2008年1月16日 講義
第15講 経済学 ③ 資本と余剰価値
1.資本と剰余価値① 資本とは何か ● 資本とは一定の貨幣額(価値)が剰余価値の形態で剰余生産物を生みだす価値 ・貨幣や生産手段といった物は資本ではない ・資本家と労働者という生産関係のもとでのみ一定の貨幣額は資本となる ● 資本には産業資本、商業資本、利子生み資本(銀行資本)の3つの形態 ・産業資本のみが剰余価値を生産する ・この剰余価値は商業利潤(商人資本)、利子(銀行資本)、地代(土地所有
● 資本主義的生産様式のもとでの実体資本と架空資本の区別(『資本論』第3部) ・実体資本――それ自身が価値をもち自己増殖すること(産業資本、商人資本) ・架空資本――それ自身が価値をもたないのに自己増殖するニセの資本(利子 ● 架空資本 ・金と交換されないペーパーマネー ・国債、地方債、社債などの資本還元された債権 ・土地(地代の資本還元による疑似資本)→マニイド・キャピタル ● マニイド・キャピタルは金融、証券市場で投機の対象となることにより、架空 ・その代表格が株式 ・原油高の半分は、サブプライムローンの破綻により、投機マネーが原油に集 ● 信用制度とマニイド・キャピタルの膨張は資本主義的矛盾を激化させる
● 詐欺や暴力から生じるわけではない ● この問題の解決が科学的社会主義を誕生させた ● 労働力という特別の一商品 ・労働力の価値――労働者とその家族に必要な生活手段を生産するのに必要な ・労働力の使用によってつくられた価値が労働力の価値を上回る→剰余価値 ● 産業資本の成立には、一定量の貨幣量の蓄積と同時に他方で、二重の意味で自 ・15世紀~18世紀にかけての「本源的蓄積」 ・羊が農民を追い出す ・資本は「あらゆる毛穴から血と汚物とをしたたらせながらこの世に生まれて
2.デューリングの資本と剰余価値① デューリングの資本 ● 「経済的労働力の果実にたいする取り分を形成するための、経済的権力手段の ・「一方のものが他方のものに強圧をくわえて」資本が成立したとする ・奴隷も、封建土地所有も「無差別に資本」(p.394)となる→資本主義的生
●デューリングは剰余価値=「資本利得」(398ページ)とする ・剰余価値は「利潤、利子、商業利得や地代」(399ページ)に分配される ・「資本利得」は剰余価値の一下位形態にすぎない ● 資本利得の大きさは、暴力「行使の規模と強度にかかっている」(404ページ) ・剰余価値にも、利潤にも暴力は一切関係ない ・暴力は、剰余価値を「取りこむことはできるが、つくりだすことはできな ・「問題を経済の分野から政治の分野に追いやるだけ」(407ページ)
● デューリングは「競争する企業家たちはどうして剰余価値を実現することがで ● 資本主義的生産様式は機械制大工業 ・機械に依拠しているために生産力の発展に限界なし ・生産力の発展による「特別剰余価値」の獲得――そのための競争 ・全体としての生産力の発展は、労働力の価値の低下と相対的剰余価値の増大
3.デューリングの地代論① 絶対地代と差額地代 ● イギリスの借地農業資本家による農地の資本主義的農業経営の分析をつうじ ● 絶対地代 ・最劣等地の地代 ・農業資本は、資本の有機的構成率が高いので他の産業よりも高い利潤率 ・農地には資本の移動の自由がないため一般的利潤率に参加せず ・その超過利潤が地代に転化 ● 差額地代 ・有利な農地の農産物は、最劣等地の農産物の価格を上回る ・農産物は、最劣等地の価格が市場価格となる ・有利な土地の農産物の超過分が差額地代となる
● 地代は土地の所有者が「土地から引き出す所得」(417ページ) ・地代を暴力にもとづく隷属労働から生じるとする ・土地所有者は地代を、資本所有者は資本利得を(421ページ) ・借地農業者の利得は、土地所有者の地代からその分だけけずりとったものと ・資本――利潤 土地――地代 労働――労賃 ・労働価値説と剰余価値の分配とを否定する物神崇拝の完成態
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