2019年4月20日 講義

 

 

第9講 日本が売られる

 

1.アメリカの財政赤字を支える日本

● 異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配

 ・日本の政治の大元は、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配のもと
  に、国民の苦しみと貧困が続いていることにある

 ・異常な対米従属は、日本政府が日米安保条約のもとで、日本をアメリカに
  売り渡していることにある

● アメリカは慢性的な赤字大国

 ・アメリカは輸入大国で、1980年代からずっと貿易赤字

 ・日本は、アメリカとの貿易黒字による外貨の大半を、米国債で保有

 ・日本は1985年のプラザ合意以来、米国債を買い続けるために、日本の金利
  を常時アメリカより低くしており、日本政府は金利差を使って「ドル買い・
  円売り」をおこない、アメリカ経済を支えている

● アメリカ経済を支える3本柱

 ・大門実紀史参議院議員は、『カジノミクス』(新日本出版社)で、アメリ
  カの要求に応えるものとして、「カジノ実施法」「異次元の金融緩和」「年
  金積立金バクチ」の3本柱を紹介して、話題となっている

 ・この異常な対米従属が、どんなに大きな犠牲を国民に押しつけているのか
  を見ていくことにしよう

 

2.カジノの解禁

● 2018.7 カジノ実施法成立

 ・政府は「統合型リゾート(IR)」の建設という口実でカジノ実施法を強
  行成立

 ・しかし「今国会で成立させる必要はない」76%、「成立させるべきだ」17
  %との世論調査

 ・トバクは、刑法185条で処罰される犯罪

 ・最高裁も、トバクが「勤労の美風を害するばかりでなく、……国民経済の
  機能に重大な障害を与える」と説明

 ・すでにパチンコ、公営ギャンブル(競輪、競馬)によって27兆円のギャン
  ブル大国になっており、「カジノ」はそれに輪をかけるもの

 ・しかもカジノは、公営ギャンブルでいう「目的の公益性」もない違法なも
  の

● アメリカ企業が日本人をターゲットに

 ・巨額の資金が動くカジノ設立は、アメリカ投資銀行にとって巨大なドル箱

 ・2015年から「アメリカの大手カジノ企業が日本進出にむけて本格的な動き」
  (『カジノミクス』49ページ)

 ・アベ首相、2016年の臨時国会で、「官邸の指示」(同51ページ)で会期
  を延長してまで「カジノ解禁推進法」を強行成立

 ・2016.12 「解禁推進法」成立後、カジノ運営企業などでつくる「アメリカ・
  ゲーミング協会」は「法案成立を歴史的成果として評価する」(同35ペー
  ジ)と大歓迎

 ・2017.2 アベ首相「解禁推進法」を手みやげに、アメリカ訪問。トランプ
  からトランプの最大の献金者「ラスベガス・サンズ」(大手カジノ企業)
  の紹介を受ける

 ・静岡大学・鳥畑与一教授は、衆院内閣委員会で「カジノの利益のほとんど
  はアメリカの一部のファミリー、投資家に還元されるということを指摘」
  (同45ページ)

● 大阪万博(2025)とカジノをセットで

 ・「アメリカのカジノ企業が最も注目し、参入をねらっているのが大阪カジ
  ノ」(同96ページ)

 ・破綻している大阪ベイエリア開発を、カジノ誘致のために、「2025年大阪
  万博」を隠れ蓑にして地下鉄延伸などの公共インフラ整備(950億円規模)
  を企む

 ・そのために2019.4 大阪「ダブル選挙」で再度「都構想」を持ち出す

 ・辰巳孝太郎参議院議員は、「大阪万博誘致に向けたオフィシャルパートナ
  ー(公式スポンサー)に、ラスベガス・サンズ、MGM、シーザーズ、メ
  ルコリゾーツ、ハードロック・ジャパンなど海外の大手カジノ企業がずら
  りと並んでいることを指摘」(同99ページ)

