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ヘーゲル「精神現象学」に学ぶ

本講座をもとにした書籍『ヘーゲル「精神現象学」に学ぶ』は、音声ファイルを聞きながら15の講義と連動した章立てでお読みいただくことはもちろん、単体の書籍としての通読も可能です。

以下のもくじのリンクから、それぞれのページをお読みください。

 

<も く じ>

はじめに


第一講 『精神現象学』とは何か、「序論」 ①

  一、『現象学』をどういう観点で学ぶか

  二、ヘーゲル哲学は時代の精神をとらえる

  三、『精神現象学』とは何か
     論理的なものと歴史的なもの/『現象学』の構成と概要

  四、「序論」①
     「序論」はヘーゲル哲学の独自性を論じる/「序論」の根本思想は
     真理を生成する主体としてとらえることにある/シェリングの「絶
     対的同一性」への批判

  * コラム * エボデボと脳科学


第二講 「序論」 ②、「緒論」

  一、「序論」②
     知とは自我と対象との交互作用から生じる認識の発展/『現象学』
     は理想と現実の統一をもって終わる/哲学の方法としての弁証法/
     弁証法を批判する三つの見解批判

  二、「緒論」
     認識能力の吟味/知の目標は概念と存在の統一/対象を知ることは
     同時に知の尺度を知ること

  * コラム * 脳科学における意識
     精神は物質であるか/知の吟味と脳科学/社会脳と科学的社会主義


第三講 「A 意識」

 「A 意識」の概要

  一、「感覚的確信 このものと思いこみ」
     感覚的確信は対象を「このもの」としてとらえる/真理は言語によ
     ってのみとらえうる

  二、「知覚 物とまどわし」  
     知覚は対象を同一のうちに区別・対立を含む「物」としてとらえる
     /知覚から悟性へ

  三、「力と悟性 現象と超感覚的世界」
     悟性は対象を対立物の統一としてとらえる/力から力の法則へ、さ
     らには力の概念へ/第一次法則から第二次法則へ/矛盾の揚棄

  * コラム * 脳科学からみた感覚、知覚、悟性、理性
     脳のしくみと精神(心)/言語は人間の心をつくり出す/脳科学か
     らみた感覚、知覚、悟性、理性


第四講 「B 自己意識」

  「B 自己意識」の概要

  一、「自己意識自体」
     個人としての自己意識/類としての自己意識/「精神の概念」は
     「一人はみんなのために、みんなは一人のために」

  二、「A 自己意識の自立性と非自立性 主と僕」  
     自己意識の相互承認から対立・闘争に/主と僕の弁証法の意義と限
     界

  三、「B 自己意識の自由 ストア主義と懐疑論と不幸な意識」
     内面における自由な自己意識/ストア主義のいう自由とは否定的自
     由/懐疑論のいう自由は形式的自由/不幸な意識は矛盾した意識/
     イエスとの一体化を求める不幸な意識/不幸な意識から現実世界の
     変革に

  * コラム * 自己意識と脳科学
     ヒトの関係欲求/人間らしい心と階級的意識


第五講 「C 理性」 ①

  理性は近代に特有の意識/「C 理性」の概要と構成

  一、「理性の確信と真理」
     理性とは変革を確信する意識/変革の確信としての理性は二つの意
     味の概念を把握することで真理として現れる

  二、「A 観察する理性」

    「自然の観察」
     自然物の観察/有機体の観察/内なるものと外なるもの/内なるも
     のと外なるものの法則の否定/「有機体の観察」のまとめ

  * コラム * 脳科学からみた観念論の特徴


第六講 「C 理性」 ②

    「純粋性と外的現実に対する関係とにおける自己意識の観察 論理学
    的法則と心理学的法則」
     自然の観察から人間の観察へ/思惟法則の観察/心理学的法則の観
     察

    「c 自己意識が自らの直接的な現実に対してもつ関係の観察 人相学
    と骨相学」
     精神と肉体は内と外の関係にあるか/頭蓋論の真の意義は反映的意
     識から創造的意識への転換にある/観察する理性から行為する理性
     への転換

  三、「B 理性的自己意識の自己自身による実現」
     概念をかかげた社会変革/「行為的理性」の目標は「人倫の国」/
     個別者の「人倫の国」の回復をめざす旅/「快と必然性」/「b こ
     ころの法則と自負の狂気」

  * コラム * 脳科学と心理学


第七講 「C 理性」 ③

    「c 徳と世の中」

  四、「C それ自体で自覚的に現に在るような個人性」
     見出しの意味と概要/「序論」

    「精神的な動物の国とだまし、または『ことそのもの』」
     見出しの意味/個人は生産労働をつうじて社会的存在となる/「こ
     とそのもの」は形式的には人倫的実体/「ことそのものの本性」の
     批判 

