2005年12月13日 講義
第16講 商人資本、利子生み資本 ①
1.商人資本(第4篇)
① 商人資本とは何か
● 第4篇 商人資本論
第5篇 利子生み資本論 第6篇 地代論は利潤の社会的
分配を研究
● 商人資本とは何か
・産業資本の流通過程の機能の自立化
・商人資本は、剰余価値を生産せず
● 商人資本の種類
1)商品取引資本――通常の商人資本
2)貨幣取引資本――銀行資本へ
● 商人資本は、流通過程の短縮という総資本の当為として誕生
・商人資本の介入により、商品資本、貨幣資本の節約
・貨幣取引資本は、全資本家階級のために貨幣の支払い収納の作業を短縮
● 商人資本は、「架空の需要」を生み出し、「生産と消費の矛盾」を拡大
② 商業利潤の源泉
● 商人資本は、どのようにして産業資本の生み出した剰余価値を手にするのか
・商人資本は、産業資本の機能の一部を肩代わりする自立した資本(同一と区
別の統一)
・産業資本と等しい利潤率を手にしえないと、資本として自立しえない
→商人資本は、「利潤の生産には参加しないで、利潤の分配に参加する」
(⑨ 482 / 295ページ)
● 平均利潤率=剰余価値/産業資本+商人資本→「平均率の完成された姿態」
(⑨ 572 / 350ページ)
● 商人資本に信用制度が加わることにより、「生産と消費の矛盾」は拡大する
・恐慌は、卸売業と銀行業のもとで発生する
・「内的依存性と外的自立性」(⑨ 515 / 316ページ)の矛盾
● 商業労働者の搾取
・商人資本の手にする利潤を生みだすのが商業労働者
・商業労働者は、「剰余価値を創造はしないが、しかし商人資本家のために剰
余価値の取得(の可能性)を創造する」(⑨ 497, 498 / 305ページ)
・公務員労働者、サービス労働者も同様
③ 貨幣取引資本
● 貨幣取引資本は、「流通過程において貨幣が遂行する純粋な技術的な運動」
(⑨ 532 / 327ページ)の自立化したもの
・とりわけ国債交易
● 手数料をとる技術的業務に預貸業務がプラスされると銀行資本となる
④ 商人資本、高利資本はなぜ古い資本様式なのか
● 商人資本は、資本主義以前では資本を代表する形態
・商人資本は商品と貨幣流通から生まれる。利子生み資本(高利資本)も同様
・商人資本と高利資本は「双子の兄弟」
● 資本主義以前の商人資本の利潤はどこからくるのか
・ 生産の剰余価値の分け前であることにかわりはない
⑤ 独占資本主義段階の商人資本
● 独占資本による直接販売、商人資本の系列化
● 独占的商人資本
2.利子生み資本(第5篇)
① はじめに
● 第5篇は、エンゲルスが編集でもっとも苦労した箇所
● とりわけ信用論(第25~35章)は完成度低し
● エンゲルスの編集上の問題もあり
② 利子生み資本とは何か
● すべての資本は、平均利潤を取得する
・そこから、貨幣資本は、平均利潤を生産するという「一つの追加的使用価
値」(⑩ 572 / 350ページ)
・この追加的使用価値が利子生み資本を生みだす
● 年平均利潤率20%とすると
・100の資本から20の利潤
・資本家Aは資本家Bから100借りて20の利潤を手にし、そのうち105の元利
をBに支払う
・Bは、100の資本で5の利子を取得
・Aは、資本なくして15の企業者利得を取得→総利潤は、企業者利得と利子
とに量的分割。資本の物神性は極致に
③ 利潤の量的分割から質的分割へ
● 企業者利得と利子とは、源泉を異にする質的区別の外見を生みだす
・利子――資本所有の果実
・企業者利得――資本使用の果実→資本の所有と使用の対立・分離――どちら
も剰余価値の源泉を覆い隠す
● 利子生み資本の自立化により、利子生み資本が「"真の意味の"資本とみなされ
る」(⑩ 636, 637 / 389ページ)→ここに資本の仏神性は完成する
④ 資本の所有と経営の分離
● 資本の所有と使用の分離 ・対立の展開
1)企業者利得は「監督賃金」(⑩ 643, 644 / 393ページ)に
2)「監督賃金」は機能資本家を不要にする→協同組合がそれを証明
3)株式会社における資本の所有と経営の分離
・株式会社――株式という信用証券を発行して他人の資本を集め、それを使用
して機能資本の運動
・株主――資本の所有
・機能資本家――「他人の資本の単なる管理人」(⑩ 757 / 452ページ)
・経営の大胆さ
・資本所有者をぺてんにかける
・株式会社は、「明らかに新たな生産形態への単なる過渡点」(⑩ 760 / 454
ページ)
*次回は第3部第5篇(第10,11冊)です。
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