2018年5月19日 講義

 

 

第15講 真理は必ず勝利する

 

1.哲学は真理を求める

● 哲学は「真にあるべき姿」を探究

 ・哲学は、人間論として、人間が世界のすべてを変革する存在であるととら
  える

 ・哲学は、人間は世界をどのように変革すべきなのか、という変革の理想(
  理念)、「真にあるべき姿」を問題にする

 ・哲学の歴史は、「真にあるべき姿」の探究の歴史

● ギリシア哲学の「真にあるべき姿」

 ・ソクラテス「大切にしなければならないのは、ただ生きるということだけ
  ではなくて、よく生きるということ」(プラトン全集① 132ページ)

 ・「よく生きるとは何なのか」を問い続け、正義、美、善の「真にあるべき
  姿」を探究

 ・プラトンは、あらゆるものにイデア(真にあるべき姿)が存在するとして、
  普遍的なイデア論を展開

 ・イデアこそが「唯一の真実在として理解されるような普遍」(へーゲル『
  哲学史』中の① 214ページ)であるとして、「真にあるべき姿」こそが本
  当の存在だと主張

 ・アリストテレスは、プラトンのイデアには「主体性の原理が欠けている」
  (同中の② 28ページ)と批判し、イデアを「端的に外にあらわれている
  内的なもの」(へーゲル『小論理学』㊦ 84ページ)と主張

 ・理想としての「真にあるべき姿」は、「外にあらわれて」現実に転化する
  必然性をもっていると考えた

● へーゲル「哲学」の「真にあるべき姿」

 ・へーゲルは、アリストテレスの考えを引きつぎ、「哲学の最高の究極目的
  」(同㊤ 69ページ)は理念(理想)と現実の統一にあると考えた

 ・「哲学はただ理念をのみ取扱うものであるが、しかもこの理念は単にゾレ
  ン(すべきである)にとどまって現実的ではないほど無力なものではない
  」(『小論理学』㊤ 71ページ)

 ・へーゲルが理念は現実に転化する必然性をもっていると判断した根拠は、
  弁証法にあった

 ・現実そのものは、対立・矛盾をもっており、その矛盾を止揚する(解決す
  る)ものとして理念をとらえることで、理念は現実性に転化するととらえ
  た

 ・「理性的なもの(理念的なもの ── 高村)は現実的であり、現実的なも
  のは理性的(理念的 ── 高村)である」(同)

 ・エンゲルスは、この文章を取り上げ、「人間の頭脳のなかで合理的である
  ものは、どんなに現存する見かけだけの現実性と矛盾していようと、すべ
  て現実的になるように定められている」(全集㉑ 271ページ)として、こ
  こにへーゲル哲学の「真の意義と革命的性格」(同)があると指摘

● マルクス主義哲学の「真にあるべき姿」

 ・マルクス、エンゲルスは、へーゲル哲学の真髄は、弁証法によって変革の
  哲学を打ち出したことにあると考えた

 ・2人は、へーゲルに学んで「弁証法的唯物論」を確立し、「われわれの最
  も良い道具でありわれわれの最も鋭利な武器」(同298ページ)とした

 ・マルクスは『資本論』をつうじて、資本主義の矛盾が富と貧困の対立にあ
  ることを解明し、理念としての社会主義・共産主義を展望

 ・マルクスは「哲学者たちは、世界をさまざまに解釈しただけである。肝要
  なのは、世界を変えることである」(『〈新訳〉ドイツ・イデオロギー』
  113ページ)として、哲学はまず変革の哲学でなければならないことを訴
  えた

 ・マルクスは、人間の「真にあるべき姿」として搾取と抑圧から解放された
  「人間解放」を唱えた

 ・その人間解放を「人間による、また人間のための人間的本質の現実的獲得
  としての共産主義」(全集㊵ 457ページ)ととらえた

 ・エンゲルスは、人間解放の社会主義社会を「必然の国から自由の国への人
  類の飛躍」(全集⑲ 224ページ)とよんだ

 ・「必然の国」とは、資本主義的搾取と抑圧に支配される国であり、「自由
  の国」とは資本主義的疎外から解放されて、「自由と平等」という人間の
  本質を取り戻した社会主義の国