    「b 立法的理性」

    「c 査法的理性」
     一般意志による「人倫の国」の回復/ヘーゲルの変革の立場は不徹
     底

  * コラム * 脳とコンピューター


第八講 「D 精神」 ①

  『精神現象学』第二部と「D 精神」の概要

  一、「序論」
     理性から精神へ/真の精神はポリスという人倫的現実/精神の展開
     は現実の世界史として示される

  二、「A 真の精神、人倫」
     真の精神は人倫的世界/「人倫的世界、人間のおきてと神々のおき
     て、男と女」/人間のおきてと神々のおきて/「b 人倫的行動、人
     間の知と神々の知、罪責と運命」

  * コラム * 史的唯物論と古代ギリシアの民主政治
     ポリスの民主政治/ヘーゲルのポリス観と史的唯物論


第九講 「D 精神」 ②

  「c 法状態」/疎外された人倫的実体/「法状態」のもとで個人は社会か
  ら疎外される

  三、「B 自己疎外的精神、教養」
     「B 自己疎外的精神、教養」の概要

    「序論」
     法状態は自己疎外的精神/教養としての「純粋透見」は信仰の国と
     現実の国の変革に向かう

    「自己疎外的精神の世界」
     自己疎外的精神の世界は現実の国と信仰の国に分裂した世界/「現
     実の国」の疎外された対立関係/教養は「現実の国」における疎外
     からの解放を求める

  * コラム * 史的唯物論と封建制社会、絶対主義(絶対君主制)
     ヨーロッパ社会の形成/フランク王国による封建制社会の建設/封
     建制社会の経済的基礎/絶対主義(絶対君主制)


第一〇講 「D 精神」 ③

    「信仰の国」の疎外された対立関係

    「b 啓蒙」
     啓蒙は「信仰の国」を変革する宗教改革となって現れる/宗教改革
     の本質はたんなる否定性/宗教改革は「有用性」に光をあてる/
     「信仰の国」の変革から「現実の国」の変革へ

  * コラム * 史的唯物論と啓蒙思想、宗教改革
     史的唯物論は啓蒙思想をどうとらえるか/史的唯物論は宗教改革を
     どうとらえるか


第一一講 「D 精神」 ④

     啓蒙の真理は「現実の国」の変革にある/産業革命は「物」の変革
     として「啓蒙の真理」

    「c 絶対自由と恐怖」

  四、「C 自己確信的精神、道徳性」
     カントの道徳論/「C 自己確信的精神、道徳性」の概要と構成

    「序論」

    「 道徳的世界観」

  * コラム * 史的唯物論と有用性理論、フランス革命
      Ⅰ 史的唯物論と有用性理論(功利主義)
      Ⅱ 史的唯物論とフランス革命
        フランス革命の意義/ルソーの「一般意志」と人民主権論


第一二講 「D 精神」 ⑤

    「b おきかえ」

    「c 良心、美しき魂、悪とその赦免」
     絶対至上の独裁権としての良心/良心は「美しき魂」となる/悪と
     その赦し/良心は赦しをつうじて絶対的精神(概念)となる/『現
     象学』には「自己疎外的精神」はあっても、疎外からの真の回復は
     存在しない

  * コラム * 史的唯物論と疎外論、道徳論
     Ⅰ 史的唯物論と疎外論
        ヘーゲルの疎外論の発展的継承/ヘーゲルの疎外論の意義と限界
     Ⅱ 史的唯物論と道徳論①
        道徳の二面性/科学的社会主義の道徳論


第一三講 「E 宗教」

  宗教の概要と構成

  一、「序論」
     宗教は絶対者(神)を民族の精神としてととらえる/宗教は意識の
     諸形態にしたがって自己を区別する

  二、「A 自然宗教」
     自然宗教はいかなる自然物を絶対者とするかによって規定される/
     「光」/「b 植物と動物」/「c 工作者」

  三、「B 芸術宗教」
     「抽象的芸術品」/「b 生きた芸術品」/「c 精神的芸術品」

  四、「C 啓示宗教」
     絶対精神を宗教において示したのが絶対的宗教/絶対的宗教は啓示
     宗教/絶対的宗教は概念に高められねばならない

  * コラム * 史的唯物論と道徳、宗教
     Ⅰ 史的唯物論と道徳論②
        科学的社会主義の一般的道徳法則/一般的道徳法則の展開
     Ⅱ 史的唯物論と宗教
        史的唯物論の宗教観/接点としてのヒューマニズム


