2007年9月5日 講義
第6講 哲学 ② 時間と空間
1.世界の統一性① デューリングの世界図式論 ● 唯物論の見地から、神は彼岸的なものと批判をしようとする ・しかし、その議論の仕方は観念論的 ・思想の統一から、現実の世界の統一を論じようとする ・思想と現実とが一致するのは、思想が現実に一致するときのみ――デューリ ● デューリングの論法は、神の存在論的証明と同じ ・アンセルムス――神は完全、完全は存在を含む、よって神は存在する ・デューリング――思想はすべてを統一、すべては存在もふくまれる、よって
1)世界の存在限界は認識限界からくる ● われわれの認識は、歴史的制約 ――その認識限界が世界の存在限界を定める ● ビッグバンから137億年 ・ビックバンにより放たれた光が137億光年の距離をつらぬいて、現在地球 ・137億年以前の宇宙について、われわれは天体の情報をもちえない 2)「世界の現実の統一性は、それの物質性にある」(63ページ) ● エンゲルスの時代の自然科学は部分的に現実の世界の普遍的連関性を示すのみ ・カントの星雲説による太陽系の太陽と惑星の連関 ・ダーウィンの進化論によるすべての生物種の連関 ・熱力学による様々なエネルギーの普遍的連関 ● こうした自然科学の制約のなかで、世界の統一性をその物質性であることを主 ● ビッグバンによる宇宙の統一性 ・ビッグバン以前は非常に小さな、高温度、高密度の物質(元素も存在せず) ・ビッグバンによる宇宙の急速拡大による冷却化――素粒子、水素、ヘリウム ・星は核融合エネルギーと重力エネルギーにより、ヘリウムからより重い炭 ・鉄の星は収縮して超新星爆発――鉄より重い原子誕生 ・放出された星間ガスは星間雲となり、原子から分子に ・星間雲から、太陽と惑星からなる太陽系などが誕生
● ヘーゲル「論理学」の構成 ・第一部有論、第二部本質論、第三部概念論 ・有論は質、量、限度 ・すべての事物は、質と量の統一の限度(モノには限度がある) ・ある事物における量がその限度を超えると、その事物の質の変化をもたらす ● デューリングは、ヘーゲル「論理学」の構成を剽窃 ・そのくせ、マルクスの「量から質への転化」を批判 ・本質論では、対立を認めながら矛盾を否定 ・矛盾を否定することにより、弁証法への無理解を示し、ヘーゲル哲学の生命
2.時間と空間① 時間と空間をめぐる自然科学の発展 ● 時間、空間は哲学上の難問 ・時間、空間は実在するのか ・時間、空間は物質と関係があるのか ・時間、空間は有限か無限か ● ニュートンの絶対時間、絶対空間 ・アリストテレスの自然哲学の否定として生まれたもの ・物質の絶対運動(「慣性の法則」)を論じるために、物質と無関係な絶対時 ● 20世紀前半のアインシュタインの相対性理論 ・物体の速度が高速に近づくと、時間の経過が遅くなる ・空間は物質の重力によって定められる ● 20世紀後半のビックバンの発見 ・「宇宙と時間・空間そのものが物質とともに誕生する」 ・ゆらぎの宇宙からインフレーション宇宙への発展の考えは、無数の宇宙と時 ・宇宙には、「私たちの宇宙」のような、物質のみから成り立つ宇宙も存在す ● 現代の自然科学は、宇宙、物質、時間、空間のすべてについて、自然は弁証法
● カントはアンチノミーをつうじて思惟の弁証法的運動に注意をむけさせた ・しかし、カントはアンチノミーをつうじて不可知論に ・カントのアンチノミーの一つは、時間、空間が有限か無限かの問題 ・カントは両者とも証明可能とし、だから時・空は認識しえないとした ● デューリングは、時・空には始めがあり、有限であることを立証しようとする ・カントのアンチノミーの一面をそのまま剽窃 ・カントがその反定立をも立証し、だから認識不能としたことを無視
● ビッグバンは、時間・空間の始まりを示すもの ・それにより「私たちの宇宙」は始まりをもつとしても、すべての宇宙にはあ ・「私たちの宇宙」が膨張し続ければ、時・空は無限、収縮に向かえば有限 ● エンゲルス ・「無限性ということが一つの矛盾」(76ページ) ・時・空も無限としたのは、当時としては卓見 ・ガウスの非ユークリッド幾何学にも言明
● デューリングは世界の始まりを「一つの自己同一的な状態」 ・そこから運動への架け橋を見いだそうとして「くだらない逃げ口上」(82 ● 自然の自己運動をとらえることは、弁証法的視点(対立物の統一)が必要 ・デューリングの誤りは、弁証法を理解できなかったところにある ・「宇宙のごく最初の状態は、場がつまっただけのもの」(町田茂『時間と空 ・場から物体が生じる ・ギリシア哲学の原子論――世界の根本は原子と空虚の統一 ・現代は物体と場の統一――素粒子を粒子と波の統一であることも示すもの
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