2018年2月17日 講義

 

 

第12講 新しい統一戦線

 

1.資本主義の発展

●『資本論』は、19世紀半ばのイギリス資本主義を論じている

 ・マルクスの当時は、「レッセ・フェール(自由にやらせろ)」の古典的自
  由主義

 ・ようやく株式会社が形成され、金融資本が登場するという段階

 ・マルクスはまだ登場したばかりの株式会社を、無責任な金集めにより「ぺ
  てんと詐欺の全体制を再生産する」(『資本論』⑩ 760ページ)として、
  将来化け物資本主義となることを予想

 ・また株式会社の発展は、信用制度のもとで金融資本の支配を生みだすこと
  も予言している

● マルクス以後の資本主義的生産様式の発展

 ・19世紀末から20世紀初めにかけて、独占資本主義、帝国主義の時代に

 ・第一次世界大戦後、資本主義は貧富の対立と失業の進行で自力では支えら
  れなくなり、国家と独占資本が合体した国家独占資本主義に

 ・ケインズは、「雇用、利子および貨幣の一般理論」において国家が経済に
  介入することで失業と貧困を解決しうると主張し、ケインズ型国家独占資
  本主義が誕生

 ・日本でも1970年代に革新自治体の広がりで、1973年国もケインズ型国家
  独占資本主義により「福祉元年」を自称し、「一億層中流化」に

 ・ケインズ型国家独占資本主義の行き詰まりのなかで、1980年代から市場経
  済万能を唱える新自由主義型国家独占資本主義に

 ・むき出しの資本主義のもとで、格差と貧困が激烈に拡大

● モノづくり資本主義からカジノ資本主義に

 ・資本主義とは、モノづくりにより剰余価値を取得するという生産様式

 ・しかし生産力の発展によりモノづくりは頂点に達し、ゼロ成長時代に突入

 ・資本は、投資先のない金あまり現象のなかで、IT革命を機に金融派生商品
  の売買で儲けを手にするマネー・ゲームのカジノ資本主義に移行

 ・資本主義は、いまやモノづくりからマネー・ゲームに

 ・マネー・ゲームは富を生産せず、再分配するのみの「ゼロ・サムゲーム」
  であり、資本主義という生産様式は、資本主義のもとでの生産力の発展の
  桎梏になってきている

 ・資本主義は明らかに変革の時期に入っている

 

2.現代資本主義の対立・矛盾

● マルクスは、資本主義の基本的矛盾を資本家と労働者の階級対立においた

 ・『資本論』は、資本主義的搾取の秘密を明らかにすることをつうじて、資
  本主義における基本的な階級対立を、資本家階級対労働者階級としてとらえた

 ・個々の賃労働者は、「見えない糸」(『資本論』④ 983ページ)で資本家階
  級につながれている

 ・そこから「万国のプロレタリア団結せよ!」という有名な呼びかけがなさ
  れた

 ・マルクスの意味しているのは、万国の数ある資本家のもとで働いている労
  働者は、労働者階級の解放という階級的利益のために団結せよ、というも
  の

● 資本主義の発展による対立・矛盾の変化

 ・しかし『資本論』が予想した「資本の集中」のもとで、資本は独占資本と
  なり、独占資本はさらに集中して国家独占資本となり、さらに国籍を超え
  て多国籍企業化している

 ・いま最強資本主義国であるアメリカでは、金融独占資本と国家とが一体と
  なり、そのマネー・ゲームで世界中の人民を収奪している

 ・つまり資本主義における階級対立は、マルクスの時代と異なり、1%の金
  融国家独占資本主義が全世界を市場とし、全世界の99%を支配している
  という対立・矛盾を生みだしている

 

3.新しい統一戦線

● 99%の運動

 ・2011.9 アメリカで「ウォール街を占拠せよ」というオキュパイ運動が発
  生

 ・ウォール街に住む1%の金融資本家が世界の富の50%を独占していると
  して、「我々は99%」と主張して反1%の運動を展開

 ・若者たちの草の根のデモであり、統一的な組織や運動の綱領もなく、特定
  のリーダーもいない抗議行動

 ・しかし99%運動はアメリカのみならず、全世界に共感を広げる

● バーニー・サンダースの訴え

 ・2016年、アメリカの大統領予備選に、民主的社会主義者を自称するバーニ
  ー・サンダース登場

 ・サンダースは新自由主義の矛盾を取り上げ、「1%の富裕層ではなく、わ
  れわれ99%を代表する政府」と国政革新を訴えて、かつてない共感を広
  げ、クリントンに迫る

