2017年10月21日 講義

 

 

第8講 弁証法は真理をとらえる

 

1.真理は必然性を乗り越えて、われらを自由にする

● 真理は認識されることによって、われらを自由にする

 ・人間は自由な意識をさまざまに働かせて真理を認識しようとする

 ・哲学は、真理を認識するための方法を長い歴史をつうじて確立してきた

 ・それが形式論理学と弁証法的論理学

 ・「論理学の仕事は、思惟諸規定がどの程度まで真理をとらえうるかを研究
  することにある」(へーゲル『小論理学』㊤ 125ページ)

● 形式論理学と弁証法的論理学

 ・アリストテレスは形式論理学を確立した

 ・カント「この学が今日に至るまでいささかも進歩を遂げ得ず、従って打ち
  見たところそれ自体としてすでに自足完了している観がある」(『純粋理
  性批判』㊤ 25, 26ページ)

 ・人間の認識は、まず事物が「何であるか」をとらえようとすることに始ま
  る

 ・「何であるか」の真実は、事物の本質

 ・そのためには、事物となるものを、他のものとの連関から切りはなし、孤
  立化し、固定化してとらえることが必要となる

 ・形式論理学の最大の任務は、事物の本質を認識することにある

 ・形式論理学の考え方は、「いわゆる常識の考え方」(全集⑲ 200ページ)

 ・認識は、事物が「何であるか」から、事物が「どのように運動するのか」
  に向かう

 ・それは人間が事物をより善いものに変革しようとするからである

 ・事物が「どのように運動するのか」をとらえるには、事物のもつ対立・矛
  盾をとらえなければならない

 ・事物は、本質のうちに対立・矛盾をもち、対立・矛盾する2つの極の相互
  作用によって運動、変化、発展が生ずる

 ・対立・矛盾をとらえるところから形式論理学は、弁証法的論理学へと移行
  する

 ・事物の本質のうちに対立・矛盾を認識することで、その矛盾を法則的に解
  決する運動、発展を認識する

 ・矛盾の解決とは、事物が「どうのようにあるべきか」の真実(理念)を見
  いだすこと

 ・「どのようにあるべきか」の真実は、概念的自由(真にあるべき姿の認識
  )

 ・人間の変革の意識は、矛盾を解決した真にあるべき姿を認識することによ
  り、事物を合法則的に発展させようとする

 ・「真にあるべき姿」の認識が、概念的自由

 ・弁証法は「真理をとらえることによって必然的自由をのりこえ、概念的自
  由により、われらを自由な変革の主体にする」

 ・以下に、弁証法が真理をとらえる状況を詳しくみていこう

 

2.弁証法は真理をとらえる

● 形式論理学と弁証法とはあいまって真理をとらえる

 ・形式論理学は、事物の「現にある姿」の真理をとらえる論理学であるのに
  対し、弁証法は事物の「あるべき姿」の真理をとらえる論理学

 ・両者は相まって人間に変革の意志を与える

 ・人間は2つの論理学を使って、世界の合法則的発展を現実のものにしてい
  る

● 形式論理学は、「現にある姿」の真理として、事物の本質をとらえる

 ・すべての事物は、現象と本質の統一として存在している

 ・本質は現象の影に隠れている事物の「真の姿」という真理

 ・形式論理学は、現象を通して、本質をとらえる

 ・マルクスは搾取の秘密という現象を解明し、「資本主義の本質は利潤第一
  主義にある」ことを明らかに

● 弁証法は事物の本質を対立・矛盾においてとらえる

 ・弁証法は事物の本質をとおして、事物の運動法則(必然性)をとらえよう
  とする

 ・必然性をとらえるとは、例えば総選挙に8つの政党があれこれ立候補して
  いるというのではなく、「自公とその補完勢力」対「日本共産党と市民と
  野党の共闘」という対立・矛盾としてとらえること

