2018年3月17日 講義

 

 

第13講 日本における新しい統一戦線の誕生

 

1.現代日本の社会変革

●「国民が主人公」(綱領)の社会変革

 ・政治を変えるのは国民自身

 ・日本共産党も国民の一員として、国民とともに社会変革に参加する

 ・日本共産党は理論的先見性により社会の根本的矛盾を解明し、強大な組織
  力で国民が1つにまとまる決定的役割を果たす

● 階級闘争の2つの課題

 ・1つは、社会の根本的矛盾を明らかにして、その矛盾を解決する社会変革
  の理念を明らかにすること

 ・理念が正しくなければ、国民の大多数を結集することは困難

 ・2つは、正しい理念に向かって、国民のさまざまな要求を1つに束ねるこ
  と

 ・理念が正しくても、それが国民に理解され、支持されないかぎりは、国民
  の大多数を組織することは困難

● 日本共産党の綱領は、階級闘争の2つの課題を明確にする

① 現代日本の根本的矛盾は、「異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配
 」と国民とのあいだの矛盾にある

 ・「異常な対米従属」では、憲法よりも安保優先の政治で、世界初の「核兵
  器禁止条約」に背を向ける

 ・「企業・財界の横暴」では、政財界の癒着で原発再稼働にしがみつき、労
  働者派遣の自由化で2012年の330兆円の内部留保を、2016年には400兆円
  に

② 根本的矛盾を打開する民主的改革の統一戦線

 ・「民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小零細企業家、 知
  識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求める
  すべての人々を結集した統一戦線によって、実現される」

 ・階級、階層、思想・信条に関係なく、すべての国民を結集・分断して支配
  しようとする支配階級と、統一戦線で連帯して勝利しようとする被支配階
  級の側との間の階級闘争が続く

 ・70年代の革新統一戦線と80年の「社公合意」による統一戦線の分断

 ・その後の「一点共闘」という新しい統一戦線の萌芽の誕生

 

2.新しい統一戦線への前進

● 一点共闘の発展

 ・2007 教科書検定問題から「戦争の前には保守も革新もない」として「
  オー ル沖縄」を結成し、2014年総選挙で勝利

 ・2011.3 福島原発事故を機に、「原発ゼロの日本」の一点共闘、2013.3
  から毎週金曜日の首相官邸前抗議行動

 ・原発ゼロから、アベ内閣打倒の一点で、TPP、消費税、沖縄とも連帯

 ・日本共産党は、一点共闘を統一戦線に発展しうるとして高く評価

 ・2015.5 アベ内閣、戦争法=安保法制を国会提出 

 ・とくに2014.7 集団的自衛権行使容認を閣議決定したことへの市民の反発
  は大きく、運動のもりあがりのなかで、アベ内閣打倒のために「野党は共
  闘」の声が広がる

● 日本共産党と市民運動の呼応

 ・2015.9.19 戦争法=安保法制が強行成立

 ・日本共産党は即日「安保法制廃止と立憲主義の回復を求める国民連合政府
  」を発表

 ・市民連合の要求を理念としてくみ上げると同時に、今後の運動を99%の
  国民が団結する「国民連合政府」として提起したもの

 ・この提案は大きな反響をよび、これまで下からの自発的運動として統一し
  た組織をもたなかった市民連合は、2015.12「安保法制の廃止と立憲主義
  の回復を求める市民連合」として組織的一体化を実現

 ・「市民連合」は、安保法制廃止と立憲主義の回復という日本共産党の提案
  を引き継いだのみならず、「個人の尊厳」という3つめの柱をかかげる

 ・戦争法反対の運動のなかで、「民主主義ってなんだ」との問いが発せられ、
  政治は国民一人ひとりが主権者として主体的につくりあげる意味を込めて
  個人の尊厳をかかげ、99%の運動を提案

 ・日本共産党は、「オール沖縄」の教訓から個人の尊厳の提案に敏感に反応

 ・2017.1 日本共産党第27回大会で、志位委員長は、安倍政権に「野党と市
  民の共闘が対決」する新しい時代が始まったとして、「『多様性』を互い
  に尊重し、互いにリスペクト(尊敬)」をもち、すべての国民の「個人の
  尊厳」擁護の新しい日本を提唱

