2007年9月24日 講演
● 聴 講(①37:07、②46:52)
①
②
『弁証法とは何か』出版記念講演
源泉への旅を終えて
科学的社会主義を考える
1.再建労学協のかかえていた課題
2.科学的社会主義の源泉への旅の目的
① ソ連の誤りの理論的根拠を明らかにする
● ソ連は社会主義への道を踏み出した直後には、自由と民主主義で大きな前進
● 一転して「社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑
圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労
人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ」(綱領)「社会主義とは
無縁な人間抑圧型の社会としてその解体を迎えた」
● 科学的社会主義を理論的基礎として出発しながら、なぜこのような誤った道
へ転落することになったのか
② レーニンの「マルクス主義の3つの源泉と3つの構成部分」への疑問
● 科学的社会主義の本質的構成部分を明らかにしようとしたもの
● 自由と民主主義は、科学的社会主義の本質的構成部分ではないのか
③ 14年間の旅を終えて、2つの問題への回答がつかめる
● 科学的社会主義の学説へのいっそうの確信
● この二つの問題でヘーゲルの果たしている役割は大きい
3.「科学的社会主義は自由と民主主義の問題でも、
近代民主主義のもっとも発展的な継承者」
(「自由と民主主義の宣言」)
① 科学的社会主義は、フランス革命の「第2幕」として登場
● フランスの階級闘争(フランス革命)から生まれた社会主義思想
・近代の社会主義は、「理論上の形式」からいえば、フランス革命の「諸原
則を受けつぎながらさらに押しすすめ、表むきはいっそう徹底させたもの」
(『空想から科学へ』)として誕生
・「妖怪がヨーロッパをさまよっている ── 共産主義の妖怪である」
(『共産党宣言』1848年)
・「今日のヨーロッパの社会運動全体は、革命の第二幕」(エンゲルス「ロ
ンドンにおける諸国民の祝祭」)
● 自由、平等を真に実現するには私有財産を廃止すべきとして、社会主義の思
想が誕生
・自由と民主主義を真に実現するには、生産手段を社会化することによる搾
取の廃止が必要だと訴えたのが、マルクス、エンゲルス
② 科学的社会主義は、人間解放の理論
● マルクス、エンゲルスの人間の本質論
・「自由、平等、友愛は定式化されたことは一度もなかったが、氏族の根本
原理であった」(全集 92ページ)
・「ほんとうの協同態において諸個人は彼らの連帯のなかで、またこの連帯
をとおして同時に彼らの自由を手に入れる」(全集③ 70ページ)
→ヘーゲルの「最高の共同性は最高の自由である」に学んだもの
● 階級社会における人間疎外
・搾取による人間疎外 ── 生産物は自由な意志の外在化(ヘーゲルに学ん
だもの)
・国家による人間疎外 ── 国家の本質は階級支配の機関
● 社会主義は人間疎外から人間解放へ
・生産手段の社会化による搾取の廃止
・階級支配の機関としての国家の廃止
・「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような一つの共同社
会」(『共産党宣言』)
・「必然の国から自由の国への人類の飛躍」(『空想から科学へ』)
4.人間解放の社会とは、人民主権の社会
① ルソーの人民主権論
● 人民主権とは、一般意志にもとづく統治による治者と被治者の同一性(真の
民主主義の実現)
・一般意志 ── 人民の真にあるべき意志。人民のための政治
・人民の、人民による、人民のための政治=「国民が主人公」の政治
● 人民主権をめざしたジャコバン独裁と挫折
② ヘーゲルの「人民のための政治」
● ルソーの一般意志にもとづく政治は正しい
● しかし、人民は「定形のない塊」だから、人民による政治は正しくない
● したがって「教養ある知性」としての官吏により、一般意志の政治を実現
③ マルクス、エンゲルスの「労働者階級の権力」論
● 人民による政治も人民のための政治も正しい
● 人民によりながら、人民のための政治を実現するには、人民の導き手が必要
● その導き手となるのが、科学的社会主義を武器とする労働者階級の政党
● それが「労働者階級の権力」の意味
④ ソ連の誤りの根本は「国民が主人公」を「共産党が主人公」と勘違いした
こと
● 共産党は、人民の導き手であっても、政治の主人公は国民
● レーニンは、「労働者階級の権力」を「ソビエト権力」ととらえ、スターリ
ンは、それを「共産党の権力」として固定化ここから「人民抑圧型国家」に
