2021年9月18日 講義

 

 

第12講 資本主義の「必然的没落」と
     アソシエーション

 

[はじめに]

 ・第1講で『資本論』には、資本主義のもつ付随的矛盾と根本的矛盾の2つ
  の矛盾があると述べた

 ・付随的矛盾とは、「人間と自然との物質代謝」の矛盾であり、根本的矛盾
  とは、貧富の格差の拡大という矛盾である

 ・そこで第1講のレジメでは、「この根本的矛盾と付随的矛盾の関係を、ど
  うとらえ、どのように解決するのかをつうじて、資本主義から社会主義へ
  の道をどう切り拓くのかを考えていくことになる」と指摘した

 ・『資本論』の最後の講座である本講において、この問題への回答を示して
  おきたい

 

1.資本主義の必然的没落

● マルクスは『資本論』をつうじて資本主義の必然的没落を論じた

 ・マルクスは、資本主義の根本的矛盾を「一方の極における富の蓄積は、同
  時に、その対極における、すなわち自分自身の生産物を資本として生産す
  る階級の側における、貧困、労働苦、奴隷状態、無知、野蛮化、および道
  徳的堕落の蓄積」(Ⅰ④ 1126ページ、Ⅱ④ 1108ページ)ととらえた

 ・すなわち、資本家階級と労働者階級との対立のなかで生じる富と貧困の対
  立、言いかえると貧富の格差拡大の矛盾という資本主義の根本的矛盾であ
  る

 ・この根本的矛盾は資本主義の発展につれて、利潤率の傾向的低下の法則の
  なかで、恐慌となり、あるいは貨幣資本の過多による金融投機となって、
  カジノ資本主義を生みだし、さらに貧富の格差の拡大は激化することにな
  る

 ・この矛盾の激化が、労働者階級の階級闘争をも発展させる

 ・「大資本家の数が絶えず減少していくにつれて、貧困、抑圧、隷属、堕落、
  搾取の総量は増大するが、しかし、また、絶えず膨張するところの、資本
  主義的生産過程そのものの機構によって訓練され結合され組織される労働
  者階級の反抗もまた増大する」(Ⅰ④ 1332ページ、Ⅱ④ 1306ページ)

 ・マルクスは、この労働者階級の階級闘争により、「資本主義的な外皮」(
  同、同)は粉砕されて「収奪者が収奪され」(同、同)、資本主義は没落
  すると結論した

● 晩期マルクスの最後の闘争

 ・しかし、1867年の『資本論』第1巻刊行後、1871年のパリ・コミューンは
  崩壊し、1876年第1インターナショナルも解散となるなかで、マルクスは
  1883年に没するまで、階級闘争をいかにして発展させるべきかを晩期の「
  抜粋ノート」のなかで模索することになる

 ・晩期マルクスの研究者である佐々木隆治氏は、『カール・マルクス』(ち
  くま書房)のなかで、「抜粋ノート」研究の成果を次のように述べている

 ・マルクスは、「1848年以降、理論的にも実践的にも資本主義の強力さを理
  解するようになるにつれ、労働運動による長期の改良闘争の必要性にとど
  まらず、労働者階級の階級闘争だけでは社会変革が可能ではないこと、労
  働者階級の同盟者が必要であることを認識するようになっていった」(佐
  々木前掲書 247ページ)

 ・「物質代謝の思想を媒介とした晩期マルクスの変革構想の発展は、まさに
  労働者階級の同盟者の探求の帰結であった」(同 247〜248ページ)

 ・晩期の「物質代謝の思想」は、本講座で「付随的矛盾」(第1講)とよん
  でいる第3部第48章の「人間と自然との物質代謝」の矛盾が端緒となっ
  ている

 ・すなわち、人間社会には「必然性の国」(Ⅰ⑫ 1460ページ、Ⅱ⑬ 1435ペ
  ージ)と「真の自由の国」(同、同)とがある

 ・「必然性の国」とは、「本来の物質的生産の領域」(同、Ⅱ⑬ 1434ペー
  ジ)の社会であり、資本主義社会もこの領域に属する

 ・すなわち、「本来の物質的生産の領域」とは、「自分の諸欲求を満たすた
  めに、自分の生活を維持し再生産するために」(同、同)おこなう自然と
  の格闘の領域であり、「すべての社会諸形態」(同、同)が含まれる

