2013/02/23 講義

 

第11講 近代哲学⑤
     マルクス主義哲学(1)

 

1.近代哲学の到達点としてのマルクス主義

① 近代哲学の最高の問題は、世界の2大要素である思考と存在との
  関係をどうとらえるかにある

● 1つは思考と存在のどちらが根源的かの問題、もう1つは思考と存在とは果た
 して同一になりうるかの問題

● マルクス主義は思考と存在のどちらが根源的か、認識の源泉は思考か存在かの
 問題に結着

 ・17、18cのイギリス経験論と大陸の観念論の対立

 ・18、19Cのフランス唯物論とドイツ観念論の対立

 ・全体としては自然を根源的とする唯物論が勝利しながらも、自然をどうみる
  かの認識論では逆転現象

 ・フランス唯物論は、観念論的な機械的自然観。ドイツ観念論は唯物論的な弁
  証法的自然観

 ・マルクス主義の弁証法的唯物論と史的唯物論によって、根源性の問題でも、
  認識論の問題でも唯物論の勝利を決定づける

 ・以後唯物論と観念論の対立は、認識論をめぐって弁証法と形式論理学、真理
  と非真理の対立として展開されていく

● マルクス主義は「思考と存在との同一性」でも近代哲学の到達点

 ・イギリス唯物論としてのイギリス啓蒙思想は社会変革の思想となる

 ・フランス啓蒙思想は、フランス革命を理論的に準備し、理想(思考)と現実
  (存在)の関係の問題を実践的に提起

 ・ドイツ観念論はフランス革命を理論的に総括し、「理想と現実の統一」の問
  題を提起する

 ・ヘーゲルは、実践を媒介とする理想と現実の統一を主張し、革命の哲学をう
  ちたてる

 ・フランス革命のなかから、社会主義思想が誕生し、19C前半のヨーロッパ
  を席巻

 ・マルクス主義は、資本主義の分析をつうじて、「理想と現実の統一」という
  一般的命題を、資本主義と社会主義の関係として具体化することで、この問
  題の到達点を示す―社会主義を科学にする

 ・以後哲学は「変革の立場」にたつのか、それとも「解釈の立場」にとどまる
  のかが厳しく問われることに


② マルクス主義は古代哲学の成果も発展的に継承

● ソクラテスが提起した「いかに生きるべきか」の問題を発展的に継承

 ・古代哲学は、生き方の当為の問題をもっぱら人間の内面に求める観念論の立
  場

 ・マルクス主義は、人間の本質という唯物論の見地から生き方の当為の真理を
  探究

● アリストテレスが提起した実践的真理観を発展的に継承

 ・プラトンのイデア論を発展的に継承した「思惟の思惟」

 ・理想と現実の統一を実現するうえで重要なのは、現実からいかにして「当為
  の真理」としての理想を導き出すかにある

 ・アリストテレスは、実践を媒介とした理想と現実の統一を主張したが、現実
  から理想を導き出す問題に言及せず

 ・マルクス主義は、ヘーゲルの革命の哲学にもとづき、『資本論』における資
  本主義の分析をつうじて、現実の矛盾という「事実の真理」を認識し、それ
  を揚棄するものとして、唯物論的理想としての社会主義像を明らかにした

● マルクス主義哲学は「それまでに人類が生みだしたすべての価値ある知識の発
 展的な継承者」(13回臨時党大会決議)


③ マルクス主義には体系的な哲学書は存在しない

● マルクス主義には、プラトン、アリストテレス、カント、ヘーゲルのような体
 系的哲学書は存在しない

● マルクスの哲学研究は、経済学の研究に入るまでの若い時期が中心

 ・「ヘーゲル法哲学批判」「聖家族」(エンゲルスとの共著)、『ドイツイデ
  オロギー』(同)、「経済学批判・序説」「フォイエルバッハに関するテー
  ゼ」「経済学・哲学手稿」など

 ・1848年、ロンドンに亡命してからは経済学研究に専念

 ・マルクスは「"資本論"の論理学をのこした」(『哲学ノート』レーニン全集
  ㊳ 288ページ)

 ・『資本論』もある意味で哲学書といえる

● マルクスが経済学に専念して以降、エンゲルスが哲学を分担

 ・『反デューリング論』『空想から科学へ』『フォイエルバッハ論』『家族、
  私有財産および国家の起原』『自然の弁証法』など主な哲学書はすべてエン
  ゲルスの著作