 ・国際援助団体オックスファムの報告では、2017年に富の82%がわずか1
  %の超富裕層に入り、下位50%の37億人は1円たりとも収入が増えてい
  ない、という

● サンダースの提起した「3つの新しい運動」

① 現代資本主義の基本矛盾が1%対99%の対決にあることを明らかに

 ・オキュパイ運動は、失業救済を目標にウォール街を包囲し、占拠しようと
  いうだけのもの

 ・サンダースの1%対99%の対決は、明確に資本主義の基本矛盾を示し、
  国政革新の展望を示すもの

 ・アメリカの国民は、アメリカ共産党がソ連の言いなりになったところから、
  社会主義に対して敵対的感情をもつと同時に、草の根運動は起こしながら
  も部分的要求にとどまり、国政革新の運動を避けてきたが、サンダースは
  国民を国政革新の運動にひきもどした

② 1%対99%の矛盾の解決を社会主義的解決として示す

 ・これまでアメリカの共和党と民主党の2大政党制は、国政革新の展望を示
  さない2大保守政党

 ・サンダースは「民主的社会主義者」として、1%対99%の矛盾の解決を
  国政革新に結びつけ、アメリカ全体に社会主義を定着させる

 ・調査会社「ユーカブ」の2017.10月の調査では、若者の42%が社会主義
  に住みたいとして、資本主義に住みたいの42%を上回る

③ 1%対99%の対決は新しい統一戦線を提起

 ・サンダースの提起した1%対99%の対決は、ヨーロッパに新しい統一戦
  線をもたらす

 ・リーマンショックの救済として、IMF(国際通貨基金)はヨーロッパの
  「社会的市場経済」を踏みにじり、緊縮政策を押しつけ、失業、年金削減
  をもたらす

 ・「サンダース現象を」受けて、イギリス労働党党首コービンの資本主義の
  変革論、ポルトガル、ギリシアの革新政権、スペインのポデモスなどの反
  撃が生じている

 ・人間には、自由な意識(自由)と共同社会性(平等)という、2つの本質
  がある

 ・「社会的市場経済」を享受していたヨーロッパで、新自由主義のもたらし
  た極端な不平等に対し、民主主義を守れという人間の本質にねざした統一
  戦線が登場

 ・新自由主義は、格差と貧困を拡大しながら、国民の不満を押し隠すために
  戦争政策をすすめている

 ・新自由主義は、格差と貧困拡大で「平等」を奪い、戦争政策で「自由」を
  破壊する

 ・しかも政治的要求を「人間が真に共同的な本質」(全集㊵ 369ページ)で
  あるという人間の本質を破壊するものとしてとらえ、99%の団結を実現
  するという意味でも新しい統一戦線

 ・日本における個人の尊厳(自由)にもとづく統一戦線とヨーロッパの共同
  社会性(平等)という統一戦線という、2つの人間の本質にねざした新し
  い統一戦線をつくりあげる必要がある

● 「万国のプロレタリア団結せよ!」から「万国の99%の人民団結せよ!
  」に

 ・マルクスは、1864年第一インターナショナル創立に当たって「万国のプロ
  レタリア団結せよ!」と訴えた

 ・いまや新自由主義のもとで、人間の本質としての「自由と平等」が破壊さ
  れており、人間の本質を取り戻すために「万国の99%の人民団結せよ!
  」と呼びかけるべきとき

 ・日本共産党は「科学的社会主義を理論的な基礎とする」政党として、発達
  した資本主義国のなかで例をみない成長を遂げている

 ・「1%の富裕層や大企業のための政治ではなく、99%の国民のための政
  治」(第27回党大会決議)を訴えている

 ・日本共産党は全世界の人民に「万国の99%の人民団結せよ」と呼びかける
  ときではなかろうかと思われる