必然的に転化させるのが、恐慌の「活動」
● 恐慌の「活動」としての「競争と信用」
● 資本主義的生産様式は剰余価値の生産を目的とし、生産力の発展による、より
安い商品の生産を競い合う
● 銀行制度は、信用の供与により生産力の発展競争を促進し、過剰生産へ導く
・信用制度は「必然的に熱病的な生産とそれに続く市場の過充をつくり出」
(③ 782 / 476ページ)す
・過剰生産は、「流通過程の短縮」により隠蔽され続け、産業循環は「中位の
活気」から「繁栄」へ
・そのなかで、「生産と消費の矛盾」は極限まで拡大する
● 矛盾の一時的・暴力的解決としての恐慌
・「繁栄をきわめた状態」(⑤ 120 / 81ページ)で矛盾は爆発する
・生産は縮小し再び均衡条件は回復し、産業循環は「停滞」から「活気」へと
向かう
・恐慌はくり返される
● 恐慌はなぜ1825年から始まったのか
・機械制大工業が全生産に支配的影響
・恐慌の「活動」は、機械制大工業の支配のもとでの「競争と信用」
5.恐慌論のまとめ
● 恐慌の一般的抽象的可能性
① 購買と販売の分離
② 支払い手段としての貨幣
● 恐慌の具体的可能性
① 生産と消費の対立
② 流通過程の短縮
● 恐慌の具体的可能性を現実性に必然的に転化させる活動
① 競争と信用
② 機械制大工業の支配
● 恐慌の本質
・資本主義的矛盾の一時的・暴力的解決
・恐慌は、資本主義の"不治の病"
*次回は第3部第1篇(第8冊)です。
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