 ・これに対し「真の自由の国」とは、「必然性の国」を乗り超える社会主義
  社会、つまり「自由で平等な生産者のアソシエーション」(全集⑯ 194ペ  ージ)である

 ・資本主義社会という「自然的必然性のこの国」(Ⅰ⑫ 1460ページ、Ⅱ⑬
  1435ページ)における自由は「ただ、社会化された人間、結合した(アソ
  シエイトした—高村)生産者たちが、自分たちと自然との物質代謝によっ
  て—盲目的な支配力としてのそれによって—支配されるのではなく、この
  自然との物質代謝を合理的 に規制し、自分たちの共同の管理のもとにおく
  こと、すなわち、最小の力の支出で、みずからの人間性にもっともふさわ
  しい、もっとも適合した諸条件のもとでこの物質代謝を行うこと、この点
  にだけありうる」(同、同)

 ・ここには、第1部第13章で学んだ、資本主義的生産が人間と自然との物
  質代謝を「破壊することを通じて、その物質代謝を、社会的生産の規制的
  法則として、また完全な人間の発展に適合した形態において、体系的に再
  建することを強制する」(Ⅰ③ 881ページ、Ⅱ③ 868ページ)との思想
  が生きている

 ・すなわち、労働者階級は資本家階級に「強制」して物質代謝を「体系的に
  再建する」というのである

 ・「しかしそれでも、これはまだ依然として必然性の国」(Ⅰ⑫ 1460ペー
  ジ、Ⅱ⑬ 1435ページ)、つまり資本主義的生産様式の枠内のことである

 ・「この国の彼岸において、それ自体が目的であるとされる人間の力の発達
  が、真の自由の国が—といっても、それはただ、自己の基礎としての右の
  必然性の国の上にのみ開花することができるのであるが—始まる。労働日
  の短縮が根本条件である」(同、同)

 ・すなわちマルクスは、資本主義における「人間と自然との物質代謝」の矛
  盾という人類史的課題の解決をつうじて、労働者階級は「労働者階級の同
  盟者」を獲得し、根本的矛盾の解決である「自由で平等な生産者のアソシ
  エーション」が開花すると考えたもの

 ・したがって、マルクスがなぜ資本主義の枠内で「人間と自然との物質代謝」
  の矛盾を解決しうると考えたのか、が考察されねばならない

 

2.資本主義社会は胎内にアソシエーションを
  孕んでいる

● マルクスは、資本主義の胎内で未来社会であるアソシエーションの萌芽が
 生まれると考えた

 ・「新しい、さらに高度の生産諸関係は、その物質的存在条件が古い社会自
  体の胎内で孵化されてしまうまでは、けっして古いものにとって代わるこ
  とはない」(「経済学批判序言」全集⑬ 7ページ)

 ・「彼ら(労働者階級—高村)のなすべきことは、崩壊しつつある古いブルジ
  ョア社会そのものの胎内にはらまれている新しい社会の諸要素を解放する
  ことである」(「フランスにおける内乱」全集⑰ 320ページ)

 ・つまりマルクスは、資本主義社会の矛盾は、その矛盾に抵抗する労働者階
  級の階級闘争をつうじて、「新しい社会の諸要素」というアソシエーショ
  ンの萌芽を生みだし、その「諸要素」を発展させることで社会変革を実現
  しうると考えた

● 資本主義胎内でのアソシエーションの萌芽は、「社会的理性」として現れる

 ・マルクスが資本主義社会において、「人間と自然との物質代謝」の矛盾の
  解決を「新しい社会の諸要素」と考えたのには、マルクスの労働を基礎と
  する社会把握がある

