2006年1月10日 講義

 

 

第18講 利子生み資本 ③

 

1.マニイド・キャピタルの架空性

① 商業信用とマニイド・キャピタル

● 商業信用は、実体経済の動きから生まれる

●「生産過程の拡大が信用を拡大し、信用が生産的および商業的諸操作の拡張を
 もたらす」(⑪ 830 / 498ページ)

● 商業手形にも架空性は生じる

 ・融通手形 投機手形 空手形

 ・真正な手形と架空手形とを区別することは不可能


② 銀行信用とマニイド・キャピタル

● 銀行資本は、現金(銀行券)と有価証券(手形と債務)からなる

● 日銀券は、大部分ペーパー ・マネーという架空貨幣

● 銀行による信用創造(帳簿信用)――大部分は架空なもの


③ 資本還元による架空資本

● 資本還元――規則的に反復される所得は、架空な資本の平均利子率にもとづく
 利子とみなされる

● 架空資本

 ・国債 社債

 ・株式

● 金融市場での架空資本の取引により、一層架空性が高まる


④ マニイド・キャピタルの架空性

● マニイド ・キャピタルの大部分が架空資本

 ・「銀行業者の資本の最大の部分は純粋に架空なもの」(⑪ 811 / 487ページ)

 ・しかも銀行業者の資本の大部分は、「公衆の資本」(⑪ 812 / 487ページ)

● 銀行資本は、実体経済から生まれた偶有性

 ・「貨幣資本の蓄積とは、その大部分が……幻想的資本価値の蓄積」
  (⑪ 810 / 486ページ)

● 金融市場で、投機の対象とされることにより更に肥大化し、架空性を高める

● 信用制度下のマニイド ・キャピタルは、資本であって資本でない

 ・資本として、資本主義的生産を駆り立てる

 ・非資本として、いつでも反動を呼び起こす

 

2.マニイド・キャピタルと実体経済

① 株式制度の矛盾

● マニイド ・キャピタルは、生産的資本の制限を打ち破る当為

● 株式制度は、資本所有の制限を打破する

 ・他人の資本を集めて、巨大資本に――「私的所有としての資本の止揚」
  (⑪ 857 / 452ページ)

● 架空資本としての株式制度は、「ぺてんと詐欺の全体制を再生産する」
  (⑩ 760 / 454ページ)

 ・粉飾決算による株価つり上げ

 ・エンロン、ワールドコムの倒産→「株式会社の危機」を生み出す


② バブル経済と恐慌の不可避性

●「競争と信用」は、恐慌の「活動」

 ・マニイド・キャピタルは、景気を過熱させ、過剰投機による「資産インフ
  レ」を生みだす――経済のバブル化

 ・恐慌によってバブルは崩壊し、「シャボン玉の破裂」(⑪ 860/486ペー
  ジ)により実体経済へ引き戻される

● 管理通貨制度は、恐慌を克服しえない

 ・偶有は実体経済を規定しえない

 ・通貨主義とピール銀行法の失敗

 ・管理通貨制度は不況の長期化と緩慢な景気回復をもたらすのみ


③ 過剰投機と「カジノ資本主義」

● 銀行信用は投機を容易にする

● マニイド・キャピタルの肥大化は、銀行の軸足をマネー投機に移す

 ・銀行倒産の信用危機を生みだす

● 変動相場制は、国際的マネー投機を生みだす

 ・ 国際金融資本の「金融自由化」の要求

 ・アジア、ロシアの金融危機

●「カジノ資本主義」は、資本主義的矛盾を拡大し、深化する

 

3.信用制度下のもとでの
  資本主義的生産様式の制限と当為

① 第27章をどう読むか

● 信用制度と利子生み資本所有が、資本主義的生産様式の「潜在的止揚」をもた
 らすことの考察


② 信用制度と利子生み資本がもたらす資本主義的生産様式の制限と当為

● 信用制度の発展は架空資本を増大させ、「貨幣資本の過多」(⑪ 877 / 524ペー
 ジ)を生みだす

● 貨幣資本の過多は、「資本主義的生産の諸制限以外のなにものをも証明しな
 い」(⑪ 876 / 523ページ)

 ・利潤の制限を唯一の目的とする制限

 ・過剰生産と過剰投機

 ・マネー・ゲームの「カジノ資本主義」に


③ 信用制度は資本主義的生産様式を止揚する

● 信用制度は資本主義的矛盾そのものを拡大することにより、資本主義的生産様
 式を止揚する契機をはらむ

 ・過剰生産と過剰投機による「生産と消費の矛盾」の激化

 ・巨大資本のマネー ・ゲームによる一国経済の破綻と貧富の格差拡大

● 信用制度の二面的性格

 ・一方で「動力ばね」(⑩ 765 / 457ページ)、他方で「新たな生産様式への
  過渡形態」(同)「資本主義的生産様式の真の制限は、資本そのもの」
  (⑨ 426 / 260ページ)

 

 

*次回は6篇、7篇(第12, 13冊)です。