2007年12月19日 講義

 

 

第13講 経済学 ① 経済と政治

 

1.経済学の対象と方法

① 唯物史観

● 生産があらゆる社会制度の基礎

● 生産が交換、分配を規定する

● 経済が政治を規定する

● 経済学は人間社会の「生産と交換を支配する諸法則についての科学」(297
 ページ)


② 生産力と生産関係の対立と統一

● 生産様式――生産力(人間と自然との物質代謝)生産関係(生産をめぐる人と
 人の関係)

● 生産――労働 労働対象(原、材料)生産手段――労働手段(道具、機械)

● 生産力を規定するのは、労働手段

● 社会発展の根本矛盾は、生産力と生産関係の矛盾


③ 経済学は「一つの歴史的科学」(298ページ)

● 原始共同体的生産様式

● 奴隷的生産様式

● 封建的生産様式

● 資本主義的生産様式

● 社会主義的生産様式


④ 経済学の方法

● 狭義の経済学は資本主義的生産様式の生成、発展、消滅にかんする経済学

● マルクスの『資本論』の研究対象

● 弁証法をつかって研究、叙述

● 狭義の経済学の「対象」は資本主義的生産方式、「方法」は弁証法


⑤ 狭義の経済学とマルクスの方法

● マルクス以前の経済学は、資本主義的生産様式を絶対化(ブルジョア経済学)

● マルクス『資本論』のみが、その歴史的制約性を証明

 

2.デューリング経済学の批判

① デューリングの方法論批判

● 永遠の自然法則

 ・平等な分配

 ・不平等な分配は「純政治的な」(306ページ)暴力に由来

 ・すべてを政治と道徳の分野に

● エンゲルスの批判

 ・分配の不・ 平等は、搾取する生産の仕方から生じるもの

 ・暴力は搾取を保護するだけで、搾取の原因ではない

 ・「資本と賃労働との関係が労働者の搾取の基礎」(306ページ)


② 経済と政治

● 国家の本質は、政治的強力

 ・国家は強力により階級支配の機関となる

 ・デューリングは、「人間による人間の隷属化」(317ページ)の原因は、政
  治であって経済ではないとする

● 賃金奴隷は賃労働から生じる

 ・剰余価値学説は、労働力という商品の等価交換から、搾取の生じることを解
  明したもの

 ・労働者の隷属化に「暴力や、国家や、なんらかの政治的干渉」(323ペー
  ジ)をも必要とせず

 ・近代のブルジョアジーは、その経済力で封建的政治暴力を打倒して、資本主
  義的生産様式を確立

● 政治的暴力としての軍隊は、経済力によって規定される


③ 支配=隷属関係はいかにして生じたか

● デューリング

 ・自然に対する支配は、「人間に対する支配をつうじてはじめて起こった」
  (340ページ)

 ・大土地所有の経営は、奴隷、農奴なくして存在せず

● エンゲルスの批判

 ・古代社会はもとより、ギリシア、ローマの奴隷制社会でも、土地は独立農民
  により経営(343ページ)

● 支配=隷属関係の「二とおりの道すじ」(346ページ)

1)国家の誕生

 ・共同の利益処理という社会的な職務活動が政治的支配に転化

 ・搾取階級が国家の支配階級に

2)生産力の発展による私的財産制の誕生

 ・狩猟、採集から農耕、牧畜による生産力の飛躍的発展

 ・「労働はある価値をもつように」(348ページ)

 ・捕虜から奴隷に

 ・生産力の発展が私有財産制と、支配=隷属の関係を生みだす

 ・搾取階級は社会の共同事務に従うことになり、国家機関を担う支配階級に
  →支配=隷属の関係を廃止するには、階級支配の機関としての国家と、搾取
   の廃止という二重の取り組みが必要となる


④ 強力の経済的発展に果たす役割

● デューリングは、「暴力は絶対の悪」(354ページ)だとする

● 強力には、新しい社会の助産婦という「もう一つ別の役割」(同)がある

 ・議会での多数派を形成することによる民主連合政府の革命的役割