 ・弁証法はすべてのものを「対立物の統一」という基本形式でとらえる

 ・マルクスは「利潤第一主義」という資本主義の一般法則として、「一方の
  極における富の蓄積は、その対極における……貧困、労働苦、奴隷状態、
  無知、野蛮化、および道徳的堕落の蓄積」(『資本論』④ 1108ページ)
  という貧富(資本家階級と労働者階級)の対立・矛盾を生みだすことを示
  す

 ・この事物の必然性、法則性を対立・矛盾として示すところから、形式論理
  学は弁証法に移行する

● 弁証法は対立が矛盾へと移行することをとらえる

 ・対立・矛盾する2つの極は、切っても切れない関係のうちにあり、相互に
  関係しあう

 ・対立・矛盾は、相互の関係のなかで、対立は矛盾に移行する

 ・マルクスは、階級間の対立は、階級闘争という矛盾を生みだすことを示す

 ・階級闘争は社会発展の原動力

● 弁証法は、矛盾の解決を「真にあるべき姿」という真理としてとらえる

 ・矛盾は解決されねばならない

 ・矛盾を解決するとは、対立を乗り越える「真にあるべき姿」という真理を
  見いだすこと

 ・例えば総選挙において、市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で、
  アベ政治を打ち倒すことが「真にあるべき姿」

● 弁証法は、「真にあるべき姿」を掲げて世界を合法則的に変革する

 ・人間は変革の意志をもった存在

 ・「真にあるべき姿」を理念として掲げて実践するなかで、人間は世界を合
  法則的に発展させることができる

 ・つまり「真にあるべき姿」の実践により、人間は真に自由になれる

 ・こうして人間は無限に世界を合法則的に発展させることができる

 

3.個人の尊厳と弁証法

● 個人の尊厳を軸とした野党共闘でアベ政権の打倒を

 ・私たちは形式論理学と弁証法を使い分けるから、真理を認識し、世界を合
  法則的に発展させてきた

 ・いま私たちは、アベ退陣を求めるために、市民と野党の共闘の前進が求め
  られている

 ・そのために主権者の自覚をもつ個人の尊厳を軸とする共闘が発展させられ
  なければならない

 ・そこには、個人の尊厳をめぐる弁証法が存在

● 個人の尊厳の弁証法的発展

 ・人間は700万年という長い歴史をつうじて、人間が人間らしく生きるため
  の人間の本質として、個人の尊厳の実体を生みだしてきた

 ・モーガンは、『古代社会』のなかで「自由、平等、友愛は、定式化された
  ことは一度もなかったが、氏族の根本原理であった」(全集㉑ 92ページ)
  として、原始共同体の社会が個人の尊厳の実体を生みだしたと語っている

 ・人類は約1万年前に階級社会に突入、個人の尊厳の実体も階級対立のうち
  に

 ・個人の尊厳も、支配階級の側における個人の尊厳の否定、被支配階級の側
  における個人の尊厳の保持、という対立のうちに

 ・この階級間の対立が、労働者・国民の側から個人の尊厳を求める階級闘争
  の結果、アメリカ独立宣言、フランス人権宣言となって現れる

 ・この階級闘争の成果が、日本国憲法13条の個人の尊厳として定着するこ
  とに

 ・これに対し、アベ独裁政権は9条改憲で日本を「戦争する国家」に変え、
  個人の尊厳を奪おうとしている

 ・戦争法反対の運動のなかから、「民主主義ってなんだ」の回答として、国
  民一人ひとりが主権者として尊重される個人の尊厳が再登場した

 ・アベ政権は、解散・総選挙と同時に小池「希望の党」代表を使って、民進
  党を解散させ、共闘を破壊しようとした

 ・しかし市民と野党の共闘は、この攻撃を打ち破り、立憲民主党を立ち上げ
  て、野党共闘を守る

 ・今度の総選挙で、野党共闘と日本共産党が勝利することは、階級闘争を大
  きく前進させる