● マックス・ウェーバーの「真にあるべき姿」の批判

 ・経験科学は、事実(現にある姿)と価値(真にあるべき姿)とを峻別すべ
  きであり、理想を発見することは経験科学の対象ではない、とする

 ・価値の問題は、多様な価値観のなかから、どれを選択すべきかを指摘しう
  るのみであり、どの価値が真理なのかは問題にしえないとする

 ・社会主義・共産主義を論ずる史的唯物論は、事実と価値を混同するもので
  あり、エセ科学にすぎないと批判

 ・しかし変革を事とする人間にとって、事実の真理をふまえ、価値の真理(
  当為の真理)を生みだすのであって、事実と価値、現実と理念は統一され
  ている

 ・ウェーバーの経験科学の「没価値性」はもっぱら解釈の立場であり、変革
  の立場が欠落している

● 日本共産党の「真にあるべき姿」

 ・日本共産党は、変革の立場にたつ弁証法的唯物論によって、日本の現にあ
  る姿の対立・矛盾を解明し、矛盾を解決するものとして、民主連合政府、
  さらには社会主義・共産主義日本という「真にあるべき姿」を展望する

 ・日本共産党は、日本の「真にあるべき姿」は、「当為の真理」であり、「真
  理は必ず勝利する」と主張する

 

2.真理は必ず勝利する

● 人間の脳は真理を求める

 ・第6講で学んだように、人間の脳は、情報処理をつうじて情報処理の機能
  を自ら強化し、真理に接近することに喜びを感じるようにできあがってい
  る

 ・したがって「知を愛する」哲学をつうじて、人類は不断に真理を求めてた
  たかい、真理は人類の英知と歴史の進歩として蓄積される

 ・1人の人間の生き方は、人類の進歩の歴史に貢献することによって評価さ
  れる

 ・人間は事実の真理を対立・矛盾においてとらえ、その矛盾を解決するもの
  として当為の真理、つまり「真にあるべき姿」をとらえる

 ・現実の矛盾を解決するものとして「真にあるべき姿」ととらえるからこそ、
  それは現実を合法則的に発展させる当為の真理となる

 ・こうして人類は「真にあるべき姿」を不断に追究することによって、人間
  社会を合法則的に発展させる進歩の歴史を築きあげてきた

● 歴史に対する科学的社会主義の政党の役割

 ・科学的社会主義の政党の歴史に対する責任は、「そのときどきの歴史が提
  起した諸問題に正面から立ちむかい、社会進歩の促進のために、真理をか
  かげてたたかうこと」(『前衛』651号 41ページ)にある

 ・「社会進歩の促進」とは、現実の矛盾を解決することであり、「真理をか
  かげてたたかう」とは、「真にあるべき姿」という当為の真理を目標にか
  かげ、その目標を現実のものとするためにたたかうこと

 ・変革の立場にたつ日本共産党は、日本の「真にあるべき姿」の実現をめざし
  てたたかうことによって、歴史に対して責任を果たす

● 日本の社会変革の課題

 ・日本の現状は、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配を続ける支配
  階級と、その支配に苦しむ99%の被支配階級が存在しているという対立
  ・矛盾のうちにある

 ・日本共産党は、統一戦線の力により、この矛盾を打ち破って、日本の真の
  独立と政治・経済・社会の民主主義的な改革を実現するという、民主連合
  政府の樹立をめざしている

 ・日本社会は、民主連合政府の次の段階で、搾取も階級もない社会主義・共
  産主義の社会に向かう

 ・社会変革は、「国民が主人公」の立場にたって民主連合政府、社会主義日
  本を実現しようとする、社会進歩をめざすすべての人びとを結集した統一
  戦線によって実現される

● 真理をかかげた統一戦線のたたかいに無駄はない

 ・真理をかかげた統一戦線のたたかいは、そのときは勝利しなかったとして
  も、けっして無駄にはならない

 ・例えば、人民主権論という真理をかかげてたたかったルソーは弾圧を受け
  ながらも、「真理のために生命をささげる」としてたたかい、人民主権論
  は

● 21世紀の共通の理念となっている

 ・人民主権が現代まで生き延びることができたのは、1つには、真理は支配
  階級の非真理を突き崩し、支配の力を弱めるからであり、2つには、真理
  は被支配階級のたたかう力を強めるから

 ・したがって、真理をかかげてたたかうかぎり、たたかって無駄なたたかい
  はない

● 真理は必ず勝利する

 ・人類の歴史は「真にあるべき姿」という真理の発展の歴史

 ・統一戦線の掲げる目標は、日本の「真にあるべき姿」という当為の真理

 ・その目標は「当為の真理」であるがゆえに、真理のもつ力によって、人び
  との心を獲得してゆく

 ・人間は真理を認識したとき、それを自己の信条として身につけ、自己の生
  涯をその実現のために費やそうとする

 ・こうして統一戦線のかかげる真理は、時間の経過とともに、少数者の真理
  から、多数者の真理へと転化してゆく

 ・当為の「真理は未来においては、いろいろなジグザクはあったとしてもか
  ならず多数派になる」(同)

 ・当為の真理は、真理であるがゆえに、最後は必ず多数派となって勝利する

 ・広島県労学協は、真理は必ず勝利することを確信し、「真理の前にのみ頭
  を垂れる」をスローガンにしている