2010年5月22日 講義
第1講 「21世紀の科学的社会主義を考える」
とは何か
1.講座の目的
① 新しい政治への模索の受け皿となる科学的社会主義を
● 自民党政治にとってかわる新しい政治への国民的探究の時期
・「自民はダメ、民主にも失望、しかし政治はかえたい」
・「自民か民主か」の2大政党論の破綻
・あいつぐ新党は、古い政治の枠組みの旧態依然の党
● 具体的政策をつうじて現実政治の変革者としての科学的社会主義の党、
日本共産党への期待と関心は高まらざるをえない情勢
・普天間基地の無条件返還が党派を越えて沖縄の世論に
● しかし反面で社会主義へのマイナスイメージ
・日本共産党の党名変更への根強し、要求の背景に、ソ連、東欧のマイナスイ
メージ
・日本共産党が科学的社会主義を理論的基礎とすることがマイナスイメージで
しか受けとめられていない
・20世紀の前半まで、社会主義は夢とロマンの象徴だった
● 科学的社会主義を夢とロマンをもたらす新しい政治の受け皿に
・「 日本共産党はいいことを言っているのに何で伸びないのか」の声
・科学的社会主義を体系的に学ぼうとする勤労者通信大学に対する労働者階級
の関心の低さ
・「ソ連や東欧は社会主義ではなかった」というだけでは足りない」
・科学的社会主義の本来の輝きと魅力を取り戻さねばならない
② 科学的社会主義の学説を、
21世紀にふさわしい理論として根本からつかみ直す
● 理論が人に訴えるように論証するようになるのは、それがラディカルになると
きである。ラディカルであるとは、ものごとを根本からつかむことである」
(マルクス『ヘーゲル法哲学批判序説』 全集① 422ページ)
●マルクスにとって根本的なものは人間解放
・「人聞にとっての根本は、人間そのものである」 (同)
・人間解放の実現のために資本主義を分析し、搾取の秘密を明らかに
・プロレタリアート執権のもとでの生産手段の社会化と計画経済により、搾取
と階級は消滅し、人間解放を実現しうると考えた
●「ソ連型」社会主義は、マルクス・エンゲルスの展望した社会主義の
実験から生まれた
・社会主義建設の指針となったのは、マルクス、エンゲルスの社会主義論
・一時、社会主義を目指す国は、世界人口の3分の1 に
・しかし次第に経済的にも政治的にも行き詰まり、国内的には官僚主義・専制
主義、対外的には覇権主義の誤りにより、1989年から91年にかけて、東
欧、ソ連は崩壊一一人間解放ではなく、人間抑圧国家に
・そのなかで問題点として浮き彫りになったのが「市場と計画」「労働者階
級の権力と自由・民主主義」「階級と個人の尊厳」の対立、矛盾
・マルクス、エンゲルスの「社会主義論」の再検討も求められている
一一必要条件の補充が必要
● もう一度、人間解放の原点に立ち帰って科学的社会主義を21 世紀にふさわしい
ものとして根本からつかみ直し、人間論を中心に体系化してゆくことが求めら
れている
・唯物史観と剰余価値学説により、社会主義は科学になった
・重要なことは社会主義の「科学をそのあらゆる細目と連関についてさらに仕
上げてゆくことJ (マルクス エンゲルス「空想から科学へ」)
一一つまり科学的社会主義を「全一的な世界観」(レーニン)として体系
化していくこと
・レーニンの「マルクス主義の3つの源泉と3つの構成部分」は、科学的社会
主義を ①哲学(弁証法的唯物論と史的唯物論) ②資本論の経済学@階級闘
争と社会主義の理論とし、3つの構成部分に
・これは、エンゲルスの「反デューリング論序説」から取り入れた構成だが、
エンゲルスはデューリングの体系に対置して反論したのみ
● 結論的に言えば、科学的社会主義とは、真理の探究を通じて、社会を変革し人
間解放を実現する真のヒューマニズムの理論
・科学的社会主義は人間解放を理想に掲げる変革の立場にたち、真理を探究する
・真理探究の武器が弁証法的唯物論と史的唯物論
・科学的社会主義は真理を探究するがゆえに事実をふまえて発展する理論
③ 日本共産党の綱領路線が科学的社会主義の本流であることをつかむ
● 自主狙立路線への国際的批判(1960年、81ヶ国声明)
・「 日本共産党の自主独立路線は自主孤立路線、マルクス・レーニン主義から の逸脱」 との批判
● 自主独立の立場で61年綱領、76年「自由と民主主義の宣言」、04年新綱領
