2005年00月00日 講義
第17講 利子生み資本 ②
1.信用論の主題と構成
● 第5篇 第25章から30章は「信用論」
・もっとも未完成だった草稿部分
・エンゲルスも、マルクスの意図をつかみきれないまま編集
● 大谷研究で、本文用の草稿と準備材料との区別が可能に
● 三つの主題
1)信用制度の概説
2)信用制度下のマニイド ・キャピタルの架空性
3)信用制度のもたらす資本主義的生産様式の制限と当為
2.信用制度とは何か
① 信用制度とは何か
● 信用とは架空の貸し借り、債権 ・債務関係の約束
・信用と金融とはほぼ同義
② 商業信用とは何か
● 信用制度の基礎は商業信用
・商業信用に使用される手形(書面による支払い約束)
・手形は信用にもとづく貨幣(信用貨幣)
● 商業信用を基礎に銀行信用が成り立つ
・銀行は手形を割り引いて銀行券(銀行の発行する手形)を貸し付ける
・銀行資本のもとで信用制度は完成する
③ 銀行信用とは何か
● 銀行資本のもとに「貸付可能な貨幣資本」が集まる
・貸付け可能な貨幣は、貸し付けられると利子を生む利子生み資本となるとこ
ろから、マニイド・キャピタルとよばれる
・銀行は兌換銀行券を発行することで信用を与える
・兌換銀行券――いつでも額面記載の金と交換することを約束して銀行が発行
する手形(信用貨幣)
・兌換銀行券は、本来の信用貨幣
● 金本位制
・銀行券をいつでも金と兌換(法律で定めた一定量と交換)しうる制度
・1816年~1914年は金本位制
・1930年以降、金本位制にかわる管理通貨制度
④ 銀行資本の発展
● 現代の信用制度は発券権限を有する中央銀行を軸とする銀行制度が資本主義経
済の中央本部に
・銀行制度は、資本蓄積をうながし、株式制度を発展させる
・株式制度の発展は、有価証券市場、金融市場を発展させる
・金融市場の発展は、銀行資本を「蓄積の控え目な助手」から「巨大な社会的
機構に転化」(④ 1078 / 655ページ)する
● 金融資本の成立
・独占的な銀行資本と産業資本が結合すると金融資本に
・日本の金融資本は三つに整理統合
⑤ 管理通貨制度とは何か
● 現代的貨幣としての管理通貨制度
・金本位制崩壊後、銀行券は信用貨幣ではなくなり、国家によって強制通用力
を与えられたペーパー ・マネー(不換紙幣)に
・中央銀行が通貨と金融の管理をつうじて物価と景気の安定を図ろうというも
の
・日本では、1942年以来、日銀券は不換紙幣に
● 日銀と市中銀行
・日銀は市中銀行が預けている準備預金を引き当てにしつつ、日銀券を発行
・日銀は公定歩合、貸出量を調節して物価、景気を調整する
⑥ 管理通貨制度と国家独占資本主義
● 管理通貨制度は、ケインズ型国家独占資本主義と結びついて定着
・国家は、「資本の過多」を解消するために、大量の国債を発行し、中央銀行
に引き受けさせインフレに
・恒常的赤字国債とインフレは、不可避的現象に――その犠牲は国民に押しつ
けられる
⑦ 国際的為替相場の不安定性
● 管理通貨制度により、国際的為替相場は不安定に
● 第二次大戦後、プレトン・ウッズ体制
・アメリカドル(金1オンス=35ドル)を基軸に ・MF加盟国の為替レー
トを定める(固定相場制)
・1971年 ニクソンショック――金 ・ドルの交換停止によるプレトン・ウッ
ズ体制の崩壊→固定相場制から変動相場制に
⑧ 金融市場とは何か
● 利子生み資本(擬制資本も含む)は、すべて金融市場で取引される
● 金融市場
・短期資本市場
・有価証券市場――近時急上昇
・外国為替市場
3.信用制度下のマニイド・キャピタルの架空性
① 実体と偶有
● 信用制度に関連する「比類なく困難な諸問題」(⑪ 822 / 493ページ)
・マニイド・キャピタルと現実資本(実体経済)とはどのような関係にあるの
か
● 実体性と偶有性
・実体は偶有を規定する
・偶有は実体を規定しえない、実体に従属した存在
*次回も第3部第5篇(第10,11冊)です。
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