● 新しい統一戦線への前進

 ・個人の尊厳という人間の本質が統一戦線の土台になっていれば、そのリス
  ペクトのうえに政治的一致点を模索することが可能となり、合意形成はど
  んどん広がる

 ・日本共産党の対応に確信を深めた「市民連合」は、「野党は共闘」の声を基礎
  に民進、共産、自由、社民と意見交換し、野党共闘の前進を求める

 ・4野党は、① 安保法制廃止、立憲主義の回復、② アベノミクスの生活破
  壊、格差と貧困の是正、③ TPP、沖縄などの強権的政治を許さない、④
  憲法改悪に反対の4点で合意

 ・こうして、個人の尊厳と多様性へのリスペクトをもとに、安保法制反対の
  一点共闘は、本格的な99%を結集した統一戦線に向かって大きく前進

 

3.新しい統一戦線を生みだした力

● 下からの力と上からの力の統一

 ・出発点となったのは、「オール沖縄」に励まされながら、「原発ゼロ」を
  めざす市民の一点共闘

 ・その一点共闘を激励し、戦争法反対で統一戦線に発展しうることを見抜い
  ていたのが日本共産党

 ・日本共産党は、戦争法=安保法制成立という決定的瞬間において「国民連
  合政府」を提唱し、「市民連合」の突き進むべき道が、統一戦線にもとづ
  く新しい政府の樹立にあることを示す

 ・「市民連合」はそれに応えて、個人の尊厳にもとづく99%の統一戦線を
  提起

 ・日本共産党は、「市民連合」の反応をみて、個人の尊厳を軸に、政治的違
  いをリスペクトしながら、4野党合意を形成

 ・下からの市民の運動と上からの日本共産党の力とが99%の人民の結集を
  めざして相互に浸透し合いながら、新しい統一戦線をつくりあげる

● 70年代の革新統一戦線との違い

 ・70年代の革新統一戦線は、共産党と社会党とが政策協定を結び、それに労
  働組合、民主団体が加わってつくられた「上からの統一戦線」

 ・自民党の反共戦略の担い手となった公明党が社会党をゆさぶり、日本共産
  党と手を切る「社交合意」を結ぶと、いっぺんに革新統一は崩壊

 ・新しい統一戦線は、「下からの力と上からの力の統一」によるものだから、
  上からの野党共闘が分断されても、統一戦線は簡単には破壊されない

● 新しい統一戦線は、「対立物の統一」

 ・弁証法は、「対立物の統一」として、真理をとらえる

 ・日本の民主的変革の運動も、「対立物の統一」として真理となる

 ・民主的変革を求める統一戦線も、下からの市民運動と上からの野党の運動
  という対立物の相互浸透という、対立物の統一に真理がある

 ・今回の新しい統一戦線は、市民と野党の対立物の統一が生みだしたもの

 ・市民の側は、戦争法反対の運動のなかで、これまでの平和運動、労働運動
  の対立を乗りこえ、「総がかり行動実行委員会」という共闘組織をつくり
  あげ、その力で「市民連合」を組織

 ・野党の側では、日本共産党が戦争法に反対していた野党をとりまとめて、
  院内での野党共闘を実現

 ・「市民連合」と野党共闘との定期的会談を繰り返すなかで、99%の新し
  い統一戦線をつくりあげる

 ・2017.7 自民党は新しい統一戦線の前に都議選で惨敗

 ・市民と野党の共闘は、一人選挙区での野党候補の一本化に向かって前進す
  ることを決め、9条改正反対、安保法制撤回、原発再稼働認めず、森友・
  加計学園追及、保育・教育・雇用の拡充、働くルールの実現、性的マイノ
  リティーへの差別解消など7項目で合意し、アベ内閣と正面から対決

 ・追いつめられたアベ内閣、2017.9.5 突然の解散、99%の新しい統一戦
  線分断の奇策に(次回)