2016年12月23日 講義
第5講 矛盾の解決
1.弁証法は矛盾を解決して発展を求める
変革の哲学
● 矛盾の解決
・弁証法はすべてのものに対立・矛盾を見いだし、その対立・矛盾を解決す
ることで、そのものの発展をめざす変革の哲学
・すべてのものは、その矛盾の解決により、より質の高いものに発展する
・その矛盾の解決としての新しい質は、それまでに存在していた対立したも
のを観念的モメントとして自己のうちに含む
・その観念的モメントは、新しい質のもとで新しい現実的な対立・矛盾に転
化し、その新しい質をさらに発展させる要素となる
・「こういう矛盾をたえず定立しながら同時に解決してゆくことが、すなわ
ち運動なのである」(全集⑳ 125ページ)
●1%対99%という社会変革のため、2つの矛盾の解決
・社会変革の矛盾をどこに見いだすか―運動を構成する矛盾はいくつもあり、
矛盾の相互関連をみることが重要
・1つは変革の対象をどうとらえるかであり、矛盾は変革の対象を順をおっ
て階層的にとらえることから生まれる
・当面の矛盾の展開としての階級闘争を、資本主義的1%の矛盾の解決にど
うつなげていくかが問われる
・もう1つは、99%の人民の団結のために、人民内部の矛盾をどう解決す
るか
・当面の矛盾の解決としての一致点での共闘をつうじて、一致点をどう拡大
し、99%の団結(オール日本)につなげていくのか
・人民内部の政策的不一致という矛盾を、当面の階級闘争の課題をつうじて、
どう一致点に変えていくのかが、問われている
2.マルクスは『資本論』で資本主義の矛盾を
階層的にとらえている
●『資本論』における矛盾の階層性
・『資本論』は搾取の秘密が、労働力の使用価値と交換価値の矛盾にあるこ
とを、まず解明
・また搾取の秘密は、資本家階級と労働者階級の矛盾を生みだすことを明ら
かにして、労働者階級により資本家階級を打倒する階級闘争を提起
・階級闘争の発展をつうじて、搾取と階級をなくす社会主義・共産主義の社
会を最終的課題として提起
● 資本主義のもとでの一つひとつの矛盾を階級闘争により解決することが、社
会主義・共産主義への到達に向かっての前進を保障する
・社会の矛盾は、相互につながりをもち、1つの矛盾から他の矛盾へと連関
している
・社会主義・共産主義を根本的矛盾の解決として展望しながら、当面の一つ
ひとつの矛盾を階級闘争により解決してゆく
・マルクスは、『資本論』で最も本質的な搾取の秘密という小さな矛盾の解
決をつうじて、最後は社会主義・共産主義に到達することを解明した
・このマルクスの矛盾の階層的解決の提起を私たちも学ばねばならない
● 社会変革の運動は、社会主義・共産主義を展望しながらの、現実の一歩ずつ
の変革
・運動とは、「矛盾をたえず定立しながら同時に解決してゆく」という、現
実の一歩ずつの変革を意味している
・同時に、社会構成体の変革という大きな理念は、社会変革の方向性を示す
ものとして重要である
・搾取も階級もない社会主義・共産主義の展望がないと、当面する矛盾の解
決の方向性が見えてこない
3.日本共産党の社会変革における
階層的矛盾の解決
● 日本共産党綱領における2つの矛盾の解決
・日本共産党綱領は、第4章「民主主義革命と民主連合政府」、第5章「社
会主義・共産主義をめざして」となっている
・社会主義的変革を展望しながら、当面の階級闘争の課題として、「民主主
義革命と民主連合政府」を位置づけたもの
・ここに2つの矛盾の解決という矛盾の階層的解決の方向性が示されている
・しかしより正確にいうと、民主連合政府の樹立は、当面の一致点になって
おらず、当面の階級闘争の課題になっているわけではない
・現代における矛盾の解決を真剣に考えたとき、民主連合政府より一歩下が
った国民連合政府の提案がなされるに至った
・現代に生きる私たちにとって最も重要なのは、当面の矛盾の解決により、
現在の階級闘争を前進させることにある
● 戦争法廃止の国民連合政府の提案
・日本共産党は、2015年9月、市民の「野党は共闘」の声を受け、戦争法廃
