2018年1月20日 講義

 

 

第11講 社会は発展する

 

1.社会とは何か

● マルクスの史的唯物論

 ・エンゲルスの史的唯物論の展開の前に、マルクスの定式化がある

 ・そこで「社会とは何か」を規定

 ・社会発展を論ずるには、まず「社会とは何か」を知らなければならない

● 政治が社会を動かしているのではない

 ・政治が社会を動かしているとすると一国の歴史はとらえられても、世界各
  国の歴史を横断して比較検討することはできない

 ・日本史の時代区分として、縄文、弥生、倭の国を経て、奈良、平安、鎌倉、
  室町、戦国時代、安土桃山、江戸へと続き、次いで明治、大正、昭和、平
  成

 ・縄文、弥生は土器の生産にかかわる時代区分、奈良から江戸までは政治の
  中心地による区分、明治以降は天皇を中心とする区分であり、時代区分の
  基準なし

● マルクスの社会区分

 ・「諸個人がそのなかで生産をする社会的関係、すなわち社会的生産関係は、
  物質的生産手段、生産力が変化し発展するにつれて、変化し変動する。全
  体としての生産関係は、社会的関係、社会と呼ばれるものを、しかも一定
  の歴史的発展段階にある社会、独特で特色のある性格をもった社会を、形
  づくる」(「賃労働と資本」全集⑥ 403ページ)

 ・人間は衣食住にかかわる物を生産することで生きていく

 ・人間は、生産力の発展に見合う生産関係をつくり出すことによって、社会
  をつくり出す

 ・こうして原始共同体、奴隷制、封建制、資本主義という社会構成体をつく
  り出す

● 社会構成体によって、社会の科学的検討が可能に

 ・レーニンは、マルクスの「社会」概念によって、「歴史上および社会上の諸
  問題に対して厳密に科学的な態度をとる可能性を、はじめてつくりだした
  」(レーニン全集① 132ページ)とする

 ・この時代区分によると、縄文、弥生は原始共同体、倭の国、奈良、平安は
  奴隷制、鎌倉から江戸までは封建制、明治以降は資本主義となる

 ・こうして人間社会は、生産力と生産関係を統一した生産様式をもつ社会構
  成体の発展としてとらえられる

 ・そして生産力と生産関係の矛盾が、階級闘争として社会発展の原動力とさ
  れる

 ・エンゲルス「世界全体、それの発展と人類の歴史、さらにこの発展の人間
  の頭脳における映像を正確に示すことは、弁証法的な方法によって…… だ
  け達成することができる」(全集⑳ 22ページ)

 

2.社会は発展する

● マルクスの史的唯物論

 ・生産力が生産関係と矛盾するようになると、「社会革命の時期が始まる」
  (全集⑬ 6ページ)

 ・「経済的基礎の変化とともに、巨大な上部構造全体が、あるいは徐々に、
  あるいは急激にくつがえる」(同7 ページ)

 ・「このような変革の時期をその時期の意識から判断することはできないの
  であって、むしろ……社会的生産諸力と生産諸関係とのあいだに現存する
  衝突から説明しなければならない」(同)

● 資本主義社会の発展

 ・自由主義から独占資本主義段階を経て、国家独占資本主義に

 ・国家独占資本主義も、1930年代以降のケインズ型国家独占資本主義から
  1980年代以降の新自由主義型国家独占資本主義に

 ・新自由主義のもとで、社会変革の課題は、土台の独占資本と上部構造の国
  家権力とが単一の機構となった国家独占資本主義を打倒する階級闘争に

 ・マルクスの時代から社会が変化しており、社会発展の矛盾も国家独占資本
  主義対労働者・国民のたたかいとして変化してきている

 

3.国家の変革

● 国家は階級抑圧の機関

 ・「公的強力」によって階級闘争を抑圧し、支配階級の利益をまもる

 ・封建制末期の絶対主義のもとで、常備軍や官僚制などの統治機構を整備し、
  近代的な中央集権的専制国家が誕生

 ・ブルジョア民主主義革命により、封建制末期の絶対主義的君主制は、資本
  主義的な立憲君主制をへて民主共和制へ

 ・民主共和制のもとでも、支配階級は官僚を買収し、「政府と取引所の同盟
  」(全集㉑ 171ページ)で「富はその権力を間接に、しかしそれだけにい
  っそう確実に行使する」(同)