5.ヘーゲルの変革の立場
① 弁証法とは変革の立場
● 弁証法とは、事物を「連関、連鎖、運動、生成と消滅においてとらえる」
(『空想から科学へ』)思惟形式
・客観世界の真理認識の方法
・「自然は弁証法の検証となるもの」(同)──「自然においては万事はけ
っきょく形而上学的にではなく、弁証法的におこなわれているのだという
ことを証明した」
● しかし同時に弁証法は、人間が実践をつうじて、自然や社会を変革する理論
・マルクスも「哲学者たちは世界をたださまざまに解釈してきただけである。
しかし肝腎なのはそれを変えることである」といっている
・しかし、唯物論的認識論は、反映論としてとらえられていて、どう変革す
べきかという変革の哲学が不十分
・レーニンは『哲学ノート』で「人間の認識は客観的世界を反映するだけで
なく、それを創造しもする」(レーニン全集 181ページ)としたが、それ
以上に展開せず
② ヘーゲルは変革の哲学を正面から論じた
1)変革の立場とは、理想をかかげてその実現をめざす運動
● ヘーゲルはその理想を「概念(真にあるべき姿)」とよんだ
2)理想と空想はどう違うか
● 空想は観念的未来の真理
● 理想は唯物論的未来の真理
3)未来の真理を肯定
● 真理は客観に一致する認識
・現在の社会について真理があるのは当然
・未来の社会(社会がどうあるべきか)について真理があるか
● 一般には、未来社会の問題は、価値観の問題であり、そこには真理はないと
されている(価値観の多様性)
● 未来に真理がないとしたら、社会変革の立場にたつ科学的社会主義の運動は
成り立ちえない
4)未来の真理(概念)は、いかにして導き出しうるか
● 現実世界を分析し、現実世界の矛盾をつかむことで、矛盾の解決としての
「概念」を認識する
● この概念を認識することが、人民の導き手である科学的社会主義の政党の役
割
5)概念は未来の真理であるがゆえに、現実に転化する必然性をもつ
● 「哲学はただ理念をのみ取扱うものであるが、しかもこの理念は、単にゾレ
ンにとどまって現実的ではないほど無力なものではない(『小論理学』6節)
● 人民の真にあるべき意志を理想にかかげた実践により、理想は現実に必然的
に転化する
・理想と現実の統一(国民が主人公の政治の実現)
・真理は必ず勝利する
③ ヘーゲルの変革の立場は、より善い生き方と結合している
● 唯物論的一元論
・現代資本主義は、経済中心、物質至上主義の唯物論的二元論 ── 自然科
学と価値観との峻別
・ヘーゲルは、より良く知ることと、より善く生きることは統一されなけれ
ばならないという唯物論的一元論(事実と価値、存在と当為の統一)
・人間の生き方にも真理がある ── 価値観の多様性は、価値に真理があるこ
とを否定するものではない
● 社会変革は、生き甲斐とより善い生き方を統一した生き方
・生き甲斐とは、自己肯定感をもたらす生き方 ── 対象は無制限(ギャン
ブルでも趣味でも何でもいい)。社会変革も正当性への確信から、生き甲
斐をもたらす生き方の一つ
・より善く生きるとは、より人間の本質に根ざした生き方をすること ── 社
会変革はもっとも自由に生きる(概念的自由)生き方
● 大人の立場
・「世界の究極目的が不断に実現されつつあるとともに、また実現されてい
るのだということを認識するとき、満足を知らぬ努力というものはなくな
ってしまう」(234節補遺)
・社会変革の運動は、それ自身、生き甲斐をもたらすより善い生き方として
満足すべきもの
・社会発展の土台石を積み重ねる運動として満足すべきもの
→社会変革のたたかいに、ムダはない
6.科学的社会主義は、発展する真理探究の理論
① マルクス・レーニン主義から科学的社会主義に呼称の変更
● 不断に進歩・発展する学説
● 完結した理論ととらえると「教条主義」の誤りに
② ヘーゲル哲学から学ぶべきものは多くある
● ヘーゲル哲学の本質は、「観念論的装いをもった唯物論」
● その変革の立場、理想と現実の統一、真理論、唯物論的一元論、より善い生
き方論などは、科学的社会主義の学説に取り入れるべきもの
● ヘーゲルの再評価と再学習が求められている
③ 日本共産党の綱領路線は、科学的社会主義の本流を歩み、創造的に発展さ
せたもの
● 国民が主人公と、真の自由と民主主義を実現する社会主義
● コミンテルンや、ソ連の干渉・介入を許さず、真理探究の道を歩み続けるこ
とで達成
● 21世紀は、「社会主義のルネッサンス」により、再び社会主義が希望の星
となる時代
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