『「資本論」の弁証法』より

 


あとがきにかえて

  今回の著作『「資本論」の弁証法』は高村是懿著・広島県労働者学習協議会編による第六冊目の出版となります。第一回の『ヘーゲル「小論理学」を読む』からスタートした「広島県労学協スタイル」は、今回の著作において「労働者に分かる『資本論』」をコンセプトとしたことによってますます威力を発揮しています。
 『資本論』学習に挑戦する労働者の多くは、第一部「資本の生産過程」にとどまり、第二部、第三部にまで挑戦して『資本論』全体を学びつくすまでに至っていないのが現状です。ましてや現役の労働者は仕事や活動に追われ、腰をすえて学習する時間的余裕がないうえに、『資本論』の難解な文体ということもあって、全三部を読み解くには一定の壁にぶつからざるをえません。
 『資本論』を現役の労働者にも読んでもらいたい、『資本論』の真髄を理解してもらいたいという強い意欲が『「資本論」の弁証法』の講座、出版となったものです。そのキーワードは、弁証法を使って読み解いてこそ『資本論』の論理の展開を骨太く認識できるということです。その立場にたって、本講座は『資本論』そのものを学ぶ、弁証法の諸カテゴリーを学ぶ、を主題にしています。
 『資本論』全三部の概要が、弁証法を駆使して、コンパクトにしかも正確にうちだされているのが『「資本論」の弁証法』の特徴です。そのなかで「資本主義的生産様式」の生成、発展、消滅の全運動が、全体をとおして弁証法的に解明されています。とりわけ、恐慌論の弁証法的解明は見事な理論的展開を示しています。
 第一部は、資本の生産過程の本質論、第二部は資本の再生産過程の本質論、第三部は本質に媒介された現象、仮象としての資本の現実性をとらえています。
 第三部は、「現代資本主義とは何か」という「現実性」を主題として、二一世紀の資本主義の解明に筆をすすめていることも本書の特徴の一つとなっています。著者は、第三部第一五章を『資本論』全三部の結論部分としてとらえることの重要性を強調しています。なぜその結論に達するのかは、第一部から第三部まで学ばれた方々には得心がゆくものと確信するしだいです。
 「まとめ」では、資本主義の基本矛盾とその展開、そして社会主義・共産主義への発展の必然性が鋭く展開されています。まさに『資本論』は「萌芽からの発展」という弁証法的論理を最初から最後まで貫徹していることが、浮き彫りにされています。
 なお『資本論』の全容をし、その内容的連関を明らかにする手頃なブックレットとして「『資本論』を鳥瞰する」(一粒の麦社)を発行していますので、本書とあわせてご購読いただければ幸いです。

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 「真理の前にのみ頭を垂れる」の精神にもとづいて、講座の成果を広島から全国に発信したいとの思いから「一粒の麦社」を二〇〇四年に設立し、今回で三冊目の出版となります。広島県労学協スタイルとは、「学習を運動として組織し、集団で議論しながら出版する」ことにあります。
 これまでも全国の皆さんに励まされながら頑張ってきましたが、今回の著作に関しても遠慮なく御批判、御意見をお寄せいただければ幸いです。それを力として、今後とも科学的社会主義の理論の普及と発展に、微力ながら力を尽くしていきたいと、編集委員一同願っている次第です。

二〇〇六年 八月 五日  エンゲルス没日に
       編集委員会を代表して
                権藤 郁男

 

 

 

● 編集委員
 奥村司・垣内真・河辺尊文・権藤郁男・佐田雅美・武田一平・竹森鈴子・中井勝冶・平野光子 二見伸吾・山根岩男