【講師よりご挨拶】                                        著述のリンク

「高村是懿哲学講座」の展開

科学的社会主義の哲学のより豊かな進歩と発展のために

 

はじめに

 担当者の長年のご協力により、このたびホームページ「高村是懿哲学講座」がほぼ完成しました。このホームページには、1999年9月以降の広島県労働者学習協議会での哲学講座のレジメ、録音、出版物という全記録が収録されており、しかも全国のどこからでも無料で閲覧できるものとなっており、これまでにない試みと言うことができます。
 ご協力頂いた方の真摯なご努力に、心から感謝の気持ちを捧げます。出版不況の折にもかかわらず、しかも哲学講座という一般受けしない講座について、ここまで完全を記されたことに対し、言葉に尽くし得ない友情と連帯の気持ちを表明するものです。
 ホームページ完成にあたり、どうして「高村是懿哲学講座」を展開することになったのか、その理由を示して欲しい、との連絡がありました。その要望にお応えするものとして、以下の文章を作成しました。

1.科学的社会主義の学説

 日本共産党の第13回臨時大会は、科学的社会主義の学説について、「人類が生みだしたすべての価値ある知識の発展的継承者であると同時に、歴史と共に進行する不断の進歩と発展を特徴としている」と規定しています。
 つまり、それはマルクス、エンゲルスの創設した体系的な「価値ある知識」であると同時に、単なる教条ではなく、「歴史と共に」発展する生きた学説であると言うことができます。この点で、最大の問題となったのが、1989年に始まった東欧・ソ連の解体でした。しかも、広島県労働者学習協議会が、組織的に再建されたのが、1989年9月だったところから、私たちは再建直後から、科学的社会主義とは何か、という古くて新しい問題に直面せざるを得なかったのです。

2.源流への旅立ち

 講座の始まりは、東欧・ソ連の崩壊のもとで、社会主義と自由、民主主義との関連を探るために、源泉であるヘーゲルに遡ろうというものであり、それが1999年9月出版の『へーゲル『小論理学』を読む』となりました。この試みは、レーニンの哲学ノートに学んだ01年9月の『変革の哲学・弁証法』、『自由と民主主義の宣言』に学んだ03年6月の『人間解放の哲学』、ルソーの『人間不平等起源論』『社会契約論』に学んだ04年8月の『科学的社会主義の源泉としてのルソー』、05年9月の『ヘーゲル「法の哲学」を読む』へと、続いていくことになります。
 この作業を通じて、自由と民主主義とは、科学的社会主義の本質的構成部分であることを実感することになります。

3.弁証法の再検討

 つづいて、弁証法の探求に向かうことになります。マルクス、エンゲルスは科学的社会主義の哲学である弁証法の基本形式を探求しようとしましたが、結局時間不足により、その思いを実現することはできませんでした。
 そこで、マルクスが弁証法を使って書いたと称する『資本論』から弁証法を学ぼうとします。それが06年8月の『資本論を鳥瞰する』と9月の『「資本論」の弁証法』です。資本論の弁証法をさらに、原理的に高めようとしたのが、07年8月の『弁証法とは何か』と、『エンゲルス「反デューリング論」に学ぶ』であり、その土台のうえに民商の哲学講座として展開された『ものの見方・考え方』が09年2月出版されます。
 こうした諸著作をふまえ、もう一度ヘーゲル弁証法に立ち戻りたいとの思いから、09年9月から10年9月にかけて、『ヘーゲル「小論理学」を読む』第2版を表します。初版とは異なり、『小論理学』のすべてについての逐条解釈となっており、『小論理学』解釈の決定版を心がけたものです。

4.21世紀の科学的社会主義

 21世紀を生きる私たちにとって、東欧・ソ連の崩壊から何を学び、21世紀の科学的社会主義にいかに反映するかが問われています。この疑問に答えようとしたのが、11年12月の『21世紀の科学的社会主義を考える』であり、そこでは科学的社会主義の学説とは、人間を最高の存在にする人間解放の真のヒューマニズムの学説としてとらえられています。13年9月の『科学的社会主義の哲学史』では、科学的社会主義の哲学が2600年の哲学史の最高峰に位置する哲学であり、日本共産党第13回臨時大会の決定の正しさを証明していることを解明しました。
 15年9月の『ヘーゲル『精神現象学」を学ぶ』は、ヘーゲル哲学はその出発点からして理想と現実の統一を哲学の究極目的としていることを明らかにし、人間の頭脳は、理念とは何かを実践的にとらえる変革の哲学をもって最高の喜びとすることを学びました。

5.科学的社会主義の発展のために

 科学的社会主義の哲学は、他の経験諸科学と同様に、できあがった教条ではなく、無限に発展するものであり、個人的には「真理の前にのみ頭を垂れる」を信条としています。これまで学んだことは、そのほんの一部の真理でしかないように思います。体力的に長時間の講義が困難になってきているので、15年10月からの『諺にみる弁証法入門』は、出版を予定しない、講義のみの講座となり、16年8月からの『「資本論』に学ぶ弁証法入門』も同様に考えています。
 これからも可能な限り、広島県労学教の講座は継続してゆくつもりですので、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


                                    2016年 7月 7日
                                            高 村  是 懿