2008年8月7日 講義

 

 

第2講 「ヘーゲルの挨拶」
    「第一版への序文」

 

1.「聴講生にたいするヘーゲルの挨拶」

① 時代背景

● 1818.10のベルリン大学着任の挨拶

● シュタイン=ハルデンベルクの改革(プロイセン改革)(1807〜1818)

 ・ フランスの占領下で自由の精神にもとづいて統一した近代国家をめざす

● 1815年のウィーン体制で改革は終息に ── 1819年「カールスバード決
 議」

 ・ ヘーゲルも厳しい立場に追い込まれる

● ヘーゲルがベルリン大学に招かれたのは1818年

 ・ ヘーゲルは「上からの改革」に期待をよせるが、その夢は1年で破れる

 ・ 奴隷の言葉で革命の哲学を語る ── 反動的哲学者と誤解される


② 時代への期待

● 哲学への「期待が許され」(13ページ)る時代

 ・1813〜14の解放戦争、ドイツの独立

 ・プロイセン改革
  →「精神の倫理的な力」(同)が「現実の支配力」(同)をなす

● ドイツ哲学の出番 ── 中心点はベルリン大学


③ 「真理の国こそ哲学の故国」(18ページ)

● ドイツにおける「真理の認識の放棄」(17ページ)

 ・哲学の任務は真理の探究

 ・真理の認識の放棄は「理性にたいする絶望」(同)を示すもの

● 予備概念で、こうした真理認識を放棄する哲学(経験論、ヤコービ、カン
 ト)の批判を展開


④ ヘーゲル哲学と宗教

●「精神哲学」の絶対的精神は、芸術、宗教、哲学に区分

 ・絶対的精神とは、自由な精神の社会的産物

 ・絶対的精神の感性的直観の形式が芸術、表象の形式が宗教、理性の形式が
  哲学

● 宗教は哲学的真理に至る通路の機能

 ・絶対者とは、神という宗教的表象の哲学的表現

 ・哲学は、神という表象を概念という理性の形式でとらえたもの

● ヘーゲルの概念

1)最高類概念としてのカテゴリー(抽象的普遍)

2)真にあるべき姿(具体的普遍)


⑤ ヘーゲルの神

● ヘーゲルは、キリスト教の三位一体説に学んで自己の哲学を確立
  ── 三分説の根拠

● キリスト教から精神の無限性を学ぶ

● ヘーゲルの「神」は絶対的精神、絶対的真理

●「論理的諸規定全般は、絶対者の諸定義、神の形而上学的諸定義」(85節
 )

 ・世界のすべての事物には絶対的真理があるという意味で「絶対者の学」

 ・「世界の現実の統一性」と、そこにある根本的真理の承認を意味する


⑥ 理性への信頼

● 真理を認識しようとしないドイツ哲学への批判

● 理性的認識をめざす「青年の精神」に期待

 ・「ブルシェンシャフト」を念頭においたものか

 ・「真理の国こそ哲学の故国」(18ページ)


⑥ 哲学の目標は理念の把握

● 哲学の目標は絶対的真理である理念の把握にある

 ・「真理の国はただ真理と法の意識を通じてのみ、理念の把握をつうじて
  のみ存在する」(19ページ)

 ・「真理の勇気、精神の力にたいする信頼こそ哲学的研究の第1の条件」
  (同)

●「宇宙のとざされた本質は、認識の勇気に抵抗しうるほどの力をもってい
 ない」

 ・1818年10月にヘーゲルは『法の哲学』を執筆中

 ・『法の哲学』は、国家・社会の真にあるべき姿を論じたもの

 ・「国家・社会のとざされた本質」をこじあけようというもの

 

2.「第一版への序文」

①『エンチクロペディー』とは何か

● 最初の体系は『精神現象学』を第1部とするもの

 ・第2部として、論理学、自然哲学、精神哲学

 ・この構想から『大論理学』

● その後『エンチクロペディー』の体系にかわる

 ・哲学の「綱要」

 ・これにヘーゲルの「注解」、ヘンニングの「補遺」が付加された


② 哲学の革新

● これまでの哲学の問題点

 ・「1つの図式を前提」(21ページ)に、「偶然的で勝手な結合」(同)

● ヘーゲル哲学の革新性

 ・萌芽からの発展の形式

 ・内容面では不可知論の否定
  →弁証法により形式、内容ともに「哲学の革新」を実現