2015年11月14日 講義

 

 

第1講 弁証法は『転ばぬ先の杖」

 

はじめに

●「弁証法入門」のはじめての講座

 ・「入門」というからには、分かりやすく、しかもその真髄を語らなければ
  ならない

 ・難しいことを分かりやすく語ることは一番むつかしい仕事

 ・『へーゲル「精神現象学」を学ぶ』をつうじて、やっと弁証法の要となる
  問題がつかめた感じを手にしえたので今回の「入門講座」に

● 2015.10.17 県労学協の総会で「私たちは何のために弁証法を学ぶのか」の
 記念講演

 ・これは本講座へのガイダンスとしての講演

 ・そこで、弁証法の要は真の理想をとらえることにあり、それが最高の生き
  方につながるということをお話しした

 ・人間は世界を変革しうる存在であり、世の中を良くしていくところに存在
  意義がある

 ・世の中を良くしていくためには、真の理想をもたなければならないが、真
  の理想とは何か、どうすれば真の理想をとらえうるのか、という真理認識
  の方法論が弁証法

 ・真の理想に生きることが、世の中を良くすることのできる人間にとって最
  高の生き方

 ・「何のために弁証法を学ぶのか」の結論ともいうべきもの

 ・しかしこの「入門講座」では、弁証法をイロハから学ぼうというものだか
  ら、この結論だけ学んですませるわけにはいかない

 ・そこで、まず「弁証法とは何か」について最初に説明しておきたい

 

1.弁証法とは何か

① 弁証法は哲学史上最高の哲学

 ・2600年の哲学の歴史のうちにあって、最高の哲学

 ・哲学とは世界全体(自然、社会、人間)がどのような法則をもって存在し
  ているのかを明らかにする「世界観」―自然観でも社会観でも、人間観で
  もなく、世界全体の法則をとらえる世界観

 ・同時に哲学とは、どうすれば真理を認識しうるのかという「方法論」、つ
  まり「ものの見方・考え方」を論じる学問

 ・弁証法はその世界観においても、方法論においても、最高の哲学

② 弁証法は、
  世界のすべてのものは運動、変化、発展するととらえることで、
  最高の世界観となった

 ・かつては自然は同じことを繰り返すのみで歴史をもたないし、社会には歴
  史はあっても偶然の積み重ねにすぎないと考えられていた

 ・弁証法は、自然にも、社会にも法則が存在し、その法則にしたがって運動、
  変化、発展するととらえることで、最高の科学的な世界観となった

 ・したがってその法則をとらえることによって対象の真理を認識しうるとい
  う科学的世界観となった

③ 弁証法は、
  世界のすべてのものは対立・矛盾しているととらえることで、
  その事物の運動法則をとらえる最高の真理認識の方法論となった

 ・すべてのものは対立・矛盾のうちにあるととらえることを「対立物の統一」
  とよぶ

 ・対立する2つの側面が相互に媒介することによって、その事物の運動が生
  じる

 ・対立する2つの側面が相互に排斥し合う関係が「矛盾」とよばれ、すべて
  の事物は矛盾を定立しながらその矛盾を解決することで運動・発展してい
  く

 ・したがって弁証法は「自然、人間社会および思考の一般的な運動=発展法
  則に関する科学」(エンゲルス『反デューリング論』全集20 147ページ)

④ 弁証法は、
  世界のすべてのものの「運動=発展法則」をとらえることで
  「転ばぬ先の杖」となる

 ・「一寸先は闇」という諺がある

 ・未来のことは、ほんの少し先でも見当がつかないことのたとえ

 ・対象となる事物の運動法則を知らなければ「一寸先は闇」となる

 ・しかしその事物の運動法則を知れば「転ばぬ先の杖」となる

 ・足元が悪いところでも杖を準備しておけば、転んで失敗することもないの
  たとえ

 ・したがって弁証法を学び、身につけておくことは「転ばぬ先の杖」となる

⑤ 弁証法は、
  真の理想をとらえることで「提灯持ち」の役割を果たす

 ・「提灯持ちがどぶへはまる」という諺がある

 ・提灯を掲げた道先案内人が、かえって道を間違えて失敗してしまうのたと
  え

 ・社会変革を志す者は、ある意味で世の中の「提灯持ち」の役割

 ・「提灯持ち」がどぶにはまることなく提灯持ちとしての先導者の役割を果
  たすために弁証法を身につけねばならない

 ・現実は矛盾に満ちており、この矛盾を解決するものが理想

 ・真の理想は、現実の矛盾を解決するものとして、現実に転化する必然性を
  もっている

 ・弁証法は認識の発展をもたらす方法論であり、認識の最高の段階が理想の
  認識
 「真の理想は、現実的であるべきではなくて現実的なのであり、そしてそれ
  のみが現実的である」(へーゲル『哲学史』㊥の1 296ページ)

 ・弁証法を身につけることは、真の理想を認識することで世の中の「提灯持
  ち」の役割を果たすこと

 

2.「戦争法廃止の国民連合政府」は、
  なぜ真の理想といえるのか

● 戦争法をめぐる2つの矛盾

 ・1つは、安倍政権と国民との矛盾であり、国民の6割が戦争法に反対

 ・もう1つは、戦争法と憲法との矛盾であり戦争法は憲法の基本原理である
  平和主義に反し、憲法をこわすもの(立憲主義の破壊)

● この2つの矛盾を解決するのが「戦争法廃止の国民連合政府」の提案

 ・この提案は、アベ独裁政権を打ち倒して国民の声で動く新しい政府をうち
  たてようとするもの

 ・そのためには戦争法廃止で共闘してきた野党が選挙協力するしかない

 ・野党の選挙協力を実現するためには、野党間の政策の違いは横において戦
  争法廃止と立憲主義回復という国の根幹にかかわる非常事態を打破する一
  点で手をつなぐ

 ・この提案は戦争法をめぐる矛盾の解決としての「真の理想」

● この提案が「真の理想」だから、日を追うごとに現実を動かす大きな流れに
 なっている

 ・朝日の世論調査で48%が野党は選挙協力すべき

 ・民主党枝野幹事長の提案が野党5党と市民団体とで参院選をどうたたかう
  のかの意見交換会

 ・総がかり実行委員会の呼びかけで戦争法廃止のすべての団体が協力して
 「戦争法の廃止を求める」2000万統一署名の運動

● この提案を生みだしたものが、弁証法の威力

 ・エンゲルス―弁証法は「最も良い道具」であり「最も鋭利な武器」

 ・現実の矛盾を深く分析し、国民の声とアベ政権との矛盾を深く学ぶことに
  よって、この提案が生まれた

 

3.本講座の特徴

● 弁証法を分かりやすく学ぶために2つの工夫をした

 ・1つは、弁証法をたんなる理論としてではなく、実践に使える「最も鋭利
  な武器」であることを証明するために、講師の実践例を含め実例を数多く
  示したい

 ・もう1つは、「寸鉄人を刺す」という諺があるように、諺は短い身近な言
  葉で真理をとらえ、弁証法的でもあるから、諺をつかって弁証法を学んで
  いきたい

● 納得いくまで学ぶために討論時間を1時間とった

 ・もともと弁証法(ディアレクティック)とは、対話を意味するギリシア語

 ・討論をつうじて否定の否定により真理に接近するのが弁証法

 ・この討論時間を大いに活用して、討論することで受講生と講師の認識が弁
  証法的に発展していく経験を共有しよう