2005年11月22日 講義

 

 

第15講 一般的利潤率の低下の法則と
     その内的矛盾の展開

 

1.第15章の位置づけ

● 第15章「この法則の内的諸矛盾の展開」

 ・『資本論』全体の結論部分

 ・資本主義的生産様式の真の制限をも明らかに

● 『資本論』の全体の構成

 ・第1部――「資本の生産過程」における資本の制限と当為が、富と貧困の蓄
  積という矛盾を生みだす

 ・第2部――社会的総資本の再生産過程における資本の制限と当為が、生産と
  消費の矛盾(恐慌)を生みだす

 ・第3部――資本の利潤の追求が一般的利潤率の低下という矛盾を生みだし、
  それが資本主義の真の制限を浮き彫りにし、資本主義の必然的没落を明らか
  にする

● 第3部のまとめに当たるのが第3篇第15章

 

2.「この法則の内的諸矛盾」とは何か

● 内的矛盾とは、一般的利潤率の低下に伴う資本の制限と当為

 ・資本は利潤の生産を唯一の目的として生産を発展させ、資本蓄積を行う

 ・その利潤の追求が一般的利潤率の低下をもたらす

● 「内的諸矛盾の展開」は資本主義の根本矛盾と資本そのものの真の制限を明ら
 かに

● 「目的における利潤の増大と手段における利潤率の低下という矛盾」の悪循環
 が資本主義的諸矛盾の激化させる

 

3.矛盾の展開 ①
  ――生産と消費の矛盾の拡大

● 搾取強化による利潤総量の増大

 ・労働者階級の貧困化を促進

 ・労賃の切り下げ、人減らしによる失業増大

● その結果としての生産と消費の矛盾の拡大

 ・市場の拡大――世界市場へ

 ・恐慌の原因に

 

4.矛盾の展開 ②
  ――資本の集中と貧困の蓄積

● 個別資本は、利潤総量増大のために資本蓄積を強化

 ・大資本が小資本を駆逐する

● 資本主義的蓄積の一般的法則の深化

 ・富と貧困の二極分化

 ・「大企業栄えて民滅ぶ」

 

5.矛盾の展開 ③
  ――資本の過剰と労働力の過剰の矛盾

● 資本の過多

 ・ある限界をこえると、資本総量の増大は利潤総量の増大を生みだしえなくな
  る(資本の過多)

 ・資本の過多は、労働者人口の過剰と結びつく――しかし過剰な両者は結合し
  えない

● 国家独占資本

 ・国家による過剰な資本の吸収――軍産複合体制、ムダな公共事業

 

6.矛盾の展開 ④
  ――生産力と生産関係の矛盾

● 史的唯物論

 ・社会発展の原動力は、「生産力と生産関係の矛盾」

 ・「資本主義的生産様式が物質的生産力を発展させ」るが、それは同時に「こ
  れに照応する社会的生産関係とのあいだの恒常的な矛盾」(⑨ 426, 427 /
  260ページ)を生みだす

● 「利潤の生産と利潤率の低下の矛盾」のもたらす悪循環は、生産と消費の矛
 盾、富の蓄積と貧困の蓄積の矛盾、資本の過剰と労働力の過剰の矛盾などを
 激化させ、「生産力と生産関係の矛盾」に集約されることを示す

 

7.以上の要約

● 利潤の増大と利潤率低下の矛盾は、資本主義的諸矛盾を激化させる

 ・諸矛盾を激化させ、資本主義的生産様式の歴史的限界を明らかに

● 恐慌によっても解決されない、真の制限を浮き彫りにする

 

8.資本主義的生産様式の真の制限

● 真の制限は資本そのもの

 ・資本の本質は、剰余価値の生産――この資本の本質が、資本の制限を打ち破
  り、新たな当為を生みだす「推進的動機」

 ・資本の制限の打破は、資本主義的諸矛盾を生みだし、利潤率の低下はそれを
  加速する

 ・いまや、剰余価値、利潤の生産を唯一の目的とすることが「資本主義的生産
  の真の制限」に

● 利潤の生産を規定的目的とする制限と当為の弁証法

 ・利潤の生産は、制限を打ち破る当為として資本の「出発点」になりながら、
  資本そのものの制限という「終結点」に

 ・利潤の生産は生産力発展の「推進的動機」になると同時に、生産力発展の
  「桎梏」に

● 資本そのものがなくならない限り、資本主義的諸矛盾は解決されない

 

9.資本主義の歴史的制約性

● 資本主義は、「資本そのもの」の制限を打破しえない

 ・自動崩壊論の誤り

 ・資本の制限を打破することのできるのは階級闘争のみ

● リカードウ――資本主義的生産様式を絶対的生産様式と考えた

 ・しかし、「利潤の増大と利潤率低下の矛盾」はリカードウに未来への不安を
  抱かせた

● レーニン「弁証法の問題について」

 ・『資本論』はブルジョア社会のもっとも単純な関係のうちに、現代社会のす
  べての矛盾をあばきだし、矛盾の展開をつうじて資本主義社会を始めから終
  わりまで示している

 ・『資本論』を「萌芽からの発展」としてとらえたもの

 

 

*次回は第3部第4篇(第9冊)、第5篇(第10冊)です。