2007年10月17日 講義
第9講 哲学 ⑤ 法と道徳
1.科学的社会主義の法と道徳① 『法の哲学』と史的唯物論 ● 今回から精神哲学 ● デューリングは、ヘーゲルの精神哲学を剽窃した「人間に関する学問」(48 ・『法の哲学』は、第1部法、第2部道徳、第3部倫理 ・そのなかから、法と道徳を論じたもの ● 他方、史的唯物論も法と道徳を論じている ・マルクス、エンゲルスはヘーゲル哲学から出発して史的唯物論に到達 ・しかし、ヘーゲルの法と道徳の検討は不十分 ・法と道徳を上部構造としてとらえるのみ
● 社会には構造がある――土台と上部構造 ・法と道徳は上部構造 ・土台が上部構造を規定する ・支配階級のイデオロギーが支配的イデオロギー ● 資本主義の法と道徳は、支配階級であるブルジョアジーの法と道徳
● 人間の本質とは何かという人間論から出発 ・人間論から出発し、法と道徳の真にあるべき姿(概念)を探究 ● 人間の本質は、自由な意志と共同社会性 ・社会共同体には共同体を維持発展させるのに必要なルール、規範が必要 ・二大社会規範が法と道徳 ● 法と道徳とは構成員の「普遍的意志(一般意志)」(真にあるべき意志)を示 ・ルソーは一般意志を法とする人民主権論(人民の、人民による、人民のため ・真にあるべき法とは、人民の真にあるべき政治的意志を規定した社会規範 ・道徳とは、人間としての真にあるべき意志を行為の基準(善)にかかげる ● 社会規範には責任が生じる ・自由な意志をもつ人間は、自己の意志にもとづく行為の結果に対して責任を ・個々人の特殊的意志は普遍的意志にてらして評価される ・法的責任――損害賠償、刑罰による責任の強制 ・道徳的(道義的)責任――社会的批判
● どちらも正しい観点であり、科学的社会主義の観点からその統一が求められる ● 国家の起源と本質 ・社会共同体における共同の利益処理の組織が支配階級に独占されることによ ・国家の本質は階級支配の機関→国家とは、全構成員の共同利益を実現する仮 ● 法と道徳は、一面では人民の普遍的意志を実現するという仮象をもちつつ、階 ・日本国憲法を仮象としつつ財・ 界主権、生存権の否定、戦争をする国づくり ・旧教育基本法の教育目的を仮象としつつ、現基本法の愛国心道徳の体系
● ヘーゲルの市民社会(資本主義社会) ・特殊的意志と普遍的意志とが対立する欲望の社会 ・特殊的意志と普遍的意志の統一を真にあるべき国家(人民主権国家)に求め ● 人民の普遍的意志を実現する法と道徳の対置を ・日本共産党21回大会の「市民道徳」の提起は積極的なもの
2.人間認識の至上性① デューリングの「究極の決定的真理」 ● デューリングの道徳は、究極的真理を示すもの ・地理的、歴史的多様性のなかに究極的真理 ● 道徳における特殊的真理を止揚した普遍的真理を主張
● 人類は、700万年の歴史をつうじて認識を発展 ・世代から世代へと獲得された認識は継承・蓄積され、より高い、より普遍的 ・人類の認識能力は無限だが、特定の時代の個人の認識能力は時代の制約をも ・レーニンは、これを相対的真理と絶対的真理の統一としてとらえた ● 思考の至上性は、非至上的な人間の系列をつうじて実現され、真理の認識は誤 ● 真理とは、客観に一致する認識 ・ヘーゲル「論理学」の有論、本質論、概念論は、表面的真理、内面的真理、 ・すべての認識は、真理と誤謬の統一としてのみ存在しうる個人の認識能力と
● エンゲルスは、真理の認識を科学の3分野で区別している ・生命を除く自然科学、生命学、社会科学 ・後者になるほど永遠の真理は少なくなる ・自然科学の対象は反覆されるが、社会科学の対象は反覆されないため ● しかし、この区別は相対的 ・単純な物質の運動の方が複雑な物質の運動に比べ、真理の認識が容易だとい ・因果法則と発展法則の違いがあるのみであり、社会科学に真理がないという ・史的唯物論と剰余価値学説により、「社会主義は科学になった」(36ペー
● 社会科学に真理を認めるか否かは、イデオロギー闘争の重要な課題 ・利潤第一主義の資本主義は、生産力の発展につながる自然科学のみを科学と ・自然をより良く知ることと、人間がより善く生きることとは統一されねばな ● 階級闘争の課題としての生きがい論 ・自民党政治は、法と道徳を一方では軽視し、他方で道義的危機をスピリチュ ・人民の普遍的意志にもとづく法と道徳にもとづいた、唯物論的生き甲斐論を
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