● 実施させないたたかいを

 ・法の仕組みからして、「自治体が国へ申請しないかぎり、カジノは誘致で
  きない」(同101ページ)

 ・自治体の国への申請には、都道府県議会の議決、立地市町村の同意が必要

 

3.「異次元の金融緩和」

● 日銀法

 ・「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」(日
  銀法2条)

 ・「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければな
  らない」(同3条)

 ・つまり日銀は、中央銀行として政府からの独立性を大事にし、物価の安定
  を図ることを目的として存在している

● アベ首相の「異次元の金融緩和」

 ・アベノミクスの第一の柱は「大胆な金融政策」により、20年来のデフレか
  らの脱却をめざす

 ・2013.4 政府と日銀は一体となり、「異次元の金融緩和」により、2年程
  度で物価上昇率を2%に引きあげてデフレから脱却すると共同声明

 ・デフレとは、所得と消費の低下によって物価が持続的に下落し、経済が停
  滞している状況のことであり、「デフレからの脱却」とは、物価も賃金も
  上がり、経済の規模を拡大して景気を良くすること

 ・しかし、それから6年、黒田日銀総裁は、6回も「2%」を延期し、2018.
  4 ついに「2%」の実施時期を削除してしまう

 ・アベノミクスの第一の柱は完全に失敗したが、いまだに「異次元の金融緩
  和」からの出口は見つからない

● 失敗の原因

 ・デフレの真の原因は、政府・財界のバブル後の不況を理由とした賃金引き
  下げ政策により、購買力が低下し、物価が下がることにある(「賃金デフ
  レ」)

 ・「異次元の金融緩和」は、デフレの真の原因に目をふさぎ、日銀からジャ
  ブジャブ資金を供給すれば、銀行の貸し出しも増え、需要が高まり、物価
  が上がるというもの

 ・しかし実際には、日銀から供給された金は銀行にとどまり、世の中には出
  回らないことから、デフレ脱却もできない

 ・他方でアベ政権の「異次元の金融緩和」は、日銀の独立性を踏みにじり、
  日銀を「日銀マネーを使ったとばく」(同106ページ)機関に変えてしま
  った

 ・すなわち日銀は、1つには資金供給のために銀行のもっている国債を次々
  に買い占め、いまや国債の42%を保有し、2つには「異次元の金融緩和」
  を始める前に比べて株価を支えるために「12倍近く」(同111ページ)に
  株保有を増大させた

 ・「異次元の金融緩和」から脱却しようとするとき、買い占めてきた国債、
  株を手放すことにより「国債、円に対する信頼はいっきょに崩壊し、『悪
  性インフレ』による経済パニックを引きおこす危険」(同172ページ)あ
  り

● 金融緩和の真の原因はアメリカに

 ・1999.1 ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で、アメリカ・ル
  ービン財務長官は「日本に対し露骨に日銀の国債引き受けを含む大胆な金
  融緩和(金利の引き下げ)をもとめた」(同179ページ)

 ・日本が米国債を買い続けるために、日本の金利を金融緩和によりアメリカ
  の金利より低くすることを求めたもの

 ・それにより、日本国債は米国債より低い利回りとなり、日本が米国債を買
  い続ける理由が生じる

 ・しかし当時の白川総裁(2008〜13)は、自民、民主の議員の「インフレタ
  ーゲット(日銀が物価上昇目標を掲げ、その目標達成まで国債を大量に買
  って、代わりに円を供給すること)」を拒否して、中央銀行の独立性を死
  守

 ・その後もアメリカは日銀の国債引き受けを要求し続け、アベ内閣は、2013.
  3 日銀総裁を白川からアベ言いなりの黒田東彦(はるひこ)に交替させ、
  日銀の独立性を踏みにじり、「アベ銀行」にしてしまう

 ・「異次元の金融緩和」が発表されたとき、最も喜んだのはアメリカ中央銀
  行(FRB)のバーナンキ議長であり、「劇的な効果をおよぼしている」
  (同181ページ)と評価した

