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第11講 「D 精神」④

 

啓蒙は、宗教改革を経て無限の存在である神は追放したが、
資本主義における商品生産という有限性のうちに無限性を見出すことで
「啓蒙の真理」に到達する。

つまり商品生産とは、自己にとって使用価値をもつ有用なものの生産であり、
この有用なものは、使用価値を持っているから他者にとっても有用であり、
したがって市場において流通しうることになる。
こうして自己は無限に有用な商品を生産することにより、
無限に商品の概念(真にあるべき姿)に接近することになる。
これが「存在と概念の統一」、つまり「理想と現実の統一」としての
「啓蒙の真理」である。

この「啓蒙の真理」は、自己疎外精神からの回復を求める
フランス革命となって現れる。
これが「絶対自由と恐怖」である。
絶対自由の自己意識は、ルソーの「一般意志」(人民の真にあるべき意志)を
理想にかかげてその実現を目指す。
一般意志の行使が「主権」であり、この人民主権は
「未分の実体」として「世界の王座」にのぼり、
「いかなる威力もそれに対抗しえない」。
したがって、ジャコバンの人民主権の政治は恐怖政治に転換してしまった。

啓蒙から恐怖政治がうまれたことにより、
絶対自由は現実世界から内面の世界に立ち返り、
「道徳性」の世界に自己疎外からの回復を求める。
ヘーゲルの道徳論は、カントの道徳論(「実践理性批判」)の批判として
成立している。
カントは、道徳的意識とは理性の命ずる純粋義務に
自然的意識(感性)を従わせるところに生ずるととらえ、
道徳性と自然性、理性と感性、純粋義務と多様な義務という
3つの対立の調和の要請として、その道徳論を展開した。

 

コラムでは、ヘーゲルのいう有用性理論とは、
個人の利益追求が「予定調和」により全体の利益を実現するという
資本主義美化論であり、その本質は搾取の隠ぺいにあることを
史的唯物論は解明したこと、また史的唯物論は、
フランス革命とはブルジョワジーの封建制に対する第3の蜂起であり、
徹底的にたたかわれたところから社会主義思想、
ひいては科学的社会主義に発展したことを明らかにした。
さらにルソーの一般意志を高く評価するとともに、
人民主権を実現するには、労働者階級の政党の主導性が必要であるとして
「プロレタリアートの執権」論を確立した。