● 聴 講(①54:36、②58:08、③19:03)

 

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第3講 「A 意識」

 

「A 意識」では、意識が客観的事物の真理を認識していく過程が論じられる。
ヘーゲルの認識論が唯物論であり、
認識の発展が弁証法的であることに注目したい。

最初の意識は、対象を「このもの」としてとらえる感覚的意識である。
それは、「いま、ここ」にある個別をとらえる意識であり、
普遍的な言葉では表現しえないから、そこにいるものにしか理解できない
「もっとも抽象的で最も貧しい真理」にすぎない。

次の知覚は、対象を「物」としてとらえる意識である。
すべての「物」は、同一のうちに区別を含んでいる。
したがって、知覚は「物」を「一と多」、
「個別と普遍」のような対立する二つの契機を持つものとしてとらえ、
そのどちらが真理なのかをめぐって、右往左往することになる。
そこから知は、対立物の統一を求めて悟性に移行する。

悟性は、対立する二つの契機の根底にはニュートン力学の「力」があり、
それが「物」を動かすととらえる。
しかし「力」も作用と反作用の間を揺れ動くから、
さらに意識は「物の内面に」対立物の統一を求める。
こうして、時間と空間の統一としてのガリレイの「落下の法則」、
重力と遠心力の統一としてのケプラーの「惑星の運動法則」などが得られる。
さらにこれらの法則の根底には、
すべての「物」が安定した状態をたもっているのは
引力と斥力の統一の法則がある。

しかし、これらの法則は「物」を静止した状態でとらえる第一次法則であり、
これに対し運動・変化・発展をとらえる弁証法という 第二次法則としての
対立物の統一がもとめられる。
それは対立を矛盾としてとらえることにより、
矛盾の揚棄としての発展をとらえる意識の真理である。

 

最後に、脳科学から見た感覚、知覚、悟性を考えてみたい。
動物の音声コミュニケーションとヒトの言語は全く異なる。
動物的コミュニケーションは「いま、ここ」の「このもの」を
リアルタイムで伝える「感覚」にすぎず、 言語を必要としない。
これに対し言語は、時空を超えた普遍をとらえることにより、
考える力としての知覚、悟性を生み出す。
ヒトにとって、外部情報はまず感覚野に達して感覚となり、
次いで言語野に伝達されて、はじめて知覚、悟性となる。