止、立憲主義回復の国民連合政府を提案
・国民連合政府の提案は、民主連合政府から一歩後退し、市民の要求を踏ま
えながらの統一戦線の提案
・参院選では、32の1人区のすべてにおいて野党共闘が成立し、前回の2議
席から11議席へと前進
さらに新潟県知事選で、反原発、TPP反対を掲げて逆転勝利
・この野党共闘の成果を引きつぎながら、次の総選挙でさらに前進させ、野
党連合政権の問題に接近する必要がある
・野党共闘から野党連合政権へ、野党連合政権から民主連合政府へ、民主連
合政府から社会主義・共産主義の日本へという社会変革に向けての矛盾の
解決の1つひとつが、資本主義的矛盾を解決する力となっていく
4.マルクスは『資本論』で
人民内部の矛盾の解決を論じていない
●『資本論』と『空想から科学へ』における階級闘争
・マルクスは『資本論』では階級闘争を正面から取り上げず、エンゲルスの
『空想から科学へ』で、人類の歴史は階級闘争の歴史であったと語るのみ
・人民の階級闘争がどのように99%の団結につながるのかという、人民内
部の矛盾の解決は論じられていない
● 人民内部の矛盾の解決
・しかし人類の歴史を階級闘争の歴史ととらえることは、社会的矛盾の激化
は階級闘争を発展させ、人民内部の矛盾を解決して団結を強め、最後は勝
利することを展望している
・但し、まだ政党さえ十分に存在しなかったマルクス、エンゲルスの時代に、
政党間の共闘をどう前進させるかは議論の対象にならず
・この課題の解決に回答を見いだすことが、現代の科学的社会主義の課題
5.日本共産党における人民内部の矛盾の解決
・日本共産党は「国民が主人公」の立場での一歩ずつの社会変革を提案
・社会を変革するのは多数の国民であり、日本共産党もその一員として他党
派と共闘し、「さしあたって一致できる目標で統一戦線を形成し、統一戦
線の政府をつくるために力を尽くす」(綱領)
・統一戦線を結成し、99%の階級闘争に前進するためには、市民と野党の
共闘を前進させるしかない
国民連合政府の呼びかけによる人民内部の矛盾の解決
・「野党は共闘」という市民の声を受け、その願いを一歩前進させてどう共
闘するのかを明確にし、国民連合政府を提案―変革の対象からは一歩後退
しながら、野党共闘で一歩前進
・「安保法制を廃止し、立憲主義を回復する」との一致点をさし示すことで、
人民内部の政策は不一致を克服し、矛盾を解決
・その呼びかけが2017年12月「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める
市民連合」という市民の運動の統一を実現し、野党共闘に働きかけ
・市民と野党の共闘のなかで、4野党が共闘し、党首会談で①安保法制の廃
止、立憲主義の回復 ②アベノミクスによる国民生活の破壊と格差・貧困
を是正する ③TPPや沖縄問題などの強権政治を許さない ④安倍政権の
憲法改悪に反対、の4本柱を確認するところまで一致点が広がる
● 野党連合政権の樹立を
・国民連合政府の提案は、変革の対象を一歩前進させ、人民内部の矛盾を一
歩解決する合法則的な矛盾の解決
・野党が本気で4本柱の政治を実現するには、アベ政権打倒後にどういう政
権をつくるのかを国民に示す必要がある
・同時にそれは、人民内部の矛盾を解決する「新しい階級闘争」の始まりを
提起するものでなければならない
・市民連合の声を聴きながら、野党間で相互にリスペクトをしつつ、一致点
を確認しながら不一致点を克服していくという、99%の団結の運動の始
まり
6.『資本論』に学ぶ階級闘争と社会主義への道
●『資本論』は、当面の階級闘争を発展させつつ、資本主義の根本的矛盾の解
決を示した
● しかし、資本主義日本の階級闘争を人民内部の矛盾を解決しながらどう発展
させるのかは、いまだ緒についたばかり
●『資本論』の大きな矛盾の解決をしっかり学びながら、この「新しい階級闘
争」に勝利することが、日本人民の今日的課題
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