第一四講 「F 絶対知」

  第三部「絶対知」とは何か/絶対知はすでに表象の形で示されている

  一、絶対知の成立
     啓示宗教は絶対知を表象する/これまでの意識形態において絶対知
     は二重の側面から成就されている/概念の二つの運動は、美しき魂
     において統一されて「真の概念」となる

  二、絶対知の本質
     絶対知の本質は理想と現実の統一にある/「精神の現象学」が終わ
     ったところから「論理学」が始まる

  三、「現象学」から「論理学」へ
     「論理学」は一対の概念(諸カテゴリー)の体系的展開/「論理学」
     は「自然哲学」「精神哲学」のうえに君臨する

  * コラム * 史的唯物論と絶対知
     ヘーゲルの絶対知の意義と限界/初期の哲学的社会主義論と絶対知
     /後期の社会主義論と絶対知/科学的社会主義の社会主義論と絶対
     知


第一五講 『現象学』から何を学ぶのか

  一、科学的社会主義をより豊かにするために『現象学』から何を学ぶのか

  二、『現象学』の認識論は唯物論的認識論
     唯物論的認識論/ヘーゲルの理性は合理主義と合法則的発展の意識
     /対象意識と自己意識/観念論の特徴

  三、『現象学』における変革の立場
     合法則的発展のためにはまず対象の本質を対立・矛盾においてとら
     える/本質の対立・矛盾を揚棄するものとして概念をとらえる/概
     念の実践が対象の合法則的発展を生みだす/概念の認識にかんする
     『現象学』の重要性/二つの真理/変革の立場からみた宗教改革と
     フランス革命/変革の立場からみた資本主義と産業革命/真にある
     べき社会とその実現/『現象学』は「何を人々に訴えようとしたの
     か」

  四、『現象学』の道徳、宗教から何を学ぶべきか
     上部構造の二面性/人民の道徳と人民の宗教

あとがきにかえて

 

 

本書の利用にあたって

一、テキスト『現象学』からの引用は、『世界の大思想 ヘーゲル精神現象学』
  (河出書房新社)による。
一、マルクス・エンゲルス、レーニン全集からの引用は大月全集版により、マ
  ルクス・エンゲルス全集はただ「全集」と略記した。
一、『資本論』からの引用は、社会科学研究所監修、資本論翻訳委員会訳(新
  日本出版社、新書版全十三冊)による。
一、文中、「同上書、同ページ」は単に「同」と略記し、「同上書二一ページ」
  は単に「同二一ページ」と略記した。
一、巻末に参考文献、引用文献を掲載した。

 

 

■ 参考・引用文献

一、参考文献(脳科学関係を除く)

 ① 金子武蔵訳『精神の現象学』(㊤㊦ 岩波書店)
 ② 長谷川宏訳『精神現象学』(作品社)
 ③ マルクス(城塚登他訳)『経済学・哲学草稿』(岩波文庫)
 ④ 金子武蔵『ヘーゲルの精神現象学』(ちくま学芸文庫)
 ⑤ 樫山欽四郎『ヘーゲル精神現象学の研究』(創文社)
 ⑥ 鰺坂真『マルクス主義哲学の源流』(学習の友社)
 ⑦ ルカーチ『若きヘーゲル』(㊤㊦ 白水社)
 ⑧ ノーマン『ヘーゲル「精神現象学」入門』(御茶の水書房)
 ⑨ 長谷川宏『ヘーゲル「精神現象学」入門』(講談社選書) 
 ⑩ 井尻正二『ヘーゲル精神現象学に学ぶ』(築地書館)
 ⑪ 城塚登『ヘーゲル』(講談社学術文庫)

二.引用文献(重複分は除く)

《はじめに》
・樫山欽四郎『ヘーゲル精神現象学の研究』(創文社)
・ヘーゲル『小論理学」』(㊦ 岩波文庫)
・エンゲルス『フォイエルバッハ論』(全集㉑)

《第一講》
・樫山欽四郎訳『ヘーゲル精神現象学』(河出書房新社)
・マルクス(城塚登他訳)『経済学・哲学草稿』(岩波文庫)
・ヘーゲル『大論理学』(㊤の一 岩波書店)
・ヘーゲル『小論理学』(㊤)
・エンゲルス『反デューリング論』(全集⑳)
・ヘーゲル『法の哲学』(世界の名著 中央公論社)
・エンゲルス「カール・マルクス『経済学批判』(書評)」(全集⑬)
・リッター『ヘーゲルとフランス革命』(理想社)
・ヘーゲル『歴史哲学』(㊦ 岩波書店)
・ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』(岩波文庫)
・レーニン『唯物論と経験批判論』(レーニン全集⑭)
・理化学研究所脳科学総合研究センター編『脳科学の教科書 神経編』(岩波ジュニア新書)