 ・すなわち、労働は「あらゆる社会的形態から独立した、人間の一存在条件
  であり、人間と自然との物質代謝を、したがって人間的生活を媒介する永
  遠の自然必然性である」(Ⅰ① 79ページ、Ⅱ① 73ページ)

 ・「人間と自然との物質代謝」を破壊することは、「人間的生活を媒介する
  永遠の自然必然性」を破壊するものである

 ・したがって「人間と自然との物質代謝」の矛盾の解決は、階級闘争を超え
  る人類史的課題であり、人間の尊厳を守る活動として「労働者階級の同盟
  者」の連帯を実現しうると考えたもの

 ・同時にマルクスは、資本主義社会における「人間と自然との物質代謝」の
  矛盾を解決する運動のなかに、労働者階級とその同盟者との運動をつうじ
  て 「社会的理性」が生まれることを見出したのであり、そこにアソシエー
  ションの萌芽をみたのである

 ・その「社会的理性」は、「社会化された人間、結合した(アソシエイトし
  た—高村)生産者たち」が「この自然との物質的代謝を合理的に規制し、
  自分たちの共同管理のもとにおく」との表現に示されている

 

3.資本主義は階級闘争をつうじて「社会的理性」
  を育てる

● マルクスは、資本主義社会のなかで「社会的理性」が育まれると考えた

 ・マルクスは、一方で資本主義社会では、「社会的理性がいつも"祭りが終
  わってから"はじめて妥当なものとされる資本主義社会」(Ⅰ⑥ 500ペー
  ジ、Ⅱ⑥ 497〜498ページ)として、資本主義社会では事前に「社会的
  理性」は働かないと主張した

 ・これだけをみると、マルクスは資本主義社会では「社会的理性」は育たな
  いと言っているようにも見える

 ・しかし他方でマルクスは、先にみたように「人間と自然との物質代謝」の
  矛盾の解決に関し、資本主義のもとにあっても人民のたたかいが物質代謝
  を「体系的に再建することを強制」(Ⅰ③ 881ページ、Ⅱ③ 868ページ)
  し、「人間と自然との物質代謝」を「自分たちの共同の管理のもとにおく」
  (Ⅰ⑫ 1460ページ、Ⅱ⑬ 1435ページ)として、社会的理性が働くこと
  を認めている

 ・つまり資本主義の胎内における「社会的理性」とは、一般的には働かない
  のであるが、「人間と自然との物質代謝」の矛盾の解決のみが人間の尊厳
  を守る活動として「社会的理性」を生みだすとする

● 資本主義社会の胎内での階級闘争が「社会的理性」を生みだす

 ・アソシエーションとは、生産者の「結合した(アソシエイトした—高村)
  理性によって把握され、それゆえ支配された法則として、生産過程を彼
  らの共同の管理のもとに」(Ⅰ⑧ 441ページ、Ⅱ⑨ 438ページ)おく社
  会である

 ・つまりアソシエーションとは、資本主義の市場原理が盲目的に支配する社
  会ではなく、「社会的理性」の支配により、「人間と自然との物質代謝」
  の矛盾の解決のみならず、生産過程を全体として共同の管理のもとにおく
  社会である

 ・マルクスの(レジメの4ページで述べた)「フランスにおける内乱」(全
  集⑰ 320ページ)の文章には、「資本主義社会の胎内にすでにアソシエー
  ションが孕まれていて、この胎児が成長していってついに出産にいたる、
  というプロセスがイメージされている」(大谷『マルクスのアソシエーシ
  ョン論』358ページ)

 ・では、「社会的理性」はどのようにして資本主義の胎内に孕まれるのかと
  いえば、階級闘争をつうじて勝利した労働者階級のたたかいをつうじて、
  理性が次第に拡がることによってである