 ・マルクス主義哲学をどう要約するかは難しい課題

 ・マルクス主義哲学は真理探究の「全一的な世界観」

 ・自然、人間、社会という世界の構成部分ごとにみていくことにする

 


2.自然にかんする哲学

● 弁証法的自然観

 ・弁証法の観点から、自然界のすべての事物は連関し、運動しているととらえ
  る

●「世界の現実の統一性は、それの物質性にある」(全集⑳ 43ページ)

 ・すべての物質は連関していることによって、1つの統一的な物質世界を形成

 ・ビッグバンによって今日では証明済み

● 時間と空間はすべての物質が存在する「根本形式」(同53ページ)

 ・時・空が単に意識のうちの存在とする観念論的時空論をしりぞける

 ・同時にニュートンの絶対時間、絶対空間のような物質から切りはなされた物
  質の入れ物としての時空論も否定

 ・「時間の外にある存在ということは、空間の外にある存在ということと同じ
  くらいにはなはだしい無意味」(同)
  ―物質と時空の不可分性を主張したもの

 ・エンゲルスの時空論は、アインシュタインの相対性理論で正しさが証明され
  る

● 物質と運動の不可分性

 ・「運動は物質の存在の仕方」(同61ページ)

 ・「あらゆる静止、あらゆる平衡は、相対的なものにすぎず」(同)

 ・現在の「標準理論」では、粒子と反粒子の対生成、対消滅の運動が、すべて
  の物質をつくりあげていることを明らかに

● 物質の無限の階層性についても言及

 ・分子は「無限に続く分割のなかでのひとつの『結節点』」(全集㉛ 255
  ページ)

 ・物質は「質量の相対的な大小によって判然と区別された一連の大きな集団に
  区分」(全集⑳ 575ページ)

 ・連続と非連続の統一の弁証法によって、物質の無限の階層性を予見

● 生命の起源

 ・蛋白体という物質の化学的運動から生命の誕生を説明し、観念論的な生命神
  秘説をしりぞける

 ・「生命とは蛋白体の存在の仕方」(同84ページ)

 ・連続と非連続との統一の弁証法を化学的運動と生命的運動の関係に適用する
  ことで、先見的理論に

● 進化論

 ・「種の進化は適応と遺伝との交互作用の結果として把握される」(同73
  ページ)

 ・同一(遺伝)と区別(適応)との統一、偶然と必然の統一として進化を正し
  くとらえている

●「自然は弁証法の検証となるもの」(同22ページ)

 ・「近代的唯物論は本質的に弁証法的」(同24ページ)

 ・エンゲルスが弁証法を駆使して予見したその基本部分が現代科学によって承
  認されているところに、弁証法の威力が示されている

 


3.人間にかんする哲学

① 人間解放の哲学

● マルクス主義の原点かつ根本的理念は、「人間の解放」(全集① 428ペー
 ジ)にある

 ・「人間にとっての根本は、人間そのもの」(同422ページ)

 ・マルクス主義とは「人間をいやしめられ、隷属させられ、見すてられ、軽蔑
  された存在にしておくようないっさいの諸関係」(同422ページ)をくつが
  えして、人間を「最高存在であると言明する」(同428ページ)理論

 ・この見地からマルクスは、人間疎外をもたらす資本主義の研究をつうじて、
  人間解放の社会主義を展望


② 人間の本質と人間疎外論

● 人間を最高の存在とするためには、人間とは何かという人間の本質論の探究が
 必要

 ・人間を「直接に動物的生活活動から区別する」(全集㊵ 437ページ)もの
  は、意識的な生産労働にあり、「自由な意識的な活動は人間の類性格」(同
  436ページ)

 ・生産労働は、共同作業としてしか営むことはできない―社会のなかで、共同
  で生産し、生活するところに人間の本質がある

 ・「人間の本質は、人間が真に共同的な本質であることにある」(同369ペー
  ジ)