《第二講》
・高村是懿『世紀の科学的社会主義を考える』(一粒の麦社)
・マルクス『告白』(全集★)
・不破哲三『自然の秘密を探る』(新日本出版社)
・ニュートン別冊『知能と心の科学』(株式会社ニュートンプレス)
・高島明彦監修『脳のしくみ』(日本文芸社)
・理化学研究所脳科学総合研究センター編『脳科学の教科書 こころ編』(岩波ジュニア新書)
・伊古田俊夫『社会脳からみた認知症』(講談社)
・マルクス『経済学批判 序言』(全集⑬)
・マルクス・エンゲルス(服部文男監修)『〈新訳〉ドイツ・イデオロギー』(新日本出版社)

《第三講》
・マルクス・エンゲルス「聖家族」(全集②)
・高村是懿『科学的社会主義の哲学史』(一粒の麦社)
・高村是懿『エンゲルス「反デューリング論」に学ぶ』(一粒の麦社)
・池内了『宇宙進化の構図』(大月書店)

《第四講》
・高村是懿『ヘーゲル「法の哲学」を読む』(一粒の麦社)
・マルクス「ユダヤ人問題によせて」(全集①)
・「新約聖書」(世界の名著 中央公論社)
・松本元『愛は脳を活性化する』(岩波書店)
・林正寛『生きること伝え合うこと』(創文)
・日本共産党第二一回大会決定集(『前衛』六九三号)

《第五講》
・エンゲルス『空想から科学へ』(全集⑲)
・矢原徹一『自然の謎と科学のロマン』(㊦ 新日本出版社)
・安西祐一郎『心と脳』(岩波新書)

《第六講》
・仲真紀子編著『認知心理学』(ミネルヴァ書房)
・渡辺茂他『脳科学とこころの進化』(岩波書店)

《第七講》
・ソブール『フランス革命』(下 岩波新書)
・マルクス「マルクスからエンゲルスへ(1862.6.18)」(全集㉚)
・マルクス『資本論』(①④⑩ 新日本出版社)
・民法一条二項
・マルクス「ゴータ綱領批判」(全集⑲)
・民法二三九条一項
・プラトン『ソクラテスの弁明』(プラトン全集① 岩波書店)

《第八講》
・ルソー『社会契約論』(岩波文庫)
・ヘーゲル『歴史哲学』(上 岩波書店)
・エンゲルス『家族、私有財産および国家の起原』(全集㉑)

《第九講》
・エンゲルス「ブルーノ・バウアーと原始キリスト教」(全集⑲)
・ディドロ『ラモーの甥』(岩波文庫)
・マルクス「マルクスからエンゲルスへ(1869.4.15)」(全集㉜)
・エンゲルス「マルク」(全集⑲)
・エンゲルス「『農民戦争』のために」(全集㉑)

《第一〇講》
・エンゲルス「『空想から科学への社会主義の発展』英語版への序論」(全集⑲)
・高村是懿『科学的社会主義の源泉としてのルソー』(一粒の麦社)
・マルクス「歴史法学派の哲学的宣言」(全集①)
・マルクス『ヘーゲル法哲学批判 序説』(全集①)

《第一一講》
・高村是懿『ヘーゲル「小論理学」を読む』(第二版 Ⅱ 一粒の麦社)
・マルクス・エンゲルス『共産党宣言』(全集④)
・マルクス『資本論』(②)
・マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』(全集③)
・杉野原寿一『ルソー研究』(第二版、岩波書店)

《第一二講》
・エンゲルス「『共産党宣言』一八八八年英語版序文」(全集④)
・マルクス「国際労働者協会創立宣言」(全集⑯)
・マルクス「フランスにおける内乱」(全集⑰)
・レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」(レーニン全集⑲)
・日本共産党規約、日本共産党第二二回大会決定集(前衛七三五号)
・日本共産党第一三回臨時大会決定集(前衛四〇〇号)
・日本共産党第二〇回大会決定集(前衛六五一号)

《第一三講》
・日本共産党綱領

《第一四講》
・ルカーチ『若きヘーゲル』(㊦ 白水社)
・アリストテレス『形而上学』(アリストテレス全集⑫ 岩波書店)
・マルクス「ミル評注」(全集㊵)
・金子武蔵訳『精神の現象学』(㊦ 岩波書店)

《第一五講》
・プラトン「クリトン」(プラトン全集① 白水社)
・高村是懿『人間解放の哲学』(学習の友社)