200年月日 講義
第26講 第2部「本質論」②
1.「A 現存在の根拠としての本質」の主題と構成
● 本質は根拠として同一と区別の統一
・事物を二重化し、内なる根拠によって根拠づけられたものとしてとらえる
・本質は内なる真の姿としての根拠
・本質は根拠として同一と区別の統一
● 本質は「a 純粋な反省規定」「b 現存在」「c 物」の3分法として構成
「a 純粋な反省規定」は「イ 同一性」「ロ 区別」「ハ 根拠」に
・本質は有と同一であると同時に区別されたものとして根拠
・ここで形式論理学の同一律、矛盾律等を弁証法の見地から批判
「b 現存在」とは、根拠によって根拠づけられた現にあるもの
・客観世界は根拠と根拠づけられたものとの無限の連関、連鎖のうちにある
現存在
「c 物」とは、根拠と現存在の統一としての具体的な物
2.「A 本質」「a 純粋な反省規定」(1)
「イ同一性」
115節 ── 本質は有との同一性
● 本質は、有の「純粋な反省」(18ページ)として「直接的な自己関係」(
同)ではなく「反省した自己関係」(同)
● 本質は有との同一性
・本質は、「反省した自己関係」として「自己(有 ── 高村)との同一
性」(同)
・本質は有の真の姿として有と同一
・本質の同一性は、抽象的、形式的、悟性的同一性ではない
・抽象的同一性は「具体的なもの」(同)を「単純性の形式」(同)に変え
る
● 「絶対者は自己同一なものである」(同)
・この命題が真理であるかどうかは、この同一性が「抽象的な悟性的同一性
」(同)なのか、それとも「具体的な同一性」(同)なのかによる
・前者は形式論理学、後者は弁証法的論理学の原理
・後者の場合は「まず根拠、より高い真理においては概念」(同)
・「絶対的」は「抽象的という意味」(同)でも用いられるから注意するこ
と ── ニュートンの「絶対的空間」「絶対的時間」(同)
● 形式論理学の同一律、矛盾律の批判
・「すべてのものは自己と同一である。AはAである」(同、同一律)「A
はAであると同時に非Aであることはできない」(同、矛盾律)
・悟性の原理は同一性、単なる自己関係(㊤242ページ)
・この形式論理学の法則は「抽象的悟性の法則」(19~20ページ)にすぎな
いのであって「教養の本質的なモメント」(㊤243ページ)ではあっても
「真の思惟法則」(19ページ)ではない
・「命題の形式そのものがこの命題を否定」(20ページ) ── 命題は主語
と述語の区別と同一の統一
・形式論理学は、一方では同一律を主張しながら、他方で「すべてのものは
異っている」(24ぺージ)という「この法則と反対のものを法則としてい
る」(20ページ)
・「こんな法則を信じているのは、先生がただけ」(同)
115節補遺 ── 本当の同一性は具体的な同一性
● 本質の同一性は「観念性としての有」(同)
・本質は「直接的な規定性の揚棄」(同)によって生成した有の真の姿(
「観念性としての有」)
・本質の同一性は「区別を排除した同一性」(21ページ)ではなく、区別を
うちに含む同一性
・本当の同一性は「直接的に存在するものの観念性」(同) ── 有の理念
性(真の姿)としての同一性として「高い意義を持つカテゴリー」(同)
・「神は絶対の同一性」(同) ── 神は世界の絶対的な真の姿(真にある
べき姿)として世界のあらゆるものは神の映現
・人間は「自己意識という同一性」(同)により、自我という自己の真の姿
をとらえる存在
● 大切なことは「有およびその諸規定を揚棄されたものとして内に含んでい
る本当の同一性と、抽象的な、単に形式的な同一性とを混同しないこと」
(同)
・形式論理学は抽象的、形式的同一性として「退屈な仕事」(22ページ)
・本質のみならず、概念、理念も「本当の同一性」として真の姿、真にある
べき姿
「ロ区別」(1)
116節 ── 本質の否定性は区別
● 本質は「自己に関係する否定性」(同)
・本質は自己を否定し、自己を反発して区別を生み出すかぎりにおいてのみ
本質
・本質の否定は他のものへの移行ではなく、他のもの(有)との関係の定立
● 本質の否定性は区別
・本質の否定性は区別の定立
・それは、有を「定立されて有るもの」(同)「媒介されて有るもの」(同
)とする
116節補遺 ── 同一性は否定的な自己関係
● 「同一はいかにして区別となるか」の質問は無意味
・この質問は、同一は同一、区別は区別ということを前提
・この前提に立つかぎり、同一が区別に進展しえないのは当然。質問は「全
く無意味」(23ページ)
● 同一性のもつ否定性は「空虚な無」(同)ではなく「有およびその諸規定
の否定」(同)
・同一性は関係であり、自己を揚棄する「否定的な自己関係」(同)117
節 ── 区別はまず差別
117節 ── 区別はまず差別
● 区別はまず差別(差異)
・区別されたものは、相互に「他のものとの関係には無関心」(同) ──
差別(差異)
● 第3者が差別されたものを比較することではじめて、差別されたもの相互
の関係が生じる
・関係させられた同一性としては「相等性」(同)
・関係させたれた不同一性としては「不等性」(同)
・悟性のおこなう比較においては、相等性と不等性とはそれぞれ別個のもの
とされ、同一と区別の統一の関係としてとらえられていない
● 形式論理学の差異法則(差別の原理)
・「すべてのものは異っている」(24ページ)、「真に全く等しい2つのも
のは存在しない」(同)
・同一律と矛盾する命題
・「AはAである、BはBである、よってAとBとは異っている」という意
味に解すれば同一律と矛盾はないが、これでは「すべてのものは異ってい
る」とはいえない
・ライプニッツが差異法則を提唱したのは「すべてのものは同一のうちに区
別を持っている」という「特定の区別」(同)を問題にしたもの
・形式論理学が同一律と矛盾する差異法則をかかげるところに両者の一面性
があらわれている
117節補遺 ── 比較の有限性
● 同一性の考察のうちには区別の考察がある
・区別の考察は、区別されたもの「相互の比較」へと進む
● 比較は「有限な学問の仕事」
・単なる比較は「真の概念的認識」(25ページ)の準備にすぎない
・比較は「区別を同一へ還元する」(同)
● 数学は量を取扱うから、比較の「目的を最も完全に遂行する学問」(同)
● ライプニッツの「差別の原理」(26ページ)
・区別できない「2枚の木の葉」で反論
・いわれているのは「外的で無関心な差別ではなく、本質的な区別」(同)
118節 ── 差別から対立への進展
● 相等性と不等性は「互いに反照しあう」(同)
・差別における比較をつうじて、差別は「反省の区別」「それ自身に即した
区別、特定の区別」(同)に
・特定の区別とは対立
118節補遺 ── 特定の区別は対立
● 対立とは「一方は他方なしには考えられないような一対の規定」(27ペー
ジ)
・比較における相等性と不等性とは対立の関係にある ── 差別から対立へ
の進展
・「普通の意識」(同)も、「差別から対立」(同)への進展を求める
・「区別の際には同一性を、同一性の際には区別を要求する」(同)
・経験科学は「2つの規定の一方のために他方を忘れる」(同)
・「同一哲学」(28ページ)の名は、悟性的同一性にこそふさわしい
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