 ・マルクスは明確にしていないものの、生産労働は自然を変革するところか
  ら、人間は本質的に「世界はどうあるべきか」という価値意識をもつ

● 人間の本質は、生産労働に含まれる自由な意識、共同社会性、価値意識の3つ
 に求めることができる

 ・自由な意識から、自由という価値が、共同社会性から民主主義という価値が
  生まれる

 ・自由と民主主義とは、人間の本質に根ざした価値として、普遍的価値となる

 ・自由と民主主義を「天賦の人権」とする観念論は、人間の本質に根ざした価
  値とする唯物論によって克服される

● モーガン『古代社会』は、マルクスの人間の本質論の正しさを証明

 ・モーガンは、『古代社会』でネイティヴ・アメリカンの生活観察により、階
  級も国家もない原始共同体の本来の人間(疎外されていない人間)をとらえ
  る―マルクスは『古代社会』のノートを作成

 ・エンゲルス『家族、私有財産および国家の起原』で、マルクスの遺稿を論文
  化

 ・自由な意識と共同社会性をもつ原始共同体の社会

 ・「自由、平等、友愛は、定式化されたことは一度もなかったが、氏族の根本
  原理であった」(全集㉑ 92ページ)

 ・原始共同体は、人類の600万年の歴史のなかの599万年を占めており、その
  なかで人間の類本質が形成されてきたもの

● 生産労働が人間の本質を形成すると同時に、生産物の搾取は人間疎外を生みだ
 す

 ・マルクスは、生産者が労働生産物を取得するのは絶対的権利とするヘーゲル
  の考えを継承

 ・「人間から彼の生産の対象をもぎ離すことによって、彼から彼の類生活、彼
  の現実的な類的対象性をもぎ離(す)」(全集㊵ 438ページ)

 ・搾取により労働は苦しみに。労働生産物を取得する喜びを奪われ、支配・従
  属の関係に―人間の非人間化―人間疎外

 ・搾取をなくすことは、人間解放の土台における必要条件

 ・人間解放の十分条件は、上部構造において人間の普遍的価値である自由と民
  主主義が全面的に開花すること

 ・マルクス、エンゲルスは「真の協同社会においては、諸個人は、彼らのアソ
  シエーションのなかで、またアソシエーションをとおして、同時に彼らの自
  由を獲得する」(新訳『ドイツ・イデオロギー』85ページ)として、アソシ
  エーションの民主主義と「同時に彼らの自由の獲得」を求めている

● 人間解放の社会とは、人間の本質の全面開花した真のヒューマニズムの社会

 ・人間解放の社会主義とは「成就されたナチュラリズムとしてのヒューマニズ
  ム」(全集㊵ 457ページ)

 ・「成就されたナチュラリズム」とは、人間の類本質(自然性)の回復


③ 人間の生き方の当為の真理

● 道徳は階級道徳

 ・「道徳は、支配的階級の支配と利益を正当化するものか、それとも、……こ
  の支配にたいする反抗と抑圧される者の未来の利益とを代表するものか、そ
  のどちらかであった」(全集⑳ 97ページ)

 ・ブルジョア的道徳は、フランス人権宣言の「市民の権利」にみられるように
  利潤第一主義を反映した「利己的な人間」(全集① 405ページ)の自由と平
  等

 ・「未来の利益を代表する」プロレタリアートの道徳こそ人間を最高の存在と
  する道徳

● 人間疎外から人間解放を求める生き方こそ、生き方の真理

 ・人間の類本質である自由と民主主義の全面開花を求め、搾取と階級廃止のた
  めにたたかうことに生き方の真理がある

 ・「人間の本性というものは、彼が自分と同時代の人々の完成のため、その
  人々の幸福のために働くときにのみ、自己の完成を達成しうるようにできて
  いる」(全集㊵ 519ページ)

● 現代風にいえば、「生き甲斐を社会進歩に重ねる」


④ 変革の立場にたつ(認識と実践の統一)

●「哲学者たちは、世界をさまざまに解釈しただけである。肝要なのは、世界を
 変えることである」(『新訳ドイツ・イデオロギー』113ページ)

● 革命の哲学は大きく3つの段階に区分される認識と実践の統一

1)事実の真理の認識

2)事実の真理から当為の真理へ―対象を対立物の統一として認識し、その対
  立・矛盾を揚棄するものとして当為の真理をとらえる

3)当為の真理をかかげた実践により、当為の真理を現実に転化
  →これが「合法則的な発展」ということ

 ・この3つの段階のすべてにおいて、認識と実践の統一により、真理に接近し
  ていく

 ・「すべての社会的な生活は、本質的に実践的である」(同113ページ)


