『変革の哲学・弁証法─レーニン「哲学ノート」に学ぶ』より

 

 

あとがきにかえて

 

 高村是懿著・広島県労働者学習協議会編『ヘーゲル「小論理学」を読む』(以下、『読む』)は、幸いにも多くの方に迎えられ、今回、第二弾『変革の哲学・弁証法─ レーニン「哲学ノート」に学ぶ』を世に問うことにしました。
 本書も前回同様、広島県労働者学習協議会での講義がもとになっていますが、講義そのものではありません。『読む』が上下あわせて一一〇〇ページという大部なものになってしまいましたので、今回は、もっとコンパクトに手にとってもらえるようにしようと、かなり内容を絞り込み、圧縮しました。
 実際の講義では、つねにその時々の情勢が語られ、哲学と現実の政治が生きいきと結びついています。それが「高村哲学ゼミナール」の特徴の一つなのですが、紙数の都合と事例そのものが古くならざるをえないという理由からそのほとんどを削らざるをえませんでした。
 それでも、私たちはできるだけ講義の良さが生かせるよう最大限の努力と工夫をしたつもりです。

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 本書の特徴について述べたいと思います。
 本書は『哲学ノート』の主要部分をその流れに沿って全体として扱った解説書であり、私たちの知る限りでは本邦初だと思われます。『哲学ノート』はノートゆえの難しさがあるのですが、本書によってその全体像をとらえることができるでしょう。また、本書はヘーゲル哲学への手引きにもなっています。とりわけ、ヘーゲル哲学に潜む「変革の哲学」を浮き彫りにせんとする問題意識のもとに執筆・編集されています。本書は『読む』の姉妹編であり、ヘーゲル哲学に興味を持たれた方はぜひ『読む』をあわせて参照してください。そして、本書ならびに『読む』を手がかりに、古典そのものと格闘してほしいと思います。
 第一五講で、弁証法の一般的叙述について高村さん自身の「試案」が提起されています。「人間の意識は客観的世界を反映するだけでなく、それを創造しもする」(レーニン)という立場で貫かれている「試案」を多くのみなさんに検討していただきたいと思います。

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 私たちの生きる二一世紀という時代を政治革新の時代とするために、現実をより深く構造的につかむ力を多くの人に求めています。弁証法を知識として学ぶことと、それを自らの血肉として活用することとの間には、天地の開きがあり、現実と切り結べるところまで深く学ぶことが必要なのです。そのためには、マルクスやエンゲルス、レーニンの書いたものはもちろんのこと、その源泉も含めた学習へ踏みださねばなりません。
 かつて、藤野渉さんが「源泉から汲むことをマルクス、エンゲルスの先駆的創造的な過去のいとなみにとどまらせてはならない。マルクス主義哲学は一九世紀のドイツ哲学、古典的市民的ドイツ哲学という源泉から、いく度でも新たに汲み直して豊かになり深くなり広く大きくなるのではなくてはなるまい」(『哲学とモラル』汐文社)と書かれていました。本書も、二一世紀の入口に立った私たちの「新たに汲み直す」作業にほかならないのです。『読む』同様、「本書の問題提起を機に論議が起こり、論議を通じてより正確な理解が深まること」を私たちは望んでいます。
 最後になりましたが、出版事情厳しきおり、本書出版を快諾していただいた学習の友社に感謝いたします。

二〇〇一年 八月 六日
編集委員を代表して  佐田 雅美


 

●編集委員(あいうえお順)
 権藤郁男・佐田雅美・竹森鈴子・二見伸吾
 
●編集・出版のためにご協力いただいた方々
 武田一平・竹森康二・竹森美貴・玉谷由美・津田広志・橋本和正・浜崎理恵
 平野光子・平野百合子・山本一人・山本繁子・山本博史・山根岩男・吉田恭子

 

 

 

 


文献案内

● ヘーゲルの著作
 主要なものは岩波版ヘーゲル全集に収録されている。残念ながら分売はされていない。
 岩波全集版以外のものを以下、紹介する。

 『大論理学』寺沢恒信訳(以文社)
 『小論理学』松村一人訳(岩波文庫)
 『歴史哲学講義』長谷川宏訳(岩波文庫)
 『哲学史講義』長谷川宏訳(河出書房新社)
 『法の哲学』〈世界の名著〉三浦和男ほか訳(中央公論社)
 『法権利の哲学』三浦和男訳(未知谷)

● ヘーゲルに関する研究書・解説書

 『ヘーゲル論理学入門』鰺坂真ほか編(有斐閣新書)
 『マルクス主義の源流』鰺坂真(学習の友社)
 『見田石介 ヘーゲル大論理学研究』①~③(大月書店)
 『ヘーゲル大論理学 概念論の研究』(大月書店)
 『弁証法の理論』上・下、許萬元(創風社)
 『ヘーゲルとフランス革命』リッター(理想社)
 『ヘーゲル「小論理学」を読む』高村是懿(学習の友社)

● プラトン、アリストテレスの著作と解説書
 プラトン、アリストテレスいずれも岩波版の全集がある。
  
 プラトン『国家』(岩波文庫) 
 アリストテレス『形而上学』(岩波文庫) 
 『プラトンの哲学』『ギリシア哲学と現代』いずれも藤沢令夫(岩波新書)
  
● マルクス・エンゲルスの著作

 マルクス「フォイエルバッハに関するテーゼ」
 (下記『フォイエルバッハ論』に収録されている)
 エンゲルス『フォイエルバッハ論』(国民文庫、新日本文庫、新日本古典選
  書など)
 エンゲルス『自然の弁証法』『反デューリング論』(国民文庫)
 マルクス『資本論』(新日本新書版・国民文庫版など) 

● レーニンに関する研究書・解説書

 『レーニン「カール・マルクス」を読む』
 『レーニンと資本論』③ ともに不破哲三(新日本出版社) 
 『エンゲルスと資本論』㊦巻

● その他

 『弁証法的論理学試論』寺沢恒信(大月書店)

 現在、入手困難なものも少なくないが、古書店やインターネット古書店、図書館なども利用して探してほしい。必要な文献を手に入れるのも研究の大切な一部である。