 ・アメリカが歓迎したのは、「日米金利差を確保することにより、『ドル買
  い/円売り』で日本からアメリカに資金が還流することを期待したから」
  (同)

 

4.年金積立金バクチ

● バイ・マイ・アベノミクス

 ・2013.9 ニューヨーク証券取引所で講演したアベ首相は外国人投資家にむ
  けて、「バイ・マイ・アベノミクス」(同194ページ)と日本株への投資
  を訴える

 ・2014.1 ダボス会議で、アベ首相は年金積立金を株式市場で活用し、株価
  を支えることを宣言(同)

 ・2014.5 ロンドン金融街での講演で、アベ首相は再び「世界最大規模の日
  本の年金基金を株価つり上げに使う」(196ページ)と宣言

 ・2014.10 年金積立金の運用基準を見直しし、「国内債券(おもに国債)
  の比率を60%から35%に下げ、株式の比率を50%に倍増」(同)して、
  「年金積立金バクチの開始」(同)に踏み切る

 ・年金積立金の半分を使って、円安・株高(同202ページ)に導く

● 年金積立金を株につぎ込むのはバクチにすぎない

 ・アメリカはずいぶん前から日本に対し、日本の年金積立金の運用をアメリ
  カの投資会社株やヘッジファンドに委ねるように求めてきた

 ・2014.4 アベ首相は、アメリカの要求に応えて、年金積立金の運用をゴー
  ルドマン・サックス、アセットマネージメントなど数社に委託(同200ペ
  ージ)

 ・2018.4 年金積立金が保有する外国株は、アメリカのアップル、マイクロ
  ソフト、アマゾン、フェイスブックなどの10社で4兆161億円に及んでい
  る(同)

 ・アベ首相は、「年金積立金で国内市場の株価を支えるだけでなく、その運
  用を日本国債から外国株、外国債へふりむけることで、アメリカの株や米
  国債も買いささえ、歓心を買おうとしてきた」(同200〜201ページ)

 ・ところが2017年以降、海外投資家は日本株の「売り」を増やしているため、
  日銀は2018年12月までに累計24兆円を株式へ投資

 ・早くも年金積立金の株への投入はバクチにすぎないことが露呈

● 年金積立金バクチ

 ・政府は、国民年金、厚生年金あわせて約160兆円、給付費の3年分という異
  常なため込み(同208ページ)

 ・アベ首相は、「年金積立金の国債中心の運用では利益が出ないからリスク
  があっても株に投資するのだと正当化」(同205ページ)

 ・しかし将来株価が急落すれば、一瞬でその利益も消失してしまうから、公
  的年金の半分をリスクの高い株で運用する国は他にない

 ・「異次元の金融緩和」で「自分で国債の利回りを下げておきながら、国債
  はもうからないからと株をすすめる」(同208ページ)のは、「金融詐欺
  の誘導手口」(同)とほとんど変わらない

 

5.日本を取り戻す

● 日米安保条約を廃棄する

 ・「異常な対米従属」のおおもとには、日米安保条約がある

 ・日米安保条約は、アメリカが第二次世界大戦後に日本を占領した時代を継
  続させるために秘密裏に結んだもの

 ・その結果、沖縄をはじめとする全土にアメリカの基地がつくられ、日本は
  アメリカに対し軍事・外交・政治・経済的な従属を迫られている

● 日米安保条約は、終了通告によって終了

 ・アメリカから日本を取り戻すには、日米安保条約を廃棄しなければならな
  い

 ・安保条約10条には、日本がアメリカに終了通告すれば、その後1年で終了
  することが記載されている

 ・問題は、日本で安保条約の廃棄を求める政府を実現しうるかにかかってい
  る

 ・安保廃棄を共通政策とする統一戦線をいかに早くつくるかが課題

 ・その第一歩が参院選に向けての野党の統一候補の実現である

 ・すでに愛媛、熊本で参院選の統一候補が実現しており、残りの30選挙区で
  も早急に統一候補の実現を