●「社会的理性」は前進する

 ・理性とは、感性、悟性、理性という人間の意識の最高位に位置する意識で
  あり、「社会的理性」とは、社会を変革する立場から、未来の真理である
  「当為の真理」に接近する意識である

 ・「社会的理性」は相対的真理から絶対的真理へと前進する

 ・「社会的理性」は、未来社会を論じるからこそ、不確定要素を含み、本質
  的に 相対的なものであり、相対的真理から始まって、社会的実践を積み重
  ねるなかで、絶対的真理へと前進する

 ・つまり未来社会をめざす「社会的理性」は、最初から絶対的真理に接近す
  ることはできないのであって、一歩ずつ前進して絶対的真理に接近してい
  くしかないのであり、社会もそれに応じて段階的に発展していくことにな
  る

● 最初の「社会的理性」としての非同盟運動

 ・その資本主義社会の胎内に孕まれるアソシエーションの萌芽を生みだした
  のが、ロシア革命という階級闘争から生まれた民族自決権と非同盟運動と
  いう 「新しい社会の諸要素」であった

 ・ロシア革命を指導したレーニンは、資本主義諸国間における植民地の争奪
  戦として展開された第一次世界大戦のなかで、独立の民族国家を形成する
  「民族自決権」を打ち出し、民族解放運動の諸契機をつくりだした

 ・第二次大戦後、民族自決権をかかげた民族解放運動の高揚と植民地体制の
  崩壊のなかで、かつての植民地・従属国であったアジア、アフリカ、ラテ
  ンアメリカの諸国は、資本主義の根本的矛盾に抵抗し、世界平和と民族自
  決権、公正な世界秩序の樹立をめざして非同盟運動を開始した(1961年)

 ・非同盟運動がめざしたのは、反帝国主義と反植民地主義にたった「社会的
  理性」の実現であり、労働者階級の同盟者を巻き込む運動であった

 ・発足当時、加盟国51カ国であった国連は、民族解放運動の前進により加
  盟国193カ国となり、そのうち非同盟運動参加国が120カ国を占めて
  国連の中心に座るようになって、大国言いなりの国連から「社会的理性」
  としての国連に大きく変質し、国連は生まれ変わった

 ・しかも国連は、市民社会が利害関係者として国連の運動に参加することを
  認め、世界人民の世論を代表する存在ともなっている

 ・「社会的理性」としての国連は、全世界の労働者階級とその同盟者を巻き
  込んで、資本主義胎内のアソシエーションの萌芽となっている

 ・その生まれ変わった新しい国連を象徴的に示すのが、米英ロ仏中の核保有
  大国の敵対・妨害を乗り越え、非同盟運動が中心となって築いた、2021年
  1月の核兵器禁止条約の発効である

 ・しかし、新しい国連の役割はそれだけではなく、今日的課題であるSDG
  sにも示されている

● 発展した「社会的理性」はSDGs

 ・国連は2015.9、SDGsを含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発
  のための2030アジェンダ」を採択した

 ・SDGsのめざすのは、アジェンダ序文が示すように「世界を持続可能か
  つ強くしなやかな道筋に移行させる」ための、2030年までの変革目標であ
  る

 ・2030年までに残されている期間は、あと9年に過ぎない

 ・SDGsの17のゴールのうちには、感染症の解決(ゴール3、ターゲッ
  ト3・3)、気候変動の緊急対策(ゴール13)、あらゆる形態の貧困の
  絶滅(ゴール1)という諸課題が含まれている

 ・つまりSDGsは『資本論』が指摘した資本主義の付随的矛盾の解決のみ
  ならず、根本的矛盾の解決も含んでいる

 ・その意味では、SDGsは、資本主義的危機の時代の羅針盤となる、現代
  の「社会的理性」を示したものといってよい

 ・しかもSDGsは、国連と各国政府が第一義的な責任を負うと同時に、マ
  ルチステークホルダー・パートナーシップ(多角的利害関係者の協力—高
  村)を原則におき、参加型民主主義にしたがって、国連とともに全世界の
  人民の知恵と力によって世界の慢性的危機を解決しようとしている

