2008年7月15日 講義

 

 

第1講 ヘーゲル『小論理学』とは何か

 

1.4度目の『小論理学』

① ヘーゲル弁証法

● ヘーゲル哲学は科学的社会主義の哲学(弁証法的唯物論と史的唯物論)の
 源泉

 ・ 哲学は「ものの見方・考え方」の根本をなすもの

 ・ ヘーゲル哲学から学ぶべき最大かつ中心的理論は弁証法

●『小論理学』はエンチクロペディーの哲学体系の第1部


② 4度目の『小論理学』

● 弁証法的唯物論をより豊かにする見地から学んできた

● 第1回 1994-95 第2回 1996-98
 →『ヘーゲル「小論理学」を読む』(99)に

● 第3回 2006-07 →『弁証法とは何か』に

● なぜ4度目か

 ① 何度でも学びなおして「無数の宝」(エンゲルス)の発掘を

 ②「観念論的装いをもった唯物論」との本質規定を検証する

 ③ より正確なヘーゲル入門書をめざす

 

2.時代の精神としてのヘーゲル哲学

① ヘーゲル(1770〜1831)の生きた時代

● フランス革命の起承転結をすべて経験

● フランス革命の負の部分(ジャコバンの恐怖政治)に目を向けながらも自
 由の精神を生涯にわたって賛美し、理想と現実の統一による変革の立場を
 貫いた

●「フランス革命のドイツ的理論」(全集① 93ページ)との評価はヘーゲル
 にこそふさわしい


② 時代と対峙したヘーゲル

●世間から隔絶した書斎の中で思索にふけったのではない

●『法の哲学』の序文

 ・真にあるべき社会・国家を論じた著作

 ・哲学とは「その時代を思想のうちにとらえたもの」

 ・「ただ現実との平和が保たれさえすればいいとするような、冷たい絶望で
  もっても理性は満足しない。認識が得させるものは、もっと熱い、現実と
  の平和である」

●『哲学史』の結語

 ・「精神は常に前進する。何となればただ精神のみが前進だからである」

 ・時代の精神が「推進する際――即ちもぐらもちが内部にあって力を込めて
  進む時 ── 我々はその音に耳を傾け、これに現実性を与えねばならない」

 

3.ヘーゲル「論理学」と何か

① ヘーゲル論理学の立場

● 論理(ロゴス)とは、世界の根本原理としての理法

● 世界は大きく、主観と客観に分けられる

 ・唯物論は、存在・客観・物質を第1次的とする

 ・ヘーゲルの論理学は客観的論理学からはじまる ── 客観を第1次的とする

 ・しかし、ヘーゲルは人間の意識の創造性を強調

● ヘーゲルは、自己の哲学の課題を主観と客観の対立・分裂を前提にしなが
 らも、人間の主観はその対立・分裂を統一する(主客の同一性)ととらえ
 た ── これが理想と現実の統一に

● ヘーゲル哲学の基本的立場は唯物論的変革の立場


② ヘーゲルの哲学体系

● エンチクロペディーの構成

 ・論理学、自然哲学、精神哲学

 ・論理学を自然と人間に適用したものが自然哲学と精神哲学
  →体系は、弁証法的に構成

● 論理学、自然哲学、精神哲学の構成

 ・論理学 ── 有論、本質論、概念論

 ・自然哲学 ── 力学、物理学、生物学

 ・ 精神哲学 ── 主観的精神、客観的精神(『法の哲学』)、絶対的精神
  →肯定(即自)── 否定(対自)── 肯定と否定(即かつ対自)の統一
   という3分法


③ 論理学は主客同一性の哲学

● 論理学は、認識論であると同時に実践論

 ・客観──主観──主観と客観の統一(同一)

● 有論、本質論は客観的論理学

 ・有論は、客観世界の表面的認識

 ・本質論は、客観世界の内面的認識

● 概念論は、主観的論理学であると同時に主客同一の論理学

 ・人間はどのようにして客観世界を認識するのかという認識方法(主観的論
  理学)

 ・概念論において、理想と現実の統一が論じられる(主客同一の論理学)

 

④ ヘーゲルの真理観

● 哲学のめざすものは真理の認識

1)「正しさ」と「真理」の区別

2)自然にも精神にも真理がある

● 序文、序論、予備概念は、全体として国家・社会の真理は認識しえないと
 する不可知論とのたたかい

● 精神活動の産物である国家・社会の真理は認識しうるとする

3)真理は統体性

● 真理は、「一面的な規定によっては汲みつくされないもの」であり、「統
 体である」(32節補遺)

● ここから、主客同一性の哲学が真理の哲学として登場

● また、対立物の統一を根本法則とする弁証法が真理認識の思惟形式となる

4)絶対者とは絶対的真理

● 絶対者とは、他の何ものも必要としない無制約的なもの

● 論理学は、「絶対者の学」(14節)

 ・主客の統一の学であると同時に、絶対的真理の学

 

*次回は、「聴講者にたいするヘーゲルの挨拶」と「第1版への序文」。