2007年2月27日 講義

 

 

第18講 概念論 ⑥

 

1.「C 理念」

● 理念論は、ヘーゲル哲学の核心部分

 ・ヘーゲルの「絶対的理想主義」に関連

● 総論(213~215節)と各論(a生命、b認識、c絶対的理念)

 ・総論 ── 理念とは何か。ヘーゲルの真理観

 ・生命 ── 生命体一般を「理念の直接態」としてとらえる

 ・認識 ── 理想と現実の統一。認識はさらに「認識」と「実践」に分かれる

 ・絶対的理念 ── 絶対的真理と、それを認識する弁証法の諸モメント

●『エンチクロペディー』の最後は、アリストテレスの文章を引用して、理想
 と現実の統一を訴えている

 

2.「理念」総論

① 理念は絶対的真理

● 理念は、概念と客観性との絶対的統一

 ・エネルゲイアとしてのイデアの現実態

 ・理念は絶対的真理

● ヘーゲルの真理観

 ・客観と認識の一致は「単なる正しさ」「形式的な真理」(213節補遺)に
  すぎない

 ・「深い意味の真理」(同)とは、客観と概念の一致

● 唯物論的真理観は、客観と認識の一致

 ・現にある客観と認識の一致も、真にあるべき客観と認識の一致も含まれる

 ・「真理は必ず勝利する」

 ・概念と客観の一致(ヘーゲルの理念)は、「真理の実現」としてとらえる
  べき ── 「真理」と「真理態」は区別すべき

● 有限な、個別的存在は、「理念のなんらかの一側面」(213節)をもつのみ

 ・個別的存在は、理念プラス「他の諸現実」(同)

 ・個別的なものは、概念に一致しないから有限

 ・「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」


② 理念は主体

● 理念の発展した真の姿は、「主体」「精神」

 ・理念(イデア)は、人間の認識と実践という主体的活動をつうじて実現さ
  れる

 ・主体をつうじての精神と物質、主観と客観の「絶対的統一」(同補遺)

● これまで論じてきた、有、本質、概念、客観はすべて、理念の絶対的統一の
 「モメント」(同)となる


③ 理念は弁証法

● 理念はあらゆる事物の真理態として、対立物の統一

 ・「理念のうちには、悟性の相関のすべてが、無限の自己復帰と自己同一と
  において、……含まれている」(214節)

 ・対立物の相互移行と「二つの端項を揚棄」し、「モメントとして含んでい
  る統一」(同)こそ、それらの真理

●「理念はそれ自身弁証法」

 ・理念は、弁証法であって、「永遠の創造、永遠の生動、永遠の精神」(同)


④ 理念は過程

● 理念は、主観性としての概念が、主観から客観へ、客観から主観へ「復帰す
 るという」(215節)過程

 ・しかし、単なる主観と客観の統一ではなく、「無限なものは有限なものを、
  思惟は存在を、主観性は客観性を包括している」(同)

 ・主観的概念が主体的につらぬかれることによる主観と客観の統一

● 理念は、「過程」として、「三つの段階を通過する」(同補遺)

 ・生命 ── 直接性の形態にある理念

 ・認識 ── 媒介性の形態にある理念

 ・絶対的理念 ── 統一を回復した理念

 

3.「理念」各論

① 「a 生命」

● 生命は、「概念として現存在している直接的な理念」(216節補遺)

 ・「概念は魂として肉体のうちに実現」(216節)

 ・生命は、概念を「魂」として内的目的としている

 ・魂は、肉体から区別されると同時に、肉体に特殊化されている

● 生命の欠陥は、「概念と実在とが本当に合致していない点にある」(同補遺)

 ・合致していないことによる「分離の可能が、生命あるものの可死性をなし
  ている」(216節)


② 「生命の3つの過程」

● 生命体の維持・再生産

 ・主体の単一性を保ちつつ、自己を維持し、再生産する

 ・感受性、興奮性、再生産

● 生命体と客観との交互作用(同化と異化)

 ・「生物は無機的自然に対立し、それを支配し、それを同化する」(219節
  補遺)

● 個から類へ

 ・類は「実体的普遍」(220節)であり、概念と実在とが合致

 ・「生ある物は死ぬ。なぜなら、それは即自的には普遍者であり類でありな
  がら、直接態においてはただ個としてのみ現存するという矛盾だからであ
  る」(221節補遺)


③ 「生命」から「認識」へ

● 生命は、類と個の矛盾により、理念の直接態を揚棄する

 ・直接態の揚棄は、自由な類、つまり精神の出現

 ・精神をもつ人間の媒介的理念が「認識」