2005年11月8日 講義

 

 

第14講 一般的利潤率とその傾向的低下の法則

 

1.価値法則と利潤率

① 本質としての価値法則と現象としての平均利潤率

● 価値法則と平均利潤率は、本質と現象の関係

● 平均利潤率のなかに本質としての価値法則は、「総計一致の二命題」として生
 きている

● 本質は「過ぎ去った有」

 ・歴史的には、価値法則から平均利潤率への漸次的移行

 ・商業資本から産業資本への移行


② 均等化のための競争

● 一般的利潤率への均等化は、歴史的には、二段階の競争から生まれる

 ・価値法則は、市場での自由競争のなかから生まれる

 ・市場での自由競争が、市場価格、次いで生産価格を生みだす

● 市場価格

 ・一つの生産部面での競争は、市場価値と市場価格を生みだす

 ・市場価値は、「一つの生産部面で生産された諸商品の平均価値」
  (⑨ 306 / 187)

 ・「一物一価の法則」

● 生産価格

 ・資本の生産部面間での自由な移動を通じて、利潤率は均等化される

 ・異なる部面間の資本の競争は、市場価格を生産価格に転化させる

 ・資本家たちは、「真のフリーメイスン的同盟を結成」(⑨ 339 / 208)


③ 市場原理と価値法則

● 価値法則は、市場で目に見える形でも現象する

 ・中程度近似的一致の法則

 ・市場価格、生産価格の背景にあってそれらを規定する
  ――価値を中心に需給関係により市場価格、生産価格は変動する

 

2.利潤率の傾向的低下の法則(第3篇)

① 利潤率の傾向的低下の法則とは何か

● 社会的生産力の発展にともなう資本の有機的構成の高度化が、利潤率の低下を
 もたらす

● 低下の法則は、「資本主義的生産様式に特有な表現」

 ・資本主義的生産様式に特有な表現ではない、との批判あり

 ・資本家に与える影響が「特有な表現」


② なぜ「特有な表現」なのか

● 資本家にとって、利潤の生産こそ目的
 ――利潤率の低下は資本家にとって脅威


③ 低下の法則における利潤と利潤率の対立

● 社会的には、生産力の発展は、労働者人口の増大による利潤総量の増大をもた
 らす

● 個別資本も、利潤率の低下を搾取強化による利潤総量の増大で切り抜けようと
 する

● 利潤率の低下を利潤総量の増大で補うには、一定の総資本の増大が必要

 ・いずれ、利潤総量を増大しえない限界に

 ・「資本の過多」

 ・「資本の過多」は「資本主義的生産過程の攪乱と停滞、恐慌、資本の破壊を
  呼び起こす」(⑨ 436 / 266)


④ 国家独占資本主義

● 第二次大戦後、本格的国家独占資本主義の局面に

● 独占資本は、資本の過剰におちいり、国家を利用して再生産を確保しようとする

● ケインズ型国家独占資本主義――軍備増強、公共事業

● 新自由主義型国家独占資本主義――1980年代以降

 ・モノづくりから投機へ――マネー・ゲーム

 ・金融自由化、郵政民営化もその土台づくり


⑤ 一般的利潤率低下への制限と当為

●「反対に作用する原因」(第14章)

● 搾取強化による利潤の増大で、利潤率の低下を打ち破ろうとする

● この「当為」は、一方の側の富と他方の側の貧困の蓄積を促進し、資本主義的
 矛盾を激化する