 ・核兵器禁止条約が発効したのも、ヒバクシャとNGO「核兵器廃絶国際キ
  ャンペーン」等の全世界の人民の運動が大きな力を発揮したからであった
  が、SDGsもまたその教訓に学んで「社会的理性」を発展させて、マル
  チステークホルダーを原則としている

● コロナ危機とSDGs

 ・国連と全世界の人民が、いますぐ発揮すべき「社会的理性」は、現在世界
  中に猛威をふるっているコロナ危機という「身近な要求」である

 ・現在のコロナ危機は、一国から世界中に広がったことに示されるように、
  グローバルな危機であり、その解決には全世界が協力するグローバルな運
  動が 求められている

 ・SDGsは、「ゴール3」の「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生
  活を確保し、福祉を促進する」のなかの、「ターゲット3・3」に、「20
  30年までに感染症 を根絶する」と規定し、コロナ危機の克服をうたっている

 ・このターゲットを空文に終わらせるかどうかは、国連が全世界の人民とと
  もに「社会的理性」を発揮するかどうかにかかっているといってよい

 ・そのためにはコロナ・ワクチンを、現状のようにワクチン特許によって富
  裕国と低所得国間のワクチン格差を広げるようなやり方ではなく、ワクチ
  ンの特許放棄の国際合意を実現させ、「誰一人取り残さない」という「20
  30アジェンダ」の精神にしたがって、国連と世界人民とが、「全世界でワ
  クチンを共有しよう」の 運動を訴えることが求められている

● コロナ危機から、気候危機問題の解決に

 ・そして国連と全世界人民の連携と連帯によってコロナ危機を解決するなら
  ば、「社会的理性」はさらに発展し、すでに顕在化している「ゴール13」
  の「気候変動」問題も解決しうる力も生まれてくる

 ・国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、「1.5度特別報告
  書」(2018.10)において、2030年までにCO2排出を2010年比で45
  %削減しないと、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑え込むことが
  できないことを明らかにしている

 ・さらにIPCC第1作業部会は、2021.8.9 地球温暖化の報告書において、
  人間の活動が気候変動に与えた影響は疑いがないと断じている

 ・グテレス国連事務総長は、これを受けて「これは人類に対する厳戒警報だ」
  と 評している

 ・コロナ危機の解決のために、国連と世界人民が連帯して「社会的理性」を
  追求するならば、グローバルな危機も解決しうることへの自信が生まれ、
  同じグローバルな危機である気候危機をも解決するより大きな「社会的理
  性」が生まれてくる

 ・気候危機問題は、資本主義の付随的矛盾であると同時に、SDGsの「ゴ
  ール13」の問題であり、またマルクスが指摘したように、人類史的課題
  として人間の 尊厳を守る課題であり、より強固な国連と世界人民の「社会
  的理性」を求める連帯・連携が求められている

● 気候危機問題の解決から貧困の絶滅に

 ・気候危機問題という人類史的闘争に勝利すれば、SDGsの「ゴール1」
  の「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ために、さらに発
  展した「社会的理性」により、資本主義の根本的矛盾を解決する国連と世
  界人民による「真の自由の国」をめざす最後のたたかいが始まることにな
  る

 ・それこそマルクスの考えていた付随的矛盾の解決をつうじて、資本主義の
  根本的矛盾を解決するという社会の段階的発展にほかならない

 ・「"祭りが終わってから"はじめて妥当なものとされる」社会的理性が、生
  まれ変わった国連と世界人民の連帯のもとで、現実を変革する「社会的理
  性」となっているところに、資本主義胎内でのアソシエーションの萌芽を
  みることができる

 ・しかもこの「社会的理性」は、国連と全世界人民の手で段階的に「世界を
  変革していく」につれて、理性のもつ力により、より大きな「社会的理性」
  へと成長し、より絶対的真理へと接近していくのである

