講座の紹介
エンゲルス
|
2007年6月から2008年4月まで全20講が行われた本講座の説明として、高村氏の「開講言」を転載します。
<科学的社会主義の百科全書> 私が、マルクス・エンゲルス全集のうちで、最もくり返し読んだ最大の愛読書が、『反デューリング論』です。 何か問題の生じる度ごとに、立ち返って学びたくなる著作です。ここには科学的社会主義の学説の主要な部分が網羅されていると同時に、「この科学をそのあらゆる細目と連関とにわたってさらに仕上げてゆく」(テキスト上 36ページ)ためのヒントが隠されています。 だから、130年も前の著作でありながら今なお生命力を発揮し続けているのです。 レーニンも「これは、おどろくべく内容の豊かな、おしえるところの多い書物である」と語っています。 <論争の書> 難しいけど、面白い、これが『反デューリング論』の特徴です。 その面白さの理由は、論争の書だというところにあります。 『反デューリング論』の要となる序説第一章、第三篇の第一章、第二章に手を加えたものは、『空想から科学へ』という独立の小冊子となり、科学的社会主義への絶好の入門書となっています。 それにもかかわらず『反デューリング論』が多くの人に愛され、読まれ続けているのは、その百科全書的な内容の豊富さに加えて、論争の書としての魅力があるからだと思います。 論争の相手を反駁するとは、相手の主張を否定して片づけてしまうことではありません。 「或る哲学を反駁するとは、その哲学の制限を踏み越えて、その哲学の特殊の原理を観念的な契機へひきさげることを意味するにすぎない」(ヘーゲル『小論理学』86節補遺2)。 エンゲルスは、この反駁の模範をみせてくれているのです。 < 21世紀の到達点に立って> そうはいっても、130年間の科学的社会主義の運動と科学の発展を無視することはできません。 いわば、マルクス、エンゲルスの創始した科学的社会主義の学説は、130年間の歴史の審判を受けてきたのです。 その間に、第一次世界大戦のなかで「社会主義」ソ連が誕生し、第二次世界大戦をつうじて、中国やベトナムや東欧の社会主義をめざす諸国が誕生しました。そして 20 世紀末は、ベルリンの壁の崩壊にはじまり、ソ連・東欧の崩壊となりました。 しかし他方 20 世紀末は、中南米における新しい革命の始まりを告げるものでした。ベネズエラのチャベス政権は「ソ連は社会主、 義ではなかった」と批判し、新しい民主主義にもとづく社会主義を語っています。 日本共産党と中国共産党間の理論交流も始まっています。 こうした歴史もふまえて、今日的な科学的社会主義と経験諸科学の到達点に立ちつつ『反デューリング論』を学んでみたいと思います。 当然そのなかで、もっと強調すべきところ、思い切って省略すべきところも生じてきますので、高村流にアクセントをつけて学んでいこうと考えています。 博覧強記のエンゲルスの跡をたどるだけでも大変なのに、それ以後の自然科学の発展を総括することなど、とうてい力の及ぶところではありませんが、少なくともそういう心がけはもちつつ、講座に取り組みたいと思います。 6月13日から全20回、毎月第2、第4水曜日の午後6時半から9時までです。 討論にしっかり時間をとりたいと思います。 多数のみなさんの参加に期待しています。
|