● 聴 講(①45:27、②25:55、③18:35)

 

[資 料] ※別ウインドウが開きます

 ● レジュメを読む(txt

 ● 出版書籍で読む(pdf

 ● 高村講師に質問する(フォーム

 ● 本講座のトップに戻る

 

 

第17講 利子生み資本 ②

 

現行の『資本論』の「信用論」はもっとも未完成だった草稿部分で、
エンゲルスがマルクスの意図をつかめみきれないまま編集したという
制約を伴っているものです。

研究の成果をもとに主題を明確にして、
「萌芽からの発展」となるような構成で 高村流「信用論」が展開されます。

主題の第一は「信用制度とは何か」の概説です。
簡単にいって信用とは「貨幣の貸し借り、債権、債務関係の約束」のことです。

商業信用と銀行信用の二つの側面があって、
商業信用を基礎に銀行信用が成り立っています。

銀行資本の手には利子目当てに
「貸付可能な貨幣資本」(マニイド・キャピタル)が集まってきます。

そのマニイド・キャピタルを
より高い利子で機能資本家に貸し付けて 信用を供与したり、
銀行の発行する銀行手形、または銀行券によって信用を与える方法があります。
そもそも銀行券はいつでも金と交換できる兌換銀行券(信用貨幣)でした。

この金本位制が1929年の大恐慌のもと、崩壊します。
銀行券の発行権限を国家と結びついた中央銀行が独占し、
中央銀行の人為的な通貨と金融の管理をつうじて市中銀行の信用を調節し、
物価と景気の回復を図ろうという、管理通貨制度に移行します。
銀行制度は機能資本家の資本蓄積をうながし、株式制度を発展させ、
巨大な株式会社を生みだしていきます。

金融市場の拡大の中で、銀行資本は独自の発展をとげ、
次第に、資本主義的生産様式の主役の座につくようになってきます。

日本でも管理通貨制度は国家独占資本主義の理論的支柱となった
ケインズ主義と結びつき、
軍備増強やムダな公共事業のために大量の国債を発行して、
現在、国債、地方債はあわせて1000兆円という金額になっており、
そのつけが国民に押しつけられようとしています。

戦後、ドルを基軸とした固定為替相場制により
国際通貨制度を安定させようとしましたが、
アメリカの貿易収支の赤字と金保有量の減少を背景に、
変動相場制に移行することになります。

国際為替相場の日々の変動は投機取引の拡大をまねきます。

1970年代後半から新自由主義の台頭のもと、
「金融自由化」規制緩和がすすめられ、
大企業、大国際金融機関は国境を越えて自由にマネーを動かし、
為替相場の変動、各国の金利、株価などの変動を利用して
大もうけをしています。
このような投機の本質はギャンブルにすぎないところから
「カジノ資本主義」とよばれています。

IT革命とあいまってのグローバルなマネー・ゲームは
国際的な金融危機をまねき、資本主義の危機を招来するのです。

以下、第二の主題である「マニイド・キャピタルの架空性」に入ります。
現実資本(実体経済)と貨幣資本(マニイド・キャピタル)との関係を、
実体性と偶有性という弁証法のカテゴリーで検討して、
ひきつづき次講でも利子生み資本の実態を追究し、
第三の主題である「信用制度のもとでの資本主義的生産様式の制限と当為」を
学ぶことになります。