⑤ 認識論としての弁証法の定式化の試み

● 形式論理学の一面性の批判

 ・形式論理学は「いわゆる常識の考え方」(全集⑳ 21ページ)であって、
  「きわめて広い領域で正当性」(同)をもっているが、「遅かれ早かれかな
  らず限界に」(同)

 ・形式論理学は、対象が「何であるか」の認識から「どのようにあるか」の認
  識に進もうとしたとき、限界に達する

 ・形式論理学は「個々の事物にとらわれてその連関を忘れ、……それらの静止
  にとらわれてそれらの運動を忘れる」(全集⑳ 20ページ)

 ・対象は自立と連関の統一、静止と運動の統一としてとらえる弁証法が必要

● エンゲルスの弁証法の3法則(『自然の弁証法』)

1)「量から質への転化、またその逆の転化の法則」

2)「対立物の相互浸透の法則」

3)「否定の否定の法則」 (同379ページ)→ヘーゲル「論理学」に学んだもの
  というが、この3つにまとめうるかは問題。特に「対立物の統一」という弁
  証法の基本形式が明確にされていないのは問題
  →『自然の弁証法』は完成された著作ではなく、研究ノートにとどまる

● まず弁証法の定式化を考えたのはマルクス

 ・『資本論』の執筆をつうじて弁証法への関心高まる

 ・「経済的な重荷を首尾よくおろせたら、『弁証法』の本を書くつもり」(全
  集㉜ 450ページ)

 ・マルクスの没後、エンゲルスがまっ先に探したのが『彼がいつも仕上げよう
  としていた弁証法の草案」(全集㊱ 3ページ)

 ・結局発見されなかったため、エンゲルスが弁証法の定式化を試みることに

● 結局、マルクスも、エンゲルスも弁証法の定式化には至らず

 ・後の世代の課題に


⑥ 認識論としてのカテゴリー論

● カテゴリーは真理認識の「結節点」として認識論としての弁証法的論理学に不
 可欠

 ・ヘーゲル論理学は、弁証法とカテゴリーを一体化したもの

 ・マルクスは、ヘーゲル論理学を「無条件にあらゆる哲学の最後の言葉」(全
  集㉙ 437ページ)と最高の賛辞―「最後の哲学」(『哲学史』)であること
  を承認

 ・また、ヘーゲル「論理学」を「弁証法の一般的な運動諸形態をはじめて包括
  的で意識的な仕方で叙述した」(『資本論』)としているので、ヘーゲルの
  カテゴリー論を基本的に承認したものといえる

 ・エンゲルスは『自然の弁証法』で自然科学の弁証法的カテゴリーは論じた
  が、哲学的カテゴリーに関心を示さず

 ・しかし、マルクス、エンゲルスがヘーゲルの「概念」「理念」を観念論の象
  徴と考え、カテゴリーから除外しているのは問題

● マルクス主義にはヘーゲル「論理学」のような哲学の体系書は存在しないの
 で、まとまったカテゴリー論も存在しない

 ・1998年に『マルクス・カテゴリー事典』(青木書店)が出版されている
  が、哲学的意味の「カテゴリー」に限定したものではない

● しかし『資本論』および史的唯物論で、経済的、社会的に数多くの新たなカテ
 ゴリーを生みだす

 ・特に「階級」というカテゴリーを生みだしたことは決定的

 ・階級的観点なくして、社会的諸現象を科学的に論じることは不可能

● その意味でマルクス主義はカテゴリー論でも近代哲学の到達点を示すもの

 ・カテゴリーは人類の認識の発展とともにより豊かなものに

 ・マルクス主義のカテゴリー論は、無限に発展するカテゴリー論の近代的到達
  点を示すもの

 


4.社会にかんする哲学

● 最大の功績は史的唯物論によって社会を科学の対象

 ・近代社会の特徴は、資本主義のもとで生産力を発展させるための自然科学の
  発展―社会科学は、ブルジョア的エセ社会科学のみ

 ・それに加え、自然では「意識のない盲目的な諸力がたがいに作用」(全集
  ㉑ 301ページ)しあうのに対し、社会を構成しているのは意識をもった人
  間であり、社会の発展は「自然の発展史とは本質的にちがったもの」(同)