 

4.「社会的理性」は資本主義の必然的没落による
  アソシエーションを生み出す

● SDGsは、現代の「社会的理性」である

 ・SDGsは、2030年に年限を切り、17のゴールと169のターゲットを
  示して、「持続可能な社会、経済、環境」をめざしている

 ・SDGsは、17のゴールが相互に不可分一体の目標であることを指摘し
  ている

 ・というのも、SDGsの諸課題はいずれも資本主義そのものが生みだした
  矛盾として「相互不可分性」をもっているからである

 ・したがって、SDGsのもつ「社会的理性」は、当面の目標であるコロナ
  危機の解決をつうじて、「より大きな社会的理性」となって気候危機を解
  決することとなり、「さらに大きな社会的理性」となって相対的真理から
  絶対的真理となり、資本主義の根本矛盾である貧困の解決へと向かうので
  ある

 ・いわば、『資本論』が資本主義の付随的矛盾の解決をつうじて根本的矛盾
  の克服をとらえているのに対し、SDGsは「社会的理性」をつうじて「
  世界を変革する」、資本主義の段階的変革を論じているのであり、『資本
  論』とSDGsは共

● 資本主義の必然的没落によるアソシエーションの実現は、社会の段階的発
 展を意味している

 ・志位委員長は、日本共産党創立99周年記念講演「パンデミックと日本共産
  党の真価」において、社会の段階的発展について言及している

 ・すなわち、日本共産党の綱領にいう社会の段階的発展とは、多数者革命の
  立場、直面する一致した課題を実現するための国民的な共同と団結という
  統 一戦線の立場と三位一体であるというもの

 ・いわば、日本共産党の「国民が主人公」の立場からすると、「社会的理性」
  という相対的真理により、統一戦線と多数者革命が導かれ、それに応じて
  社会も段階的に発展して、絶対的真理としてのアソシエーションが実現さ
  れると考えている

 ・SDGsの諸課題も、「社会的理性」の立場から、「世界の人民が主人公」
  の立場にたって、この多数派形成にもとづく社会の段階的発展の見地が貫
  かれなければならない

 ・つまりSDGsの諸課題は、社会の段階的発展としての相互不可分性を意
  味しており、先に述べたように、「社会的理性」をつうじて、まずコロナ
  危機を克服し、次いで気候危機の解決へ、そして気候変動の解決から最後
  の課題である貧困の絶滅へと段階的に相対的真理から絶対的真理へと発展
  することが 期待されている

 ・マルクスが『資本論』において、付随的矛盾としての気候危機の解決から、
  根本的矛盾としての貧富の格差の解決という段階的発展を述べたのと同じ
  論理が「社会的理性」を掲げて社会の発展を述べるSDGsにある

 ・日本共産党は、社会の段階的発展の見地から、安保法制の廃止と立憲主義
  の回復を求める市民と野党の共闘を野党連合政権へと発展させようとして
  いる

 ・菅政権の「コロナ失敗」での政権投げ出しのもとで、2021.9.8、日本共産
  党、立憲民主、社民、れいわの野党4党は、自公政権打倒の野党共通政策
  で合意し、新政権実現に向けて大きな一歩を踏み出した

 ・共通政策には、コロナ危機を克服し、地球環境を守る課題が含まれている

 ・日本で新政権が誕生すれば、SDGsを正面にかかげた「社会的理性」を
  かかげた政府を展望しうることになる

 ・日本において現代の「社会的理性」であるSDGsを政府として追及する
  ことになれば、国連のSDGsを実現しようとする「社会的理性」もより
  大きなものとなって全世界を動かすことにもなるであろう

 ・そうなれば、全世界に資本主義の必然的没落とアソシエーションの誕生と
  が現実的課題となってくることになる

 ・その意味では、『資本論』は21世紀の現代においてこそ、その生命力を
  発揮しているといってよい