2005年10月25日 講義

 

 

第13講 利潤(第3部第1篇)と
     平均利潤(第2篇)

 

1.第3部の主題と構成

① 第3部の主題

1)第3部は、本質と現象の統一である「現実性」

● 本質のあらわれとしての本質的現象と仮象

 ・「科学の目」で、本質がどのような媒介を経て現象、仮象としての「現実
  性」として現われるかを明らかに

● 第3部は「現代資本主義とは何か」という「現実性」を明らかに

 ・21世紀資本主義の「現実性」を

 ・自由競争段階から独占資本主義段階に移行

● 利潤、一般的利潤率、商人資本、地代、利子などの「現実性」の解明

● 科学的経済学と俗流経済学、古典派経済学

 ・俗流経済学は、現象だけに注目

 ・古典派経済学は、本質と現象、仮象を統一してとらえることができない

2)資本主義的生産様式の「制限」と当為としての社会主義・共産主義

● 第1部、代2部での資本の制限と当為は、資本主義的生産様式そのものの制限
 と当為に

● 資本主義的生産様式の真の制限は「資本そのもの」

3)資本主義的生産様式の「制限」を打破する当為としての
  商人資本、利子生み資本

● 商人資本、利子生み資本は、資本主義的生産様式の「制限」を打破することに
 より、資本主義的生産様式の矛盾が拡大すること

● 矛盾の拡大は、社会主義・共産主義への移行の必然性を明らかに


② 第3部の構成

● 第1篇――剰余価値という本質は、利潤という現象に転化。利潤第一主義

● 第2篇――平均利潤、一般的利潤率とは何か

● 第3篇――一般的利潤率の傾向的低下の法則。これが資本主義の矛盾を強める

 ・第15章は、『資本論』全体の結論

● 第4篇――商人資本とは何か

● 第5篇――利子生み資本と信用(金融)論

 ・現代において信用(金融)論は、特別に重要な意義を持つ

● 第6篇――地代はどこから生じるのか

● 第7篇――資本が利潤を、土地が地代を、労働が労賃をという「三位一体的定
 式」の批判

 

2.剰余価値の利潤への転化(第1篇)

① 利潤とは何か

● 利潤は、剰余価値の目にみえる形態

 ・商品価値=費用価格(c+v)+利潤(m)

 ・利潤は、可変資本と不変資本の区別を覆い隠す

 ・すべての資本が、利潤の源泉として現われる

● 資本家は、商品を価値(c+v+m)以下で売っても利潤を手にしうる

 ・薄利多売の安売り競争

● 「利潤率こそ、歴史的な出発点」(⑧72/53ページ)


② 利潤増大のための資本の制限と当為

 p' = m / C = M / c+v
     Cは前貸し総資本
         cは前貸し不変資本

● 回転時間の短縮、不変資本の節約、原・材料の節約による利潤の増大

● 利潤率の増大は、資本家の「個人的な営業手腕に大きく依存する」
(⑧ 241 / 148ページ)との幻想を生み出す

 

3.利潤の平均利潤への転化

① 問題の提起

● 現実には、異なる生産部面における資本の有機的構成は異なるにもかかわら
 ず、平均的利潤率が市場を支配する

● 価値法則と利潤率は矛盾しないのか


② 平均利潤率の形成

● 平均利潤率は、全社会の剰余価値(利潤)を全社会の前貸し総資本の価値で
 割ったもの

● 商品の生産価格=費用価格(c+v)+平均利潤

● 全社会的にみると、生産価格に含まれる利潤総額は、剰余価値総額に一致
 ――価値法則は貫かれている


③ 価値法則から一般的利潤率への歴史的移行

● 歴史的には価値法則は「交換の最初から15世紀にいたるまで」「5000年から
 7000年の期間にわたって支配」(⑬ 1571 / 909ページ)

● 一般的利潤率はそれ以降――大工業の支配が一般的利潤率を生み出す


④ 独占資本主義の成立と一般的利潤率

● 20世紀初頭に独占資本主義登場

 ・独占は競争を排除し、独占価格による独占利潤を獲得する

● 独占資本は、一般的利潤率の形成に参加しない

 ・全社会的剰余価値(利潤)の総量から独占利潤を除いたもので一般的利潤率
  が形成される

● 多国籍企業の独占資本内部で、国際的リストラによる価格下落
 ――否定の否定の法則

 

 

*次回は第3部第2篇(第9冊)です。