 ・史的唯物論は観念論の「最後の隠れ場所」(全集⑳ 26ページ)であった歴
  史観から観念論を追放

 ・それと同時に、社会を科学するのに必要なカテゴリー群を新たに確立(以
  下、カッコ内に入れたのが新たなカテゴリー)することで社会科学発展の土
  台を築く


① 史的唯物論

● 社会は人間が生活する場

 ・人間が生活するには生活諸手段の生産が必要

 ・生産には、対自然(「生産力」)と、対人間(「生産関係」)の2つの関係
  がある

 ・「生産様式」=生産力と生産関係の統一

 ・生産様式は社会の土台

● 5つの生産様式

 ・「原始共同体」「奴隷制」「封建制」「資本主義」「社会主義」

●「土台」と「上部構造」

 ・生産様式の土台のうえに政治、法、イデオロギーが上部構造として存在

 ・土台と上部構造の統一が「社会構成体」

 ・土台と上部構造は相互媒介の関係にあるが、「究極的には」上部構造は土台
  によって規定される

 ・社会的存在は社会的意識を規定する

● 社会発展の基本矛盾

 ・「生産力と生産関係の矛盾」

 ・これまでの生産関係が生産力の発展にとっての桎梏となるとき「社会革命の
  時期が始まる」(全集⑬ 6ページ)

 ・生産関係は、階級社会においては搾取する「階級」と搾取される「階級」の
  対立としてあらわれる

 ・階級社会において、生産力と生産関係の矛盾は、生産関係における階級間の
  矛盾・闘争(「階級闘争」)としてあらわれる

 ・生産関係における階級闘争の発展は、生産力の発展にとっての桎梏となる

 ・「人類の全歴史は(土地を共有していた原始の種族社会が解体してからは)
  階級闘争の歴史、すなわち搾取する階級と搾取される階級、支配する階級と
  抑圧される階級とのあいだの闘争の歴史であった」(『共産党宣言』英語版
  序文、全集④ 598ページ)

 ・階級闘争は人間疎外からの解放を求めるヒューマニズムの運動

 ・土台と上部構造の全体を階級的観点で分析することで、はじめてその社会を
  科学的にとらえることが可能に

● 階級的意志

 ・「階級的意志」は「歴史の真の究極の推進力」(全集㉑ 303ページ)

 ・個々の人間ではなく、諸階級全体について「わら火のような行動へ駆りたて
  る動機ではなくて、大きな歴史的変化をもたらす持続的な行動を起こさせる
  動機」(同)

● 史的唯物論は社会を構造的に把握し、かつ社会の諸現象を階級的観点で分析す
 るという、2つの観点をつらぬくことで、社会を科学することを可能にした

● 5つの生産様式における生産力と生産関係の統一と対立・矛盾

 ・原始共同体―狩猟、採集という低い生産力のもとで対等・平等な生産関係

 ・約1万年前、農耕・牧畜に移行して、生産力は飛躍的に発展し、「労働力は
  ある価値をもつ」(全集⑳ 186ページ)ように―戦争の捕虜は奴隷に

 ・原始共同体の生産力と生産関係は、対立・矛盾に転化し、奴隷制社会に

 ・奴隷制社会―農耕・牧畜の生産力と、奴隷主・奴隷の生産関係

 ・奴隷の生産した農産物はすべて奴隷主に―生産力発展の桎梏に

 ・生産力発展のために、奴隷に農産物の一定割合の所有を認める

 ・封建制社会―封建領土での農業生産と封建領主・農奴の生産関係

 ・商品取引の発展で、都市に市民階級(ブルジョアジー)台頭

 ・市民階級は、自由な生産を求めて、ブルジョア民主主義革命

 ・資本主義社会―機械制大工業の生産力と資本家・労働者の生産関係

 ・貧富の格差拡大、生産と消費の矛盾のもとで、資本も労働力も過剰でありな
  がら結合しえず

 ・現代は資本主義的生産関係が生産力の発展の桎梏となっている「社会革命の
  時期」に突入

 ・産業資本主義から金融資本主義に―いっそうの矛盾の激化

 ・社会主義社会―機械制大工業の生産力と搾取も階級もない対等・平等の生産
  関係

 ・真の社会主義は今後の課題