● 61年綱領から新綱領に至る綱領路線は、科学的社会主義の学説からの逸脱であ
るどころか本流であること、またなぜそれが可能であったのかを本講座をつう
じて検証していきたい。
④ 源泉への旅を終えて
● 県労学協の再建の1989年は天安門事件と東欧の崩壊の年
● 科学的社会主義の源泉への旅をつうじて、科学的社会主義とは何かを探究
・「社会主義崩壊論」の大合唱のなかで、科学的社会主義の源泉への旅を続け
ながら、科学的社会主義とは何かを考え続けてきた
・そこから到達した結論が、21 世紀には20世紀の社会主義の実験を総括した
科学的社会主義の学説が求められてるというもの
● いま、とりわけ社会主義の理念が求められている
一一みんなで一緒に考えていきたい
・「国民が主人公」の社会主義とは、国民一人ひとりが社会主義の理念を考
え、語り合うことでしか実現しえない
・受講生のみなさんと一緒に考えていきたい
一一それが「国民が主人公」の社会主義日本を実現する道
2.21世紀は『科学的祉会主義のルネッサンス』の
世紀
① 「ソ連型」社会主義を揚棄した社会主義の真にあるべき姿の探究
● 源泉と原点にさかのぼって社会主義の真にあるべき姿を探究する
・社会主義はどんな思想として歴史上登場してきたのか(2、3講)
一一社会主義の源泉は何か
・マルクスの出発点における問題意識はどこにあったのか(4、5、6講)
一一科学的社会主義の原点は何かーー人間の本質論、人間疎外論、疎外から
の解放論。
● ソ連、東欧は社会主義を目指しつつ、何故転落し、崩壊するに至ったのか、そ
の大もとを明らかにして未来への教訓とする
・ソ連は、マルクス、エンゲルスの「社会主義論序論」と、「プロレタリ
アート
執権論」 をソ連の社会主義建設の柱にすえた
・「ソ連型」 社会主義とは何か
・土台と上部構造においてどこに問題があったのか(15、 16 講)
② 弁証法的唯物論の探究
● 弁証法的唯物論の探究は未完成
・エンゲルスは「自然の弁証法序論」 で、弁証法の3つの基本法則を提示
・レーニンは「哲学ノート」で弁証法の「16の要素」 を提示
→いずれも未完成
● 科学的社会主義の弁証法をどうとらえるのか、また弁証法は何故真理探究の思
惟形式と言えるのか
・へーゲル論理学一一絶対者の学(絶対的真理の学) ーーに学ぶ
・対立物の統ーは、なぜ真理認識の思惟形式といえるのかー弁証法とは何か
(7、8、9講)
③ 史的唯物論への批判と反論
● マックスウェーパーの二元論
・「史的唯物論は、社会科学に価値観を持ち込むから科学ではない」
(ウェーバー)
・しかし事実と価値、存在と当為の二元論は正しくない-理想(主観)と現実
(客観)の統一
●「史的唯物論は人間の実践意義を認めない。階級はあっても個人がない」
・社会全体をつらぬくのが人間論(人間論の土台と上部構造)
・レーニンの「3つの構成部分」では、社会の3つの構成部分全体をとらえる
ことはできない(10、11、12講)
・マルクスも「政治プラン」(全集③ 596ページ)で、国家、政治、法を論じ
ようとした
●「資本主義から社会主義に発展するのではなく、その逆ではないか」
● 史的唯物論は基本的にこれらの疑問に答えうるものであると同時に、それ自体
発展させられねばならない側面を持つ
・へーゲルはフランス革命をつうじて、政治革命による資本主義への規制を考
えた
・マルクスは、当時のあらゆる社会主義思想と同様、フランス革命の不十分さ
から経済革命(社会革命)をとなえた
・科学的社会主義の政党の存在意義と多数者革命との関係
④ 「社会主義のルネッサンス」への模索
● 中国、ベトナムの社会主義市場経済とEUの社会的市場経済
● 中南米の社会主義と科学的社会主義の政党との関係
⑤ 日本共産党の綱領路線と21世紀の社会主義の展望
●「市場と計画」「労働者階級の権力と自由・民主主義」「階級と個人の尊厳」
の対立を止揚した人間解放の社会を目指す「社会主義のルネッサンス」の時代
● なぜ「国民が主人公」をもって科学的社会主義の本流と言えるのか
・「国民が主人公」 の意味するものは何か
・「国民が主人公」というだけでいいのか
● 社会主義的経済発展の原動力は何か
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