 ・資本主義は、立憲君主制の自由主義から民主共和制のもとでの独占資本主
  義、国家独占資本主義へとより強大な国家権力を掌握してゆく

 ・階級闘争の最大の課題は、民主共和制のもとで被支配階級が議会の多数を
  獲得し、国家権力を掌握することにある

 ・エンゲルスは、「民主的共和制は、労働者階級と資本家階級との闘争が、
  まず一般化し、ついでプロレタリアートの決定的な勝利となって、その終
  末に到達することのできる唯一の政治形態」(全集㉒ 287ページ)と主張

● 国家の変革

 ・「労働者階級は、できあいの国家機構をそのまま掌握して、自分自身の目
  的のために行使することはできない」(全集⑰ 312ページ)

 ・まず「公的強力」のうち、自衛隊は国民の合意で一歩ずつ解消の方向に、
  警察、裁判官は民主的な警察や裁判官に

 ・資本主義的搾取の維持、強化の機関の解体、変更

 ・国民の生命と暮らしを守る、医療、福祉、年金、教育などの機関の充実

 ・国家機関を変革する内容と方法は、階級闘争の状況によって多様なものに
  なるが、基本は「労働者、国民のための国家」に

 

4.統一戦線

● 新自由主義型国家独占資本主義

 ・日本では中曽根「臨調」行革路線以来、新自由主義型国家独占資本主義に

 ・新自由主義の本質は、資本の移動自由化と金融自由化により、大企業の横
  暴勝手を規制するあらゆる制約を取りはらい、もっと大企業に自由に金儲
  けをやらせろというもの

 ・労働者派遣法の自由化で、雇用も賃金もズタズタ、大型スーパー野放しで
  シャッター通り、農漁業にも大企業進出で農・漁民に後継者なし

 ・「現代、すなわちブルジョアジーの時代は、階級対立を単純にしたという
  特徴をもっている。全社会は、敵対する2大陣営に、……すなわちブルジ
  ョアジーとプロレタリアートとに、ますます分裂していく」(「共産党宣
  言」全集④ 476ページ)

 ・資本主義は資本家階級、中間階級、労働者階級という3つの階級を生みだ
  しながら、中間階級を没落させて労働者階級にしていく

● 労働者階級は中間階級と手を握って議会の多数をめざす

 ・階級的変化を受けて、労働者階級は中間階級との統一戦線を求める

 ・1937、コミンテルン第7回大会は、反ファシズムの統一戦線を訴え、フ
  ラン ス、スペインで人民戦線政府が成立

 ・日本共産党は、2001年第22回大会で、規約における「労働者階級の党
  」を「労働者階級の党であると同時に、日本国民の党」に改定して、統一
  戦線の立場を明確にする

 ・新自由主義型国家独占資本主義のもとで、労働者階級と中間階級との生活
  実態は、まったく差のない変わらない状態に

 ・日本共産党は、「綱領」でも統一戦線の結成を呼びかけ、統一戦線勢力が議
  会の多数を占める民主連合政府をめざしている

● 99%運動

 ・2011年、アメリカで「ウォ―ル街を占拠せよ」というオキュパイ運動が発
  生

 ・ウォ―ル街の金融資本家が世界の富の50%を独占しているとして、「わ
  れわれは99%」と主張した

 ・新自由主義のもとで、99%はその犠牲者だと主張して、全世界に共感を
  広げる

 ・2016年、アメリカ大統領予備選に立候補したバーニー・サンダースは、9
  9%運動を新自由主義のもとでの新しい統一戦線だと受けとめ、「サンダ
  ース現象」を巻き起こす

 ・「サンダース現象」は全世界に広がり、いまや資本主義は「1%対99%
  」の対決となっているとのとらえ方が広がる

 ・いまや統一戦線は、労働者階級と中間階級との連帯の枠組みを超えて、 資
  本家階級の一部までを取り込む「99%の」運動に発展してきている

 ・ここに現代の階級闘争の特徴がある