● 聴 講(①1:04:19、②45:59、③20:00)

 

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第12講 近代哲学⑥
     マルクス主義哲学(2)

 

前回に引き続きマルクス主義哲学を学ぶ。

①社会にかんする哲学
前回学んだように、史的唯物論は初めて「社会」を科学の対象として捉えることに成功し、今日でも社会変革の実践において重要な「導きの糸」となっている。それだけに今日まで史的唯物論に対する様々な批判が展開されてきた。
本講義では代表的な史的唯物論批判を2つ紹介し、それに対する再批判を行う形で史的唯物論の真髄を説明する。講師は「史的唯物論に取って代わる新たな理論を現代哲学は何も示していない」と強調し、「階級」概念を導入して社会を科学的に分析する史的唯物論の理論的優位性を説く。

国家論においても、マルクス主義哲学は初めて唯物論的な解明を行った。現代でも大学などでは「国家の起源」を社会契約説によって説明するのが一般的だが、マルクス主義哲学は国家の本質が「階級支配の機関」であり、国家の起源は社会が「和解できない対立物に分裂したことの告白」であることを明らかにした。
つまり、資本主義社会の国家は「資本家階級の国家」であり、労働者階級は「搾取による人間疎外」と「国家による人間疎外」という二重の人間疎外のなかで苦しむことになる。社会主義社会は、この二重の疎外から解放された社会に他ならない。社会主義を「人間解放の社会」と捉えることによってこそ、ソ連社会が「社会主義とは無縁の社会」であったことが一層明瞭になる。
 
②「資本論」の功績
マルクスは「資本論」において資本主義社会の基本矛盾の解明と社会主義への移行の必然性を解明することで「思考と存在との同一性」を具体的に論じた。マルクスは「搾取の秘密」を明らかにするとともに、アリストテレスに学んで、商品流通(W−G−W)と資本流通(G−W−G)を明確に区別。資本の本質が「飽くなき利潤追求」にあり、剰余価値取のために資本は無制限に搾取強化を行い資本を蓄積することが「資本主義的蓄積の絶対的・一般的な法則」であることも明らかにした。これに照らせば、「トリクルダウン理論」がいかに的外れな議論であるかは一目瞭然だと講師は強調する。

資本主義は歴史的に商業資本―産業資本―金融資本と変遷を辿って今日に至っている。現代資本主義は「ゼロ成長」に入り資本は新たな投下先を見失い「金あまり現象」に陥り、余ったお金は「マネー・ゲーム」に注ぎ込まれ、世界的な「富の分捕り合戦」が行われている状況を講師は説明。「アベノミクスはカジノを助長する政策であり、サブ・プライムローン以上のバブルがおとずれる可能性のある大変危険な政策だ」と警鐘を鳴らす。マルクスは資本主義の最高の発展段階では「ペテンと詐欺」が横行すると分析したが、現代の「カジノ資本主義」と呼ばれる現状に照らせばマルクスの先見性には驚愕する。

③最高の哲学
マルクス主義哲学は近代哲学のみならず、古代、中世を含めた「人類が生みだしたすべての価値ある知識の発展的継承者」として歴史の舞台に登場した。中世哲学の教訓は、①真理探究の哲学であるためには支配階級のイデオロギーとなってはならないこと ②スコラ哲学は人間の本質が自由な精神であることを解明したことである。
マルクス主義哲学はこの二つの教訓を継承し「近代的自我」を「変革の主体」と捉え、人民の哲学であると同時に主体的な革命の哲学となることが出来た。さらに弁証法的唯物論と史的唯物論という真理探究の武器を手にすることにより、世界全体の「価値ある知識の発展的継承者」となることに成功した。