2008年7月から全40講が行われた本講座の趣旨説明として、本講座を分冊書籍化した『ヘーゲル「小論理学」を読む』から「第二版への序文」を転載します。
第二版への序文
難解なヘーゲル論理学を働く人々のために分かりやすく逐条的に読み解き、科学的社会主義の哲学をより豊かにしたいとの思いから第一版を出版してはや十年が経過しました。
この間何らかの形で途切れることなくヘーゲル哲学とかかわってきましたが、学ぶたびに新たな発見があり、ヘーゲルへの評価を少しずつ変えることになってきました。第一版ではヘーゲル哲学の合理的核心は「変革の立場」にあると述べましたが、現在では「革命の哲学」とよばないと正確ではないと考えています。またヘーゲルは「九五%唯物論者」との規定も、革命の哲学とられないための「観念論的装いをもった唯物論」と規定すべきとの結論に達しています。
こうした事情もあって第二版は、第一版の趣旨を引きつぎながらも内容を全面的に発展させたものとなっています。
一つは、対象の拡大です。第一版では『小論理学』のうち「序文」「エンチクロペディーへの序文」「予備概念」を省略していたのに対し、今回はそのすべてを取り入れました。そのため、全四十回の講義のうち十八回を本論までに費やすことになりましたが、ヘーゲル弁証法の真理性を理解するためには、それも避けられない作業であったと痛感しています。
二つは、内容の発展です。第一版を出版した主たる目的は、「概念論」の概念とは「真にあるべき姿」であることを明らかにしたいと考えたことにありました。当時唯物論者のなかにあっても「概念論」の正確な理解がなされていなかったところから、ヘーゲル論理学の全体像を的確にとらええなかったうらみがありました。それを払拭したいとの思いが性急ともいえる出版となったのですが、当時はまだヘーゲルをとりまく時代背景についても、「論理学」の細部の論理展開についても、ヘーゲルの観念論的 “ 隠れ蓑 ” についても理解が不十分でした。
その後筆者の「概念」の理解については特段の反論もありませんでしたし、自分でも何度もするなかで確信を深めることができました。しかしより正確にいえば、概念一般とは「真の姿または真にあるべき姿」であり、「概念論」の概念とは「真にあるべき姿」を意味していると考えるに至りました。この問題も含め、第二版では全体としてヘーゲル弁証法の真の姿と細部に至るまでの論理展開を正確に読み解き、第一版における内容の不十分さを克服しえたのではないかと考えています。
エンゲルスが指摘するように、ヘーゲル哲学には「今日でもなお完全に値うちのある無数の宝」があります。ヘーゲル弁証法を血肉とするとき、もっとも鋭く時代と切り結び、社会変革の先頭に立つことができるというのが、筆者の四十数年に及ぶ社会的実践の最大の教訓です。「資本主義限界論」が公然と論じられる現代においてこそ、革命の哲学・ヘーゲル「論理学」は、社会変革を志すものにとって必読の書ということができるでしょう。
本書は、労働者・国民にこそ読んでほしいとの思いから、廉価でハンディーな新書版とすることにしました。全四十回分の講義のうち、今回は二〇〇八年七月から二〇〇九年四月までの十八回分を、第一、第二分冊として出版し、来年本論に相当する残りの二十二回分を出したいと考えています。
今回もこれまでと同様「広島県労働者学習協議会編」として出版することになりました。労働者・国民とともに学びあってこそ、理論も生きたたたかいの武器になりうると信じているからにほかなりません。編集委員のみなさんには、この場を借りてあらためて心からの感謝と敬意を表明するものです。
なお装丁は、県労学協の平野百合子事務局長が担当しました。彼女が十六歳の時、第一版の作業協力者として「あとがき」に名を連ねているのを見ると、現在の